その朝、私は競走馬の腕節の関節鏡手術。
入院馬は、まだ調子が悪い。
間欠的なのだが痛くなり、横臥する。
夜中には滾転したとのこと。
POI 術後イレウスかと考えリドカインの点滴もしている。
超音波検査で明瞭な異常なし、
胃内視鏡検査で重度の胃潰瘍なし、
直腸検査で異常な膨満や緊張部なし。
ときどき軟らかい便は出る。
ときどき胃液の逆流・・・・・
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夕方まで様子を観たが、再開腹の決断もつかない。
しかし、このままでは回復の見込みはない。
hig先生にやってみて欲しい、と言われたので;笑
開腹することにした。
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開腹したら脾臓の位置がおかしい。腹部正中、腹底にある。
大結腸が脾臓の外側にある。しかし、結腸左背側変位というわけではない。
小腸は内容に乏しい。色調は良くもないが、悪いわけではない。
前腸間膜根部の動脈の拍動はしっかりしている。
胃も大きくない。
それでも胃拡張もあったから、十二指腸も触っておかないと・・・・と腹腔右背側へ腕を伸ばすと・・
硬い塊に触れた。
?
盲腸底の便秘塊だ。
馬の盲腸は良く発達し、コンマ型をしている。
そのコンマの●部分にしっかり物が詰まっている。
ー
馬を右へ傾け、盲腸尖をできるだけ外へ引き出し、切開する。
盲腸切開部に葉状条虫が1匹付着していた。
盲腸体は粥状の内容が少し入っているだけ。
ホースで水を盲腸へ送り込んでもらし、盲腸底をバスケットボールのドリブルの要領でもみほぐしながら軟らかくする。
ときどき掻き出すと、かなりの便秘内容が出せた。
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馬は、翌日から好調だったそうだ。
盲腸全体の便秘なら、直腸検査でも、超音波検査でも、あるいは腹部の外貌でも判断がついただろうと思う。
しかし、盲腸底だけの便秘だったので術前診断できなかったし、術中も異常発見が難しかった。
盲腸底は腹腔右背側にある。それが十二指腸を圧迫することで術後の胃拡張を引き起こしたのだろう。
危うく2回目の開腹手術でも異常を見逃すところだった。
40年やってきたけど、まだ経験不足だな。
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マユミ
この辺りでは国道沿いにもけっこう自生していたりする。
秋に赤い実がなる植物は多いが、ピンクの実が愛らしい。
庭に植えてみたけど、自生している木の方が立派で実なりが良かったりする;笑
開腹手術のとき、ルーチンでチェックするほどのものではないようですか?
野鳥観察で見たマユミは小さいながらも存在感ありました。ピンク色だし。そこから飛び立った小型の鳥もいたけどたわわに実が残っていたし。
マユミの好きな場所は林の南側、明るいけど適度に日陰の場所のようです。
教科書的には、開腹したら腹腔すべてを探査せよ、ということになっています。30分から1時間くらいかかりますかね。閉塞があれば上位は膨満しているからわかる、血行障害があれば肥厚するか、変色しているからわかる、で通常は大丈夫です。しかし・・・・
日当たりを好むので国道縁に立派に育っているのでしょうね。小鳥は好んで食べてはいないように見えます。留まる枝がなくて食べにくいのか?
1回目の術後、胃液を抜いてもらうと少し良くなるものの、根本的に良くなっているとは思えない印象でした。
それでも、m先生もドロドロになりながら、必死に処置してくださっていました。
もう厳しいかと、諦めかけていました。
そのまま48時間が経ち、主人が電話で、hig先生が切ってくださるので、もう一度やらせて欲しいと……。
2回目の術後は、一気に馬の目に光が戻り、食欲が戻ってきました。
今では、嘘のように元気です。
神の手とは、このことです。
まだまだ、hig先生……引退しないで欲しいです。
もう若い人にまかせて帰ろうと思っていたのですが;笑
惜しまれているうちに去ること、若い人の経験を奪わないこと、も責務だと思っています。何はともあれ良くなってよかったです。