真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ドロドロの人妻たち -痴漢と不倫の果て-」(2004『三面記事の妻たち -痴漢・淫乱・不倫-』の2016年旧作改題版/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/脚本・監督:佐々木乃武良/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:鏡早智/照明:サブリナ/録音:シネキャビン/編集:フィルムクラフト/助監督:小泉剛/監督助手:福本明日香/撮影助手:橋本彩/照明助手:花木洋美/スタジオ協力:カプリ/タイトル:高橋タイトル/現像:東映ラボテック/出演:葉月蛍・竹本泰志・瀬戸恵子・牧村耕次・酒井あずさ・柳東史)。各話ごと冒頭にクレジットされる出演者中、葉月螢が本篇では略字。撮影助手の橋本彩子ではなく橋本彩は、本篇クレジットまゝ。あと照明部セカンドに続いてスチール:元永斉
 スタッフ・クレジットの後を追ふ形で、鼻歌で家事を切り上げ美奈子(葉月)登場。「今日はお友達の麻衣子と、フランス料理のランチバイキングを食べに行くんです」と、以降ああだかうだな心情に加へ見れば判る状況まで逐一といふか一々一から十まで音声情報にして呉れやがる、後の電車痴漢のシークエンスに際しては官能小説朗読の領域に突入するトゥー・マッチ・モノローグ超起動。殆ど、演出の労を放棄したやうにさへ映る。とまれそんな乃武良クレジット通過してタイトル・イン、俯瞰の陸橋を潜る電車ショットに“第一話 痴漢”。特に混み合つてもゐない車中、美奈子は手鏡での品定めを経た痴漢を被弾。慌てて途中の駅で降りた美奈子が、偶々その駅が降りる駅で再会した痴漢は、現在塾講師の清純女子高時代の恩師・梶山ハルヒコ(竹本)だつた。そもそも倦怠期を持て余してゐた美奈子はとかいふ次第で無人の教室戦に、結局約束をスッぽかされた、お友達の麻衣子(瀬戸)がプンスカして“第二話 淫乱”。雑貨屋を覘いて出て来た麻衣子のバッグに、私服警備員?の飯島益男(牧村)がネックレスを忍ばせる。麻衣子に接触した飯島は、どう見ても事務所には見えない普通のマンションの一室に連行。麻衣子を喰つたつもりの飯島が、最終的には麻衣子に喰はれるある意味男女の機微。第二話オーラス、完全に火の点いた状態で帰宅する麻衣子に、コインランドリーで捕獲される童顔の男は小泉剛。“第三話 不倫”、欲求不満をアンニュイに拗らせる智美(酒井)は、不倫相手の飯島を麻衣子に奪はれる。一旦出撃、雑貨屋表まで来て引き返しそこら辺の児童公園でぼんやり黄昏る智美に、美容ドリンクのセールスマン・津野田浩史(柳)が声をかける。
 今でいふといんらんな女神たち的な勝利一との合同デビュー企画、単独第八作の次に来る再びの坂本太・デビュー二作目の羽生研司との二度目のトリオ企画。三話オムニバス構成に、佐々木乃武良が一人で挑んだ単独全十作中第九作。一話と二話はそれなりにスマートに、二話と三話は結構力技でリンクさせ、とりあへずの統一感は醸成した上で、過剰モノローグが爆裂する素頓狂な第一話。瀬戸恵子の馬力で一点突破する、裸映画的には最もストレートな第二話。場面と台詞は陳腐なものばかりながら、メランコリックな劇伴と、階段坂中央の手摺越しの攻防戦に顕著な、そこそこ凝つた画作り。中身は薄いけれど闇雲に抒情的な第三話と、一人で三話各篇の毛色を綺麗に変へてみせた点は、ひとまづ買へる。尤も、共に陽性の裸映画であつた前二話に対し、第三話で藪蛇に舵を切つてしまつた分、実は一話から巧みに撒かれた伏線は評価に値しつつも、男優部が全員ニュースに登場する出し抜けなバッドエンドは、愕然と膝から崩れ落ちる酒井あずさの姿を追体験するといふよりは、それ以前の釈然としなさ、全体佐々木乃武良はこの時、観客のエモーションを何処に持つて行きたかつたのか?といふ漠然とした疑問を残す。土台が、これでは三面記事に載るのは妻たちではなく男ばかりではないかといふツッコミ処に関しては、エクセスにその手の野暮をいつてみても始まらない。


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