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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

結腸右背側変位 RDDC

2013-09-10 | 急性腹症

繁殖雌馬が夕方5時半から疝痛。

極端にひどくはないが、治まらず、横臥するとのこと。

疝痛開始から約3時間経って来院。

PCV41%、乳酸値1.7mmol/lと、全身状態は悪くない。

しかし、発汗し、前掻きし、身をよじる。

腹囲はかなり大きい。

超音波画像検査では、右肋部で内容を含んで蠕動している小腸が見えた。

そして、大腸の腹壁側に血管が見えた。

盲腸外側紐の血管にしては太すぎるし、周りの脂肪も多すぎる。

おそらく結腸動脈だろう。

だとすれば、大結腸が捻転するか変位している。

                                -

開腹手術したら、左側結腸が盲腸より右側へ変位していた。

結腸右背側変位だ。

結腸を引っ張り出して、骨盤曲を切開し、内容を排泄させ、元の位置へ戻した。

                           -

どうして右背側変位が起こるのかよくわかっていない。

大結腸が盲腸と右腹壁の間へ変位する状態と定義されている。

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こちらはEquine Acute Abdomenの初版に載っている図。

最新版ではこの図はなくなってしまった。

背中側から腹腔を観た図。

図の上が頭側cranial

図の右が馬の右側

図の左が馬の左側

図の下が馬の尾側caudal

                                                                  -

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こちらは Manual of Equine Gastroenterology の図。

これは腹側から腹腔を観た図。

図の左が馬の右側。

図の右が馬の左側になる。

しかし、上の図とは結腸の位置そのものが違う。

骨盤曲は尾側にある。

今回の結腸右背側変位はほぼこの状態だった。

                         ////////////////

きのうは、

黒毛和牛の帝王切開。

併行して当歳馬の臍ヘルニアの手術。

午後は、腰痿のX線撮影。

続いて競走馬の腕節剥離骨折の関節鏡手術。

今日は

競走馬の腕節剥離骨折の関節鏡手術。

午後は2歳馬の大腿骨骨嚢胞のshock wave とトリアムシノロン注入。

夕方、離れた地域から重輓馬1歳の疝痛の依頼。

待っているうちに繁殖雌馬の疝痛が来院。

結腸捻転だったので、即開腹手術。

重輓馬は治まって帰っていった。

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今日は夕方になっても暑さが残る日だった。

それでも、もう夏も終わりだな。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
かつて男の子だった身分としては間違えたくないで... (zebra)
2013-09-11 07:41:17
かつて男の子だった身分としては間違えたくないですがミヤマクワガタですか?
この時期にはもう動けなくなっていることでしょう。
夏が終われば冬が来てまた夏が来るの繰り返しなんて言い出すのは仙人ですか(笑)

落ちてしまった初版の図はあまり好ましくなかったのですかねぇ。
牛の盲腸軸転は内容物から考えるに食渣の大量かつ急激な流入で起きているようです。
子牛の腸間膜根ごと回っているやつですとかはさっぱりイメージがわきません。
消化管は神経機能とかかなり分かっていない部分が多いのでしょうね。
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>zebraさん (hig)
2013-09-11 19:07:07
>zebraさん
 盛夏には落ちているのはメスばかりのように思います。こいつは入院厩舎前で動けなくなっていました。ミヤマクワガタですよね。

 黒毛和牛は第四胃変位を起こさないのに、どうしてホルは起こすのか?
 固定されていない消化管があちこちいかないのは基本的にどういうことなのか?
 手術で消化管を正しい位置に押し込まないといけないのかどうか?
 考えることは多いですね。
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hig先生おつかれさまです。おいそがしいですね。 (kinako)
2013-09-11 19:24:04
hig先生おつかれさまです。おいそがしいですね。

 クワガタがいるなんていいですね。こちらも涼しくなって、ツチガエルの姿を見るようになりました^^(地面も熱すぎてカエルもやぶから出て来れなかったと思います)虫の音も夏ではないことを感じさせます☆

 お腹のなか、イメージができないです・・・ナントカして見慣れないといけないでしょうか、エコーなども。。

 ばんばの若馬さん治まってよかったです^^☆
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>kinakoさん (hig)
2013-09-12 04:37:55
>kinakoさん
 北海道はクワガタはもともと居たようです。カブトムシは外来種なんですよね。

 開腹手術という選択があるのとないのでは診断から目的が変わってきます。変位疝でない場合の対症療法をするためのものや、最期の予後判定から、開腹手術の適応かどうかをできるだけ早く判断することを目的にした術前診断へと。
 その判断の鍵はいくつもあって、多い方が望ましいですが、そのどれかひとつで充分なことが多いです。
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