骨折もその1つだし、頭や脊椎などを傷めてしまうのも1つだし、内臓破裂で死んでしまうのも1つのパターンではある。
しかし、下肢でも、馬の命や価値に関わってしまう外傷も起こりうる。
この馬は、丈夫な金網を蹴破ってしまい抜けなくなったのだそうだ。
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下肢の外傷だと、
骨が傷ついていないか、
関節が破れていないか、
蹄など遠位部の血行が維持されているか、
汚染がひどくないか、
皮膚が欠損していないか、
などが評価基準になるだろうか。
外側(左)。
どちらも、中足骨がむき出しになり骨膜が削れている。
内側では球節が破れて、関節が露出している。
内側の側副靭帯は削れてなくなり球節は脱臼しかねない。
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屈腱腱鞘が破れている。
趾動脈も趾神経もよくわからないが、蹄への血行は保たれているようだ。
関節や腱鞘や滑液嚢が破れているときは、汚れや感染が残らないように念入りに洗わないと、免疫機構が働きにくい袋状組織なので、処置が悪いと致命傷になりかねない。
そして、関節液や腱鞘液は傷の癒合を妨げる。
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しかし、この傷を縫わずにおいておくと痛みがとれず、
感染がひどいことになり、
皮膚は欠損していたり、血行が乏しいので、癒合することは望めないが、縫った方が良い。
長時間になるので、吸入麻酔した。
皮膚が欠損している部分は別にして、他はなんとか縫い寄せた。
内側(右)と外側(左)。
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下肢のひどい外傷では、キャストを巻くのが有効だ。
傷を観察したり、消毒したりができなくなるが、動かないことは傷の治癒のためにとても重要だ。
もちろん、麻酔覚醒時のリスク、対側肢の蹄葉炎のリスク、敗血症や関節炎やフレグモーネを起こすリスクはある。
(つづく)
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今日は、3歳馬のTieback&Ventriculocordectomy.
午後も3歳馬の喉頭内視鏡検査。
新しい超音波画像診断装置の使用説明。
夕方、新生仔溶血性黄疸のユニバーサルドナーからの輸血。
牛でも縛創のすごいやつは骨まで全周やられてたりしますが、
これは面積も深さも複雑さもすごいですね。
外傷に対するキャストの使用は今後ぜひやってみたいです。
縫合時の処置として「生食で念入りに洗浄」以外あまり
思いつかないのですが、なにかポイント等ありますか?
また、縫合後のラッピングは通常の外傷と同じと考えてよいでしょうか?
縛創もひどいことになるようですね。幸いこの辺りの馬は電牧で放牧されたりはしていないので、ワイヤーによる縛創は診たことがありません。
泥や毛が付いてしまうと生理食塩水をかけただけではきれいにならないので、鉗子で皮下織ごと少しずつつまんで取り除いています。ブラシで擦ったり、スポンジで擦ったり、いろいろやってみましたが、結局むしりとるしかないようです。
縫合後のラッピングはウェット管理できる被覆材を使いました。ガーゼを直接よりは良いように思います。