風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「日本語の発音はどう変わってきたか」

2023-04-19 | 読書

バツグンに面白い本を見つけてしまった😁
これまで、興味があった日本語文法、語彙史などのほか
元々の専攻だった方言においても、言語地理学的に
どこか「記号としての言葉」に重きを置いて語ってきた。
しかし、方言の音声学的なアプローチにも
エビデンスを確認できないまま興味は以前から持ってはいた。


本書がそのエビデンスとなった。
原日本語は8つの母音を持っていたという話は
「はじめに」冒頭からいきなり出てくる。
第2の「イ」「エ」「オ」だ。
結論に至るまでの論考は端折るが、
やはり東北や山陰に残る8つの母音の発音は古代日本語だったらしい。

ところで、
奈良時代「h」を「p」、平安以降「f」と発音していたことは
これまで得た知識で知ってはいたが
録音機もなかった時代の発音がどうして今わかるのかという
第1章の冒頭に書かれている疑問の答えが眼からウロコ。
なるほど、面白い。
日本語音声史を研究する者は、
日本語だけ追いかけていてもダメってことね。
そしてそれは発音だけの問題じゃなくなる。
仮名遣いについての藤原定家や契沖、本居宣長たちによる
地道な研究結果が今も生きている。
「あいうえお」の50音図のルーツが
9世紀のサンスクリット学習ツールという話にはひっくり返った。
短歌の字余りの秘密に至っては
全く想像もしていなかった内容で言葉も出ない。

個人的に一番面白かったのは四つ仮名と言われる
「じ/ぢ」「ず/づ」の使い分けと発音。
現代はまったく同じ発音なのだが、中世までは違ったようだ。
詳しくは本書を読んでほしいが、その歴史的経緯が面白い。
そしてなんと「ぢ」「づ」は「じ」「ず」とは違い
最初に軽い鼻音性があったのだという。
はい、東北人はすぐにわかりますね。
「ンぢ」「ンず」「おやじ」→「おやんず」ってやつね。
(「じ」の「ず」への変化は「四つ仮名混同」と言われる由)
奈良時代発音から平安、鎌倉を経て室町時代へ
そして近世に至るまで続いた発音変化が
どうして、どのように行われたかについては
とてもわかりやすく、本書で細かく解説されている。
お読みになる際は、周囲に人がいないことを確認した上で
実際に口を動かしながら発音してみるとよりわかりやすいだろう。
日本語音声史をオーソライズしたと言える本書は、
私的には永久保存版。

「日本語の発音はどう変わってきたか
 〜『てふてふ』から『ちょうちょう』へ、音声史の旅」
釘抜享:著 中公新書

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