(つづき)
競走馬では、DDSPを防ぐために舌をしばしば前へ引っ張り下顎へ縛り付ける。
舌は頤舌筋と舌骨舌筋で舌骨に付着している。
ゆえに、舌縛りは咽頭を拡張させうる可能性がある。
しかし、最近の上部気道の空気の流れる仕組みとCTを用いた研究は、正常な馬では舌縛りは舌骨器官を前へ引くことにはならず、咽頭を拡張もさせないことを示唆している。
この筋は鼻咽頭の背側壁に垂直に付着している。だから、茎突咽頭筋の収縮は鼻咽頭の背側壁を持ち上げ、拡張させ、支持し、吸気で気道の陰圧が増すときに虚脱が起こるのを防ぐ。
この筋を支配している第9脳神経をブロックすると、咽頭背側の虚脱と運動中の吸気時気道閉塞が起こる。
(図説明。
A 茎突咽頭筋は茎状舌骨に起始しているa。そして幅広く咽頭の背側壁に付着している。
茎突舌骨bの収縮は運動中に咽頭の背側を安定させ拡張させる。
B 茎突舌骨筋が片側だけ収縮したときに左と右の咽頭背側の広がりの違いに注意。)
上部気道は刺激されたときに上部気道を拡張させる筋肉が活性化され上部気道が硬くなると数多くの報告がなされている。
たとえば、喉頭の粘膜を麻酔すると、運動中の馬は鼻咽頭虚脱と上部気道閉塞を起こす。
鼻孔を塞ぐと、これらの馬はDDSPも起こす。
このことは、運動している馬では知覚性と運動性の機能が充分に協調されて上部気道の開放性が維持されることを示している。
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このNasopharynx 鼻咽頭の項の最後の一文。
The message to the surgeons is that the upper airway is a finely tuned instruments that can be easily disturbed by disease or surgical intervention.
外科医へのメッセージは、上部気道は繊細に調節された器官であり、疾患や外科的介入により容易に傷害されうるということである。
まったく同感だ。(が、外科医はわかっているだろう)
上部気道では、多くの神経と筋肉が微妙に調節されて複雑な動きをして呼吸と嚥下が行われていて、本当は裂いたり、切ったり、焼いたり、縛ったりしたくない。
しかし、調教や競走の具合が悪いと、なんとかしてくれと馬外科医が要望される。
とても難しいことなのだ。
舌骨は解剖で頭蓋骨から食道、気管を吊り下げて支えているという認識しかありませんでした、舌骨が動いたり、筋肉の支点になって機能しているというのは、ダイナミックで感動ですToT
対象が死体vs生体の差ですね(臨床すごい!)
馬で特によく機能していそうですね、人の舌骨はみるからにあまり重要でなさそうですね^^
そうですね。舌や咽喉頭などは下から支えられていませんから、舌骨を使って吊り下げられているという表現が正しいのかもしれません。
解剖学でほとんど無視されている舌骨ですが、構造、機能、病気、治療、などを考えるとそれだけでも1時間の講義と実習では足りないくらいですね!
はじめまして。
入れ込んだり、4コーナーを回ったり、気道の陰圧が強くなると喉鳴りするということはしばしばあります。喉頭片麻痺にしても、DDSPにしても、その他のタイプの異常にしても、喉の構造が吸気圧に負けて虚脱しているので、興奮したり、速度を上げると虚脱が起こるからです。