梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

介護職研修と介護崩壊!?(その9)

2024年05月18日 06時09分34秒 | Weblog
厚生労働省研究班が5月8日、認知症の患者数が2030年に523万人にのぼり高齢者の14%にあたる「7人に1人」に迫る、との推計を発表しました。その見解を受けて、日経新聞が翌9日一面トップに関連記事を載せました。

仕事と介護の両立(ビジネスケアラー)が困難な人が増えると、経済的な損失は年9兆円に及ぶとの試算もある。最大の課題は介護人材の確保で、政策とテクノロジーの活用の両面での取り組みが欠かせない。経産省によると、ビジネスケアラーは増加の一途をたどり2030年時点で約318万人、経済損失は大企業1社当たりで見ると年6億円に上る。との記載が続きます。

最大課題の介護人材の確保と政策とテクノロジーの活用については、次のようなコメントです。厚生省は25年度にも、訪問介護サービスで在留資格が「特定技能」の外国人が働けるようにする。介護現場ではAIを使って、人手不足の解消を狙う。入居者の呼吸数や心拍、睡眠の深さなどを測定して分析し、異常があれば職員に知らせるAIシステムを開発した企業もある。との内容でした。

振り返りです。私はこれまで介護崩壊の打開策があるのではないかと、色々と方策をあげてきました。それで楽観的になった訳ではありませんが、この記事による高齢者の認知症患者の増加や企業に内在するビジネスケアラーの漸増は、介護に新たな課題を残してしまいます。

認知症はいうまでもなく後戻りしない病(現在)です。認知症の中でアルツハイマー型認知症はその60%を占めるといわれ、経過は大きく三期に分けられます。初期は記憶障害が中心で、不安や抑うつなどの合併が見られますが、比較的慣れた日常生活はおくれ自立できます。中期になると、日常のことができなくなる、人・時間・場所が分からなくなる見当識障害などが表れ、要介護状態となります。末期では過去の記憶もなくなり、思考や判断の能力が低下し、人格変化もみられ、次第に寝たきりになっていきます。

ビジネスケアラーが仕事をしながら身内を介護できるのは、認知症でいえば初期~中期の序盤位までではないでしょうか。それ以降は、デイサービスに通うか訪問介護を受けるか、最後は施設への入居になります。しかしこれらの介護が、介護職不足で受けられなければ、仕事を辞職して介護することになります。このケースが世の中で、確実に増加する現実が迫っているのです。

また新聞の引用となりますが、朝日新聞の5月4日の第一面です。『人手不足、「感じる」7割』との見出しの記事、不安の最上位「医療・介護」80%。外国人労働者の拡大、賛成派が急増。とありました。同紙が全国世論調査で、「人手不足社会」をテーマに尋ねた結果です。外国人労働者の受け入れ拡大する政府方針には賛成62%が反対28%を引き離し、賛否が二分した5年前余り前の調査から、大きく様変わりした。とのことです。その記事の隣には、ビジネスケアラーについても書かれています。

二紙の最近の記事からも分かるように、認知症、ビジネスケアラー、外国人労働者などは、今や全て介護問題(介護職不足)と直結しています。これらの世論調査で明らかになったのは、介護について必要性を実感し、後追いかもしれませんが、ここ数年で世の中の人々の認識が確実に変わってきたことです。

ただしその介護については、世代によって受け止め方は違いがあるようです。朝日新聞による別の質問で、介護について「(保険料などの)負担が増えても、サービスが減らないほうがよい」か「介護サービスが減っても、負担が増えないほうがよい」かを尋ねた。各世代とも、「負担が増えても、介護サービスが減らないほうがよい」の方が上回ったものの、若い世代ほど「介護サービスが減っても、負担が増えないほうがよい」を選ぶ割合が高まった。との調査結果だそうです。年金給付一つとっても、今の若者世代が将来抱えている不安は多く、介護はまだ先の課題なのかもしれません。

「人間の叡智と努力によって、介護崩壊はおこさない」。それに越したことはないのですが、国による制度改革は、世論よりもっと後追いになることは否めません。少なくとも民意レベルの介護問題の認識がもっと高まることを願っています。しかし、現在私が勤めている障害者介護の仕事で、障害者を受け入れる、世間の理解にギャップを感じる事件がありました。次回その話をして、介護職研修を受けてからの心境を書いて、今回のテーマを終わりにしたいと思います。    ~次回に続く~ 




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