真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「愛液まみれの花嫁」(2013/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:増田秀郎/撮影助手:宮原かおり・竹野智彦・岡山佳弘/編集助手:鷹野朋子/スチール:津田一郎/タイミング:安斎公一/効果:梅沢身知子/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/撮影協力・下着協賛:GARAKU/出演:樹花凜・横山みれい・なかみつせいじ・野村貴浩・津田篤・山口真里)。
 タイトル開巻、ウェディングドレスを着たヒロイン(樹)が、なかみつせいじの声から逃げる。崖から海に転落したヒロイン―以下仮名で花凜―が意識を取り戻すとそこは貸し別荘で、傍らにはリゾードウエディングを挙式する予定の婚約者であるといふ坂口一輝(津田)がゐた。尤も花凜に、坂口の記憶はなかつた。更に混乱する、花凜の脳裏。医療行為の無効を説き花凜に迫る白衣のなかみつせいじと山口真里は、別荘のオーナー夫妻・千葉将雄とさゆりとして、同様に花凜に男が女たらしである旨を警告する横山みれいと当の女たらし・野村貴浩は、旅行中の尾崎京子と徹として花凜と坂口の前に現れる。既視感とも幻覚とも知れぬイメージに度々襲はれながらも坂口と一日を過ごした花凜は、その夜婚前交渉を営む。ところが花凜が満ち足りた眠りから目覚めると、再びウェディングドレスを着て海に転落。再度貸し別荘にて意識を取り戻すと矢張り傍らに居た坂口は、何とさゆりとのハネムーン中。一方自らは、不倫相手の尾崎とその場に来てゐるらしい。昨日坂口と撮つた筈の写真も入つてゐないスマホの日付は、昨日と同じ五月一日。周囲の人間に関する記憶は兎も角、花凜はそもそもアイデンティティを依然取り戻せぬまゝに、“この世界は、前の世界とは違ふ”ことを悟る。
 先に小倉に着弾した、渡邊元嗣2013年第三作。因みに二本立てもう一本は、渡辺護の「義母の秘密 息子愛撫」(2002/主演:相沢ひろみ)の、2009年旧作改題版「背徳エロ 義理のおふくろ」。小倉名画座は特にも何も一切喧伝するでなく、何気にナベ・ツイン・ドライブを打ち込んでみせた、実に洒落た番組を組む。映画本体に話を戻すと、花嫁姿の女が記憶を失ふところから幕を開く、如何にもな物語。混乱する記憶の断片に苛まされつつ、女は細部を違へ繰り返される、五月一日に彷徨ひ込む。ダークなエンドレス、エイトならぬファイブに心身ともの病弱を思はせる、樹花凜の大き過ぎる瞳と白過ぎる肌は尚一層映える。それでゐて、濡れ場に突入すると案外肉感的であるのは殊更に素晴らしい。西岡秀記の不在にこの期に及んでも直面せざるを得ない、男優部の若干の弱さには目を瞑れば、脇に控へるのも前作から連続参戦のクール・ダイナマイト・ビューティー横山みれいに、ナベシネマのトメの座が今や完全に似合ふ山口真里と、裸的にも映画的にも全く磐石。丹念に丹念に積み重ねた伏線の数々を、幾つか切り口が予想される中で、全て此岸で綺麗に片付ける丁寧な謎明かし、自体には何の問題もなかつたのだが。陽光に眩しく輝く木々などは息を飲むほど鮮やかに捉へてゐた割に、選りにも選つて肝心要の真相が明らかとなる段に際しての、頭を抱へたくなるほど画期的な画の貧しさが致命傷、激しく興を殺がれる。もう一点、劇中一回目の五月一日。坂口が花凜の記憶喪失を嘆く件、津田篤の泣き芝居がコメディ調にしか見えないのは、とてもさういふ演出意図とは受け取り難いゆゑ考へものだと思ふ。そもそも聞いたことのない斬新なアイデアではないにせよ、端整な一品たり得てゐておかしくなかつたにも関らず、惜しくも釣り糸の切れた一作である。尤も、無機質な着地点をそのまゝ放り投げはしないのが、ゴールデン・エイジの第二章を長く快走する目下のナベ。「愛液ドールズ 悩殺いかせ上手」(2009/主演:クリス・小澤)も髣髴とさせる幻想的かつ美しいラストは、無体なネタに潤ひを添へる。

 心が閉ざされた今、舞台となる貸し別荘の詳細は不明。もしかして御馴染みの下着協賛に加へ撮影協力ともクレジットされる辺り、保養所か何かGARAKU(ex.ウィズ)所有の物件?
 備忘録< ヒロインは①一日分が限界②全消去付加③セクサロイドである二号機とのリンク障害、といふメモリーに欠陥を抱へた、恋愛シュミレーション・アンドロイドの試作初号機。残りの五人は開発チーム


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