真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「若妻乱熟 スワップでいきまくり」(1990『熟れた若妻 ザ・スワッピング』の2017年旧作改題版/制作:メディア トップ/配給:新東宝映画/脚本・監督:片岡修二/製作:伊能竜/撮影:下元哲/照明:白石宏明/編集:酒井正次/助監督:カサイ雅弘/監督助手:松本憲人・青柳誠/撮影助手:片山浩/照明助手:林信一/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:大沢裕子・秋本ちえみ・千秋まこと・池島ゆたか・下元史朗)。助監督のカサイ雅弘が、ポスターにはカサイ昌弘、最終的に全然違ふ。
 走るカメラのシャッター音を、ピアノが一鳴りポロンと追ひ駆けてのタイトル開巻。胴体の真ん中が血塗られた、秋本ちえみの刺殺死体。三人の鑑識官(何れも識別不能)に交じつて、刑事の野沢俊介(下元)が現場に入る。人妻が自宅マンションで殺害され、なほかつ野沢はその女を知つてゐた。参考人として事情聴取を受ける、被害者・佐伯悦子(秋本)の夫・佐伯恭司(池島)と、野沢は取調室で再会する。二ヶ月前、野沢は鈴木の偽名で、佐伯改め吉田夫婦とスワッピングを行つてゐた。
 配役残り、鑑識官とは異なり顔も普通に抜かれるにも関らず、事情聴取に同席する田中要次似の制服警官は不明。秋本ちえみの女優力に屈したか、ビリング頭の存在感は感じさせない大沢裕子が、俊介の妻・亜紀子。千秋まことは、夫婦交換のコーディネーター・立花梨沙。またこの女がムチャクチャで、あくまでここでは鈴木・吉田夫妻を適当に顔合はせさせてゐる場から一旦退席、したかと思ふと煽情的かつ藪から棒なボディスーツで大登場。四人を煽りつつ、勝手に手前がオナニーに燃える大暴れ。出鱈目な火蓋の切り具合の向かうに、恐らく苦心したのではなからうか力技の三番手起用法が透けて見えなくもないのが感興深い。
 DMMのサムネが何故か冴木直と一ノ瀬まみな、片岡修二1990年第一作。そもそも、この二人が共演した新東宝作なんてあんのかな?関根和美が思ひだしたやうに性懲りもなく仕出かす、土台が頭数から限られたどころではない負け戦上等のサスペンスを、片岡修二は凝つた設定と、濃厚な濡れ場の僅かな間隙を縫つて物語を少しづつ少しづつ繋ぐ手法で、スリリングに切り抜ける。銃声に野沢が振り返るショットがどう見ても遅い、ラストこそ幾分失速を感じさせなくもないにせよ、終始人を喰つた佐伯が覗かせる妙な余裕の源で袋小路を突破すると、一度は揃つたかに思はせた四人の人間に四つの偶然が、崩れる瞬間の煌めきにも似た衝撃には誇張でなく震へた。裸と映画の二兎を追ひ、見事得てみせた一作。兎にも角にも、抑へた造形からも迸る、下元史朗の色気が堪らない。かういふ物言ひは決して好むところではないものの、このクラスのタレントが、正直昨今見当たらない。柳東史が大成してゐればと死んだ子の齢を数へるか、それとも、平川直大がこれから大化けするに足る場数の存在を望んでみるか。いや、そこはその流れだと山宗だろ。


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