真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻家庭教師 濡れしぐれ」(2000/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画/監督:小川欽也/撮影:郷田有/照明:岩橋豊/助監督:寺嶋亮/音楽:OK企画/編集:フィルムクラフト/スチール:津田一郎/脚本:水谷一二三/監督助手:亀谷英司/撮影助手:西村友宏/照明助手:山下由美/録音:シネキャビン/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/タイトル:ハセガワタイトル/出演:椎名絵里香・江本友紀・小池結・杉本まこと・久須美欽一・平川ナオヒ・中川大輔)。照明の岩崎ではなく岩橋豊は、本篇クレジットまゝ。物凄く中途半端な位置にクレジットされる脚本の水谷一二三は、小川欽也の変名。
 一浪生の佐藤拓也(中川)が英語のテキストを―何故か縦書きのノートに―和訳し、その背後では、人妻家庭教師の奈美(椎名)が呑気にコーヒーを楽しむ。一旦一段落、訳をチェックする奈美が拓也の背中に無造作に押しつけるオッパイの表現に、チョイチョイ裸を挿み込む―だけの―プリミティブな演出が妙にそゝる。奈美が玄関の中から拓也に送り出されタイトル・イン、自室で寝転がり拓也が改めてイマジンを膨らませる奈美の痴態にクレジット。画が替る毎に、ブラを外してゐたりゐなかつたりする繋がりの悪い無頓着さに、ここでは躓く。佐藤家と津田スタジオを兼用する、奈美自宅。奈美の夫・浩史(杉本)は勤務先倒産につき失業中、元高校教師の奈美が家庭教師のアルバイトをしつつ、浩史は―正確には“元”―社長秘書の清水の紹介で、漸く新しい就職先が決まりかけてゐた。そんな流れでの夫婦生活、主演女優の椎名絵里香が、絶妙に美人過ぎないルックスと、デカい乳輪がどエロくて素晴らしい。入念な濡れ場を完遂してなほ、カット尻まで杉本まことが乳を触り続けるジャスティス。
 配役残り小池結は、家庭教師の終り際に遊びに来た、要は大概強引な三番手の捻じ込みやうを振り抜く拓也の彼女・友紀。一応一年後輩の受験生なので、二人とも通れば目出度く同級生となる格好、目出度いのかどうかよく判らないけど。後を辞した奈美が“あんな可愛い彼女”と述懐するのが、正直通らない下駄面。平川ナオヒ(現:平川直大)は、実は生徒との淫行を仕出かし教職をドロップアウトしてゐた奈美と再会する、当時喰はれた平川あきら。奈美がその後結婚したのを知ると、過去を出汁に関係を迫る悪ナオヒーローぶりを披露する。椎名絵里香×平川ナオヒと、江本友紀×杉本まこと。二つの絡みが苛烈なクロスカウンターを放つて同時進行する中盤を支配する江本友紀は、ところでその頃浩史が会つてゐた前述の清水久子、愛称チャコ。端からそのつもりで、浩史に転職の代償としてワン・ナイト・ラブを求める。仕事を世話して呉れたばかりかヤラせても呉れるなんて、爆裂する史上空前の濡れ手で粟感が堪らない。慰撫して呉れ、怠惰でもいい、もつと俺達を優しく慰撫して呉れ!
 気を取り直して、貫禄すら漂はせる下衆い千両役者・久須美欽一は、拓也の近所に住んでゐた奈美の教師時代の同僚・小林。案の定拓也にも手を出す現場を盗撮した奈美の、菊の花まで散らす。小池結投入前段、横断歩道を渡る奈美に、いいぢやんと垂涎する特に必要なやうにも見えない内トラは不明、定石だと寺嶋亮か。
 初期ナオヒーロー目当てで見てみたところ椎名絵里香が拾ひものであつた、今年も新作を―どうせ伊豆で―撮影予定の今上御大・小川欽也、2000年案外少ない全三作中第一作。空気ほどしか存在しない物語を通して、二三番手は仲良く一幕限りに、男優部総嘗めの四冠を達成する椎名絵里香の裸をひたすらに見せ倒す、誠腹の据わつた裸映画。それはそれで、いいにせよ。如何にも小川欽也らしい脱力系のフリーダムが、火を噴くのは最終盤。因みに嫁とは半年前に離婚した小林家で結構酷い目に遭つておいて、普通に風呂に浸かる奈美はまづあきら、そこからなのかよ。拓也に続いてついでに小林、最後に申し訳程度に浩史。冷静に振り返ると劇中二日間の間に繰り広げられた濡れしぐれの数々を想起した上で、若い子の摘み食ひを止める決意でケロッと一件を強制落着。再度の夫婦生活で最後を締めるのかと思ひきや、尻が痛むのか嘘生理で回避。その後受験に合格した拓也と再会するものの、その時奈美はといふと御懐妊。ラスト二分半を他愛ない世間話に終始する、即ち締めの濡れ場を放棄した謎エンドには完全に油断してゐて逆に吃驚した。なかなかどうして一筋縄では行かない、ある意味老獪なのかも知れない一作である。


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