馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

お別れ そしてペットロスのこと

2022-03-09 | ワンコ修行

逝ったのが金曜日で、土曜日曜と安置して、月曜日に町の火葬場で骨にしてもらった。

このペット火葬場はたいへん助かる。

この季節だと埋めてやるために地面を掘ることもできない。

1頭ずつ焼いてもらえる。

・・・でもゴールデンレトリーヴァーだと肢を曲げていてぎりぎり。超大型犬は厳しいかも。

仏様になった相棒。

第二頚堆だ。のど仏と近い場所にあるが、のど仏は軟骨だから焼けてしまうので別物。

仏様の頭に見えるのは第二頚堆歯状突起。ここ馬でよく折れるのよ。

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宗教心はないが供養してやることは喪失感を癒してくれる。

先立ったペットは、虹の橋のたもとで飼い主を待っていてくれる、という話も慰めになってくれる。

泣きたいときは泣き、悲しいときは悲しむだけ悲しんだ方が良いのだろう。

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相棒が残していった大量の毛。わが家では”どぅくげ”と呼ばれている。

そのうち娘がフェルトにしてマスコットを作ってくれるそうだ。

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帰ってきても、相棒は居ない・・・・

そのことを受け入れることもたいせつ。

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飼い主のペットロスに対応してあげるのも獣医師の守備範囲なのだそうだ。

しかし、獣医師にできるのかな、と思う。

獣医師と飼い主をつないでいた動物はもう居なくなっているのだし、

獣医師は人の精神衛生について学んではいない。

          ー

ペットロスでひどく落ち込み、ふつうの生活が営めなくなってしまう人も多いらしい。

核家族化で家族の死を経験することが少なくなり、

近所づきあいが希薄になって近所の親しい年寄りが亡くなる経験も持たなくなっていることも関係するかもしれない。

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ペットが死んだことを認めることができなかったり、

ペットの死を誰かのせいにして悲しみを怒りに代えたり、

病気に気づいてやれなかった、安楽殺するしかなかった、充分に供養してやれなかった、と自分を責めたり、

落ち込んで飼い主自身が健康を害したり、生活が営めなくなったりする。

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悲しいときには泣いていいし、おおいに悲しんだらよいのだそうだ。

想い出を話し、それで悲しくなるならまた涙すればいい。

ひとりなら思い出をつづり、あるいは写真を見返せばいい。

少し元気が出たら、新しいことを始めるのもいい。

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私は、獣医師として経験してきたことで救われているかなと思う。

たくさんの馬が死ぬのを診てきたし、

生き物が死ぬのは誰のせいでもないし、誰かを責めても詮無いことだし、

死が生命活動の終わりだということも理解している。

いつかまた犬と暮らしたい。

相棒を心の中で見送って、相棒が想い出になったら、だ。

 

 

 

 

 



30 コメント

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Unknown (zebra)
2022-03-09 06:48:59
町の?は行政ですか。
そこまで行き届かず、また需要もあり、清掃業者の焼却場がやっていた事もありますが、ダイオキシンの問題もあり、これも簡単ではないのかも知れませんね。
埋めると置いてきてしまうから自分のお墓に入れるためにお骨にしてもらう、という流れが今時分なのですかね。

私は子供の頃に動物が身近にいて、しかしそれが獣医師になったモチベーションとは違うみたいですが(金儲けじゃないよ)この喪失感には耐えられないからとても飼えないな、とヒトの飼っているのを観て診て思います。
ヒトが飼っているのに寄り添っても、喪失感をどうこうする事はできないですよね。
喪失を最小限にするという事を生業にしているのかも知れないですけれど、これは対価の話でしかないかも知れません。
金銭では語れない(語れてもいいですけれど)バリューを生み出してしまうと、獣医師ロスが起きるかも知れませんけれど。

現実はもっともっと低いところにあって、ロスの原因が獣医療に回ってくる事がままあろうかと思います。
ヒト医療では確率的にもっと少ないかも知れませんが、金銭の話になると大きくなり、従事者殺人となってもっと大きなロスを生んでということがニュースになったりしますね。
大動物になると飼っている人に怪我しないでね、と声かける場面も出てくるでしょう。
向こうはお構いなしに頼んできたりしますが苦笑
現実はここからですね。
相当自己責任ですから笑
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ペットロス (静内のおかん)
2022-03-09 09:50:58
2012年に静内に10歳の愛馬を連れて移住した際にはいろいろアドバイス頂きありがとうございました。コロナなど様々な問題から昨年関東に戻り、愛馬は20歳になります。

虹の橋はありますよ。私の初代愛犬は、母が癌末期で入院したら鼻の癌であっという間に死亡。追うように母が亡くなり、ひと月した時、母と愛犬の気配を感じました。母の遺言で新たに迎えた子犬が吠えて、見上げて
「ここに犬がいる、ここに誰かいる」と吠えて教えてくれました。49日を終えて母が愛犬と共に会いに来てくれたのだと思います。

日頃、「死んだら無、何もない」、と言っていた父が、「死後の魂は確かにあるようだ」、と考えを変えました。だって愛犬が母をお迎えに来たのですから。

彼らはいつまでも待ってます。私たちが道に迷わないように、お迎えに来て、正しい所に導いてくれます。ですからお別れの言葉は、See you again sometime(but not too soon)です。新たなワンコを迎えたら、オラ君がワンコに教育的指導をしてくれると思います。僕の代わりにお父さんとこうやって遊んであげて、と。
Rest In Peace.
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Unknown (rani0914)
2022-03-09 17:25:41
江國さんのデュークは男の子の姿になって
会いに来てくれたけど
オラ君はどんな姿で現れてくれるのかな…

先代のボルゾイが旅立った時
かかりつけの獣医さんが
お花を送ってくれました。
お礼の電話をしながら私は号泣してしまい
言葉が聞き取れないほどの嗚咽で
看護士さんを困らせてしまいました。
今、思うと気恥ずかしいような…。

しばらくは涙ばかりの日々が続きます。
いつも座っていたマットのへこみ。
フードの食器。 庭にいても風が吹いても
ぼろぼろ涙が溢れます。
でも悲しい時は我慢せずに思い切り
悲しんだほうが立ち直りも早いような
気がします。

犬との暮らしは素晴らしい。
相棒を失った喪失感はやはり犬が
埋めてくれるようです。
二代目オラ君に会える日を心待ちにしています。
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Unknown ()
2022-03-09 19:23:49
うちにも13歳になる愛犬がおります。
12歳過ぎてから、歩様が弱くなったり、皮下腫瘍摘出したり年齢を感じさせます。
避けられないいつか、この頃は思いが毎日頭をよぎります。

愛犬が居なくなった心埋められるのは、やっぱり犬なのかなとも思います。
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Unknown (ナノ花。)
2022-03-09 20:13:02
 私はペットロスに対応することは獣医さんの守備範囲では無いと思います。
 飼い主はペットとの関係で、幸せな時間も辛い時間もしっかり引き受けるべきだと思っています。そして、強いロスを抱いた方はちゃんと供養をしても喪失感は薄まらないと思います。気が済むという事で片付かないほど深く強い感情だからです。
 私はいつでもただの飼育員だったけれど常に動物が一番幸せでいるように環境を整え、動物の福祉目的に獣医さんのお力も度々借りました。そのせいか何度かの別れに、辛くはあっても喪失感はわきませんでした。でも、〇〇に、××に、△△にまた会いたいなぁ、と今もって思います。オラくんも間違いなく超!幸せだったと思います。   以上、長文申し訳ありません。
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Unknown (はとぽけ)
2022-03-09 20:25:48
 火葬っていいな、と思う。澱んでいく気持ちも昇華されるようで。馬医者さんらしい骨の解説にもほっとする心地。
 ゴルには闘病にも死に目にも会えず、ねじれてこじれたペットロス。気持ちはいつも宙プラリンなまま過ごしつつ、オラ君の登場で当時をなぞってみたりもしていました。
 オラ君からの宿題のように、わんこ修行Duke編はまだ続くのかな?それはある意味はとぽっけもおなじかな。

 おーオラ君。これまたいい顔!そもそもネットで、画像でしか知らないから、この画像にいつもと変わらない気持ちで話しかけてハッとする。さみしさこみ上げる。もう老けないんだね。記憶の保持される限り、ずっと生き続けるオラ君なのだった。
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Unknown (Green)
2022-03-09 22:47:55
hig先生
もらい泣きです。
二人の楽しそうな時間が思い出されます。
私にしてみれば馬獣医師の神に近い存在のhig先生がみせてくれる、人間的な微笑ましい側面でした。そこで勝手に親しみを感じたり。
オラ君のご冥福をお祈りいたします。
待っていてくれると思うと、自分の死も怖いものではなくなりますね。
昨年愛猫を亡くして、そう思うようになりました。自分だっていつどうなるかわからないもの・・・。
まだまだ未熟の域を超えない自分ですが・・・。
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>zebraさん (hig)
2022-03-10 04:20:49
町の直営のようです。人の火葬場の裏にあります。料金も安かったです。

本当に愛しているものを失くしたら、失くす前には戻らない、と開き直れば良いのだと思います。失くしたまま生きていけば良いのです。

自分で考えて自分で決断することが納得につながり、後悔しないで済むのではないでしょうか。その点でもインフォームドコンセントは大事なんでしょう。
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>静内のおかんさん (hig)
2022-03-10 04:24:37
関東に戻られたのですね。

虹の橋のたもとで待っていてくれる、というのは本当に癒しになります。
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>rani0914さん (hig)
2022-03-10 04:29:33
やっぱり元気な男の子ですかね。ゴールデンのままでも良いです。

主が居なくなった食器、つながっていたワイヤー、毛布が敷かれたベッド、犬小屋、ゆっくりかたづけようと思います。
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