真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「四十八手 勃ちつぱなし」(1994『《淫》四十八手 巨乳責め』の2012年旧作改題版/企画・製作:吉満屋功/配給:新東宝映画/監督:川村真一/撮影:下元哲/照明:井和手健/編集:酒井正次/助監督:花田秀二/音楽:遠藤浩二/演出助手:西垣孝誠/撮影助手:森下彰三/照明助手:広瀬寛巳/タイトル:ハセガワタイトル/制作協力:ファントムライン/出演:青木こずえ・七瀬ゆりか《新人》・扇まや・杉原みさお・久須美欽一・吉岡圭一郎・西直人・久保新二)。兎にも角にも徒に多岐、出演者中七瀬ゆりかと照明の井和手健が、ポスターには七瀬ゆかりと伊和手健。ポスターでは企画は久保チンの個人事務所「オフィスKUBO」に。更に―jmdbその他各種資料にも―脚本は双美零と友松直之となつてゐつつ、少なくとも今回小生が観たプリントには、何と脚本家クレジットが見当たらなかつた、飛んでゐただけならば面目ない。
 大きな箱包みを前に、久須美欽一が垂涎する。箱の下部が開き、中から銀ラメのハイヒールを履いた女の足がニョキッと出て来る。久須美欽一の手には、「女体宅急便」なる新風俗のチラシが。箱から尻が全部外に出たタイミングで、底の浅さが今となつては微笑ましいブレイクビーツがズンチャカ鳴り始める。クレジットが流れ終る頃には、ラスタ・カラーのボディコンを着た女が久須美欽一を前に乱舞、綺麗なオッパイを披露したところでタイトル・イン。
 タイトル明けライトバンの中では、「女体宅急便」主幹の陽子(青木)が、香港行きの準備に勤しみつつ箱の角に取り付けたマイクで室内の模様もモニタリング。製薬会社営業部長の水田(久須美)と、リサ(杉原みさお/但し声は多分石川恵美のアテレコ)の一戦。水田が体位を変へる毎に、筆書きの適当なテロップが順に①茶臼②松葉くずし③帆かけ舟④陸蒸気(丸数字はこちらでつけた便宜)と入り、ここまでは江戸に限定せぬにせよ、四十八手を生真面目にトレースしようとする気配は窺はせた、ものの。昼間はOLの陽子が、用を足しがてら何やら名簿を整理してゐると、水田と専務のオオバ(久保)の猥談が聞こえて来る。水田がオオバに「女体宅急便」のチラシを押しつけるのを盗み見た、陽子は青木こずえ得意のメソッドでほくそ笑む。そんなこんなで女房は一浪中の息子・真一の山篭り夏期講習に同伴し不在のオオバ宅に、ユカ(七瀬)が届けられる。ユカV.S.オオバ戦で繰り出されるのは⑤まんぐり返し⑥チングリ返し⑦火口責め・・・・まんぐり返しで既に随分なのだが、江戸四十八手でいふ鏑流馬“やぶさめ”を、⑧オグリキャップスペシャルといふに至つて完全に企画の底は抜ける。続いて氏名不詳の扇まやも加はつての、「女体宅急便」全体練習、ここでは⑨つばめ返し⑩宝舟が穏当に。営業部長、専務と来て、いよいよ本丸の社長・室田龍一(吉岡)の下へまや女王様が出撃。ここでは⑪巨乳窒息責め⑫巨乳ビンタ⑬顔面騎乗⑭人間便器(注:いはゆる聖水のこと)、最早体位ですらない。室田を撃破し「女体宅急便」本部に帰還する陽子とまや女王様を、当時の一応イケメン(西)が尾行。不用意に本部の様子を覗き見た西直人は、忽ち女四人に捕獲される。
 何処まで本気なのか判らない、四十八手を紹介する営みが中盤で既にグダグダとなり終盤に至つては完全に放棄される。改めて調べてみると量産型娯楽映畑では意外と少ないともいへるのか、本篇は六本しか撮つてゐない川村真一の通算第四作。木端微塵に終る四十八手の未了に関しては忘れることとすると、序盤で撒いた魚雷のやうな伏線が後々見事に命中する、陽子の無造作に大胆な野望で最低限の劇映画としての体裁も整へられた、穏当な裸映画はのんびりとはしながらも、案外終始求心力を維持する。それだけに、素直にそのまゝ始終を流した御機嫌なサクセス・エンドで十分なのに、正しく取つて付けられた最終盤の一捻りは、無駄な蛇足に思へなくもない。作劇上の不用意な色気が最後の最後でリズムを乱した、残念の否めない一作ではある。

 以下は再見に際しての付記< 矢張り脚本家クレジットはない、それと石川恵美に聞こえる。
 備忘録< 西直人とは別ルートで室田製薬(仮名)のスキャンダルがすつぱ抜かれ、陽子が首尾よくジャックした―筈の―香港支社は閉鎖


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