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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

大動物獣医さんのphysical 有酸素運動のススメ

2023-10-05 | How to 馬医者修行

私は、すでに齢63を過ぎ、もう若い頃の体力もないし、回復力・修復力もない。

それでも大きな故障もせずにやってこれたことは幸いだった。

若いときは感じなかったし、考えなかったが、私たちの仕事には、いわゆる”体力”が必要だし、重要だ。

そして、故障しないように体を維持し、使い続けなければならない。

             ー

社会人になると定期的に運動させられることはなくなってしまうので、自分で何か運動する習慣をつけた方が良い。

私は、就職したころ隣町のホテルにプールができて泳ぎ始めた。

水泳は呼吸を制限されるキツい運動だが、自分のペースでゆっくり泳いでいるうちに長い距離を泳げるようになった。

呼吸が楽にできる平泳ぎから始めて、だんだんクロールに移っていったのが良かったように思う。

             ー

職場の先輩に誘われて、秋には町民駅伝大会に出たりもしていた。

小さな町の町民大会なので、日頃からジョギングしていて、たまたま同じ区間に速い高校生がいないと区間賞をもらえることもあった;笑

             ー

自転車にハマっている先輩もいて、誘われてサイクリングに行った。

ロードレーサーに乗るのは初めてだったが、別に乗るのが難しいわけではない。

その頃、同期の獣医師のうちでトライアスロンの本を見かけて、借りてきて読んだ。

水泳と自転車とランニング。

自分にもできそうだ、と思って、トライアスロン用のハンドルを付けた自転車を買った。

             ー

たしかトライアスロンレースデビューは青森県鯵ヶ沢だった。

ロングのトライアスロンにも出場した。

まあ、体力維持のための運動としてはやりすぎ;笑

30歳を過ぎると、職場で人間ドックに行かされるが、面談では「何も言うことはありません」だった。

             -

35歳までフルマラソンを走っていた。

フルのトライアスロンのタイムを縮めるためにはフルマラソンで3時間を切れるようになりたいと考えて、ランニングに集中してみたりもした。

ただ、私はランの練習距離を延ばすと膝の故障(腸脛靭帯炎)を起こす。

その頃、仕事も忙しくなり、博士号取得の勉強もあり、子供たちの世話もあり、トライアスロンもマラソンもレースからは遠ざかった。

             -

振り返れば、30代40代のあの仕事の激務を支えてくれたのは鍛えた体だったと思う。

一番だいじなのは毎日少しずつでも有酸素運動を生活に取り入れること。

ジョギングでも、自転車でも、縄跳びでも、一日に一度は息があがるような運動をした方が好い。

水泳は毎日のように泳ぐのは難しいだろう(プールが近いか、費用がかかる、時間がとられる)。

自転車は爽快だが、器材が要るし、パンク修理などの知識と技術も要る。

それと、北海道では乗れる時季が短い。5月から10月の半年かな。

スピードが出るので事故にも注意。

私は、50半ばから犬の散歩になっちゃったけど、これは運動強度が低すぎたかもしれない;笑

退屈なのを除けば、これはなかなかよろしい。

 

 

 

 

 

 

 


獣医学教育用模型

2023-09-24 | How to 馬医者修行

獣医学向け教育模型、が今は売られている。

海外製品を輸入しているのだろうと思う。

・生きた動物や死体を実習用にそろえられない。

・生きた動物や死体では、腐る、汚れる、臭う、が付きまとう。

・生きた動物を実習に使うのは動物福祉上好ましくない。

が理由で、こういう模型が必要とされているのだろう。

観て、触って、だけではなく、静脈注射、気管挿管、直腸検査、難産介助、などが練習できるように工夫された模型もある。

注射を練習する部位などは、中のチューブ(血管のかわり)に液体が入れられるし、何度も刺して傷むとその部分を取り替えられるようになっている。

某大学で、ウマ用の模型のいくつかをみせてもらったのだけど、よくできているな、と感心した。

冷たく硬い樹脂でできているのではなく、シリコンで覆われていて、手触りが温かく柔らかい。

観る、見せる、だけでなく、触って、扱うことが考えて造られているのが感じられた。

しかし・・・

高い。so expensive !!

桁が違うんじゃないかと思うほどの値段。

そして、やはり本物とは違う。

先週、実習に来ていたS君には、腕節骨折の馬で、

「腫れてるだろ? 熱があるのわかる?」

と腕節を触らせた。

馬の全身模型は 258万2800円だそうだ;笑 1/3モデルで。

馬の前肢模型は 50万6000円。

砲骨ってなんだ・・・・ああcannon bone 管骨の誤訳か。

でも模型は熱をもたない。病変部が腫れてもいない。

              -

難しい時代になってきているんだな、と思う。

以前、学生をうちに寄こしませんか?と提案したことがあった。

1週間5名ずつ、1年のうち半分25週を当てれば125名に本物の馬と牛の診療現場を体験させられる。

そのことの値打ちすら理解してもらえなかったんだろうな。

             /////////

視診、触診、画像診断して

静脈注射して

馬を運んで (本物は模型より重いよ)

術野消毒して

関節穿刺して

関節鏡手術を始める

気管挿管して

静脈留置して (本物の血が出るよ!)

動脈留置して

血ガス測定、心電図、ガスモニター付けて (実物だから変動するよ!)

尿道カテーテル入れて

それらをやりながら、頭をフルに回転させる。

模型も好いけど、模型じゃね。

 

 

 

 

 

 

 


言葉は難しい 重複表現

2023-09-08 | How to 馬医者修行

「馬から落馬する」は、やってはいけない重複表現の例としてよく挙げられる。

原文というか、フルバージョンがあって、

「いにしえの昔の武士のさむらいが 山の中なる山中で 馬から落ちて落馬して 女の婦人に笑われて 赤い顔して赤面し 家に帰って帰宅して 仏の前の仏前で 短い刀の短刀で 腹を切って切腹した」

というのだそうだ。

ちょっとくどい;笑

             ー

会話の中では、ある程度は許されるというか、聞き取りミスを避けるために意識して重ねて言うこともあるように思う。

ただ、文章表現では避けなければいけないだろう。

そして、学術論文ではレフリーや編集員に指摘されたりする。

気になっているのは・・・・

             ー

「体重が重い牛」

これはどう思いますか?

子牛ではなく、育成牛や成牛など体重が重い牛では、ヒト用プレートでは強度が不足する・・・・という風に使いたい。

この「体重が重い牛」以外、わかりやすい表現を思いつかない。

しかし、重複表現ではあるのだろう。

「重」が重なってるし;笑

             ー

そもそも、「脛骨骨折」も重複表現ではないだろうか?

「骨」を「骨折した」と言っているわけだから。

「骨」を重ねるのではなく、「尺骨破折」などとするのが文法論理上、日本語として正しいのではないでしょうか。

う~ん、日本語は難しい。

                                              ー

英語でも同義語反復 tautology は避けるべきとされる。

ただ、母国語ではないと、通じているかどうかわからないので別な表現で重ねて言いたくなるし、

学術論文でもいくつかの表現を用いることで概念を創っていきたいがゆえに、おなじ概念の言葉を複数使いたいことがある。

plate fixation

plating

plate osteosynthesis

統一しろとか、どう違うんだ、とか指摘されることもあるのだが、

言葉とか、文章表現とかにかかわる本質的な問題が問われているように思う。

問題が問われる・・・・も重複か・・・・笑

           //////////

重ならないように間隔をあけて

それでも自分のを先に食べて

ほかの奴の飼い桶をねらう

 

 

 

 


酪農学園大で講義 獣医学教育の変遷

2023-07-29 | How to 馬医者修行

先日、酪農学園大で講義をしてきた。

私に振り当てられたのは、「馬の呼吸器病」と「馬に携わる獣医師として」。

90分ずつ2コマになります。

           ー

5年生たちは真面目に聴いていた。

質問は無し。

馬の臨床に興味があるのかないのか・・・わからない。

           ー

今年の獣医師国家試験の合格率は低かった。

COVID19のせいで獣医科大学も講義はオンラインになり、学内実習がまともにできず、外部へも実習に出られない被害を受けた世代。

学力が低下したせいだったのかどうかは私にはわからないが、獣医科学生の気質や経験値も変わってしまったのかもしれない。

           ー

講義のあと、Skills Lavoratory という建物を見せてもらった。

3階建て校舎を1つ使って、模型、モデル、模擬診療室、模擬手術室を使って実習できるようになっている。

イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、etc.の模型が並んでいた。

馬だと、その模型で、採血、静脈注射、バンデージ巻き、直腸検査、難産介助、etc.が体験、練習できるようになっている。

その模型の馬の頭部はゴム?シリコン?でできていて、柔らかく、とてもリアルだった。

海外製。

ん百万するのだそうだ。

120人学生が居るので、8名ずつ実習しても先生方は15週間それを繰り返すことになる。

たいへんな労力だ。

本当にお疲れ様です。

           ー

馬の実習のリーフレットもいただいてきた。

実習内容が写真入りで説明されていて、採血・注射からX線撮影まで解説されている。

「馬の後ろに立つな」が各項目で書かれている;笑

           ー

私なんぞは、どうやってそれらのことを覚え身につけて来たのだったか・・・・・

もう、「先輩の背中を観て学べ」ではダメなんだし、

「痛い思いをして身につけろ」もありえない。

そういう時代になろうとしているのだ。

           ー

私は内科学教室の出身で、外科手技を基本から教わったことはない。

それでも必要とされるから、日本では誰もやったことがない、あるいは成功例がない馬の手術をいくつもやってきた。

「教わってないからできない」と思ったことはないし、

「習ったことがないけどやっていいですか?」と訊いたこともない。

まあ、時代は変わるのだ。これは”進歩”というものなのだろう。

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スズメバチが家の玄関近くに巣を作っていたので

殺虫剤ハチジェットを武器にやっつけた。

マニュアルはないぜ;笑

必要なものは何だ?!

 

 

 

 

 

 

 


麻布大学で講義 馬の消化器疾患

2023-06-24 | How to 馬医者修行

今年も麻布大学へ講義に行ってきた。

私の担当は消化器疾患。

主に疝痛の話をした。

馬の疝痛をどう診断し、どう治すか。

            -

学生さんたちが熱心に聴いているのには驚く。

良い大学だ;笑

これは客員講師の課題ではなくて、日頃のその大学の教育にかかっているのだろうと思う。

授業が面白いもので、自分の役に立つものだということを学生が認識しているのだろう。

            -

今年は時間があったので、大学の大動物診療施設を見せていただいた。

Large Animal Veterinary Educational Center だったかな

よく考えて、教育を中心に設計されていて、実際に活用されながら、きれいに管理されているのに感心した。

全国の大動物獣医師に麻布大学卒業生が占める割合が多い理由が納得できた。

            ー

ただ、馬の診療と臨床教育が継続できず困っておられる。

馬の臨床ができて、教育に意欲があって、研究ができて、できたら博士号を持っている人が居ないものか・・・・・・笑

大学の入り口にある馬場では体育乗馬が行われていた。

獣医学科だけでなく他の学科の学生も乗馬を教えてもらえるのだそうだ。

ただ、とても人気があって希望者全員ではないとのこと。

馬の業界の者として、馬の教育に取り組んでいただけることは、喜ばしい、ありがたいことだなと感じたことであった。

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ことしは前日を移動日にし、昼に横浜へ着いた。

お昼は中華街でランチ。

ちょうど三国志を読んでいて(漫画だけどね)

祀られている関羽将軍に挨拶しておきたかったのさ