馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

牛の骨折内固定への提言 キャストによる治療あるいは応急処置から

2015-03-13 | 牛、ウシ、丑

牛の骨折について、実践的に、なおかつ総括的に書かれた文章は少ない。

私は、1995年に「家畜診療」に田口清先生が書かれた牛の骨折(Ⅰ)(Ⅱ)を手元において何度も読んできた。

(家畜診療 第385・386号)

もう書かれて20年経った文章だが、牛を診る獣医師は手元において繰り返し読むべき文章だと思う。

「骨折の評価法」と「外固定による治療法」に分かれ、牛の骨折の種類、部位、その特徴、キャスト、トマススプリント、その装着法、問題点について簡潔に、なおかつ実用的に書かれている。

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たとえば、

多くの牛獣医師が牛にキャストを巻くときも綿包帯を下巻きに使っているが、そのために骨折部がキャストの中で変位しているのをしばしば見る。

田口先生は、この文章で、ストッキネット(筒状包帯)を2重にして使い、当たり易い部分を外科用フェルトで保護したら、綿包帯は使わないでキャストを巻くように書いておられる。

牛の骨折部を整復してキャストを巻いたあと、キャストの中でずれないかどうかの大きなポイントだと思う。

文章の最後は、「内固定法に向けて」として、牛の内固定手術への提言を述べておられる。

ただ、田口先生がその後、牛の骨折内固定について報告されたかどうか私は知らない。

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たとえば、この子牛の脛骨骨折。骨幹中央よりやや近位よりで折れている。

粉砕に近く、バタフライと呼ばれる骨片が少なくとも2個以上飛んでいる。

キャスト固定してあるのだが、脛骨骨折部は大きく変位している。

それでも子牛の脛骨骨折はキャスト固定で骨癒合することが多いが、変位を完全に整復し、キャストの中でずれないようにキャスト固定するのはとても難しい。

ほとんどの場合変形癒合し、その牛は経済価値を失くしてしまう。

骨癒合するまで1-2ヶ月にわたり後肢にフルリムキャストを巻いている子牛の成長の遅れや管理も手間も問題になる。

内固定手術が望ましいと私は思う。

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