馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

尺骨粉砕骨折のdouble LCP固定

2016-07-25 | 整形外科

繁殖雌馬が他の馬に蹴られて尺骨を骨折した。

発症翌日にx線検査で判明し、メールで画像と所見が送られてきた。発症の2日後に手術することにした。

この症例は手術前にRichardson教授にメールを送ってみることにした。

回答が間に合うかどうかわからなかった。

ひょっとすると、「粉砕骨折なので無理だ」と言われるかもしれないとも考えていた。

                         -

ありがたいことに、すぐに回答をくれて、手術する朝に読むことができた。

これは、かなりよくある形状の骨折で、2枚のプレートを入れるべきだ。1枚は尾側に、1枚は外側に。

・2枚ともナローLCPが好い。ブロードは尺骨の尾側に完璧に位置させるのが技術的にかなり難しい。

・プレートをどうにかする前に、3.5mmのラグスクリューでより小さな破片を注意深く再構築させる。これが重要だ。プレートを当てようとする前に、時間をかけて合わせる。

・外側のプレート用のドリルガイドを使うのには、筋肉を貫く穿刺切開が必要になる。

・ 5.0mmと5.5mmのスクリューをできる限り使う。プレートの最も遠位には、少なくとも2本のスクリューを橈骨の尾側の皮質に効かせる。

・尾側のプレートは長く、尺骨頭の先近くまで届かなければならない。先を超える必要はない。

・外側のプレートはかなり短くて良い。長くても5-7穴。

・ もし可能なら、スリングリカバリー(吊起帯を使った覚醒起立)をする。私たちはこのような馬にはいつもプールを 使って覚醒させる。

・もしこの馬がディープインパクトなら、私を呼べ!!

まじめに・・・・幸運を祈る。難しい症例だが、絶対にできる。

同じような症例を添付ファイルで送る。10年以上前の症例だ。その馬は、フォックスハントに復帰して、引退まで何年も活躍した。

                              -

が、今回の症例は、Richardson先生が送ってくれた症例よりひどいように思える・・・・

                              -

馬はまったく右前肢に負重できない。

患部はひどく腫れていもいる。

私は尺骨骨折も仰臥で手術するのを好む。

アドヴァイスどおりにやろうとするがなかなか難しい。

粉砕骨折は、実際に開けてみるとX線画像で見たよりひどいことが多い。

 尺骨頭部はかなり変位している。

尺骨の中位は粉砕していて、再建しても強度を作り出せそうにない。

尺骨突起がなくなっている。

肘関節の近位に大きな骨片が飛んでいる。

(つづく)

                           ////////////////

母の見舞いの合間に、姫路城を観に行った。

何年ぶりだろう?

改修が終わって1年ほどで、とても美しい。

「白くなりすぎた」という感想や意見もあるらしい。

しかし、かつてひどく傾いていたのを直したこともあったそうだ。

まさに再構築reconstructされたのだ。

「暴れん坊将軍」のオープニングで写っているのは実は姫路城だったのだそうだ。

鉄筋コンクリートで創られ、エレベーターで昇れる大阪城天守閣とちがって、かつての柱や梁が残っている天守閣の内部もとても素晴らしく、興味深かった。

石垣の積み方や頑丈さにも感心させられた。

熊本城は、崩れてしまったからね。