真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「トリプル淫女 白衣のケダモノ達」(2002『白衣の痴態 -淫乱・巨乳・薄毛-』の2011年旧作改題版/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/第一話『淫乱』監督:坂本太/第二話『巨乳』監督:佐々木乃武良/第三話『薄毛』監督:羽生研司/脚本:佐々木乃武良/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:野田友行/編集:フィルムクラフト/録音:シネキャビン/助監督:竹洞哲也/編集:金子尚樹/監督助手:伊藤一平/撮影助手:宮永昭典/照明助手:藁部幸二・深沢修治/スチール:本田あきら/タイトル:道川昭/現像:東映化学/第一話出演:藤崎加奈子・澤山雄二・坂入正三/第二話出演:中渡実果・千葉誠樹/第三話出演:ゆき・竹本泰志)。出演者中、澤山雄二と竹本泰志がポスターには澤山雄次と竹本泰史、だから竹本泰志は改名したんだつてば。
 第一話「淫乱」、名物町医者の赤ひげならぬ赤顔先生こと安田清二(坂入)が、正体不明の二人組(スタッフの何れかか)に正しく今でいふドヤ顔で戦果を誇りパチンコ屋からホクホク出て来たところで、仁王立ちせんばかりの剣幕の看護婦・湯川もとい湯山れい子(藤崎)にトッ捕まる。さりげなくも、坂入正三らしさが実によく窺へる開巻ではある、安田は往診に向かふ最中であつた。その日の二人の往診先は、リストラ後女房子供にも逃げられ、これ見よがしに表札の名前が二つ消された江口俊(沢山)。単なる心因性の一時的な体調不良にも関らず、自身が末期癌であると勝手に思ひ込んだ江口を安田は半ば相手にしないが、悪癖と自覚する淫乱症をくすぐられたれい子は、往診後単身江口家に戻る。自ら粥を白衣に零しては半裸となり、挙句に何処から湧いて出たのかシースルーのエロ白衣を安田に持つて来させると、直線的な色香で江口を強制攻略。桃色の一夜明け江口が目出度く精気を取り戻した翌朝、二階ベランダに干されたれい子のノーマル白衣が、穏やかに日を浴びるラスト・ショットは案外完璧。
 第二話「巨乳」、とかく余裕に欠いた遣り手ビジネスマンの水野俊彦(千葉)が、巨乳雑誌に囲まれつつ寝坊して目覚める。その日は朝からプレゼンとやらで、バナナを咥へ慌ただしく飛び出した水野と、何事か確か最後まで説明は別に為されない大きな荷物も抱へた、安田医院の看護婦・近藤美砂(中渡実果/ex.望月ねね)が出会ひ頭に衝突してしまふ。高圧的に水野が怒鳴り散らかすと、美砂は俄に昏倒。通行人(計三人、矢張りスタッフの何れかか)の目を憚りひとまづ自宅に美砂を回収した水野は、処置に困り安田に連絡。すると血相を変へて飛んで来た安田いはく、美砂は百万人に一人のショック性子宮緊縮症候群の患者であるとのこと。何だそりやと呆れる間も与へず、子宮が緊縮して、何がどう巡ればさうなるのかまるで判らないが、心臓に血液が行かなくなる―それは根本的に致命的だ―といふので露にした生乳(なまちち)に、しかも御丁寧にも安田は左水野は右と、仲良く二人で心臓マッサージと称したペッティングを施す。ひとまづ美砂が危機を脱するや、安田はそゝくさ退場。たつた一度の遅刻で網走営業所への転属を電話で告げられた水野は、詳細がよく聞き取れぬ腹の発作に悶絶しながらも自暴自棄で美砂を抱く。と、こゝまで一話二話、底が抜けるにも甚だしいばかりではあれ、それはそれとしてそれなりに、他愛ないエロ小噺としてポップに出来上がつてゐなくもない。寧ろ妙に上品な劇伴が、この際不要とすら思へて来るくらゐである。頓珍漢なシークエンスには、素頓狂なサウンドを。それもひとつの、適材適所といへるのではなからうか。
 第三話「薄毛」、例によつて往診で安田は不在の安田医院に、田所明夫(竹本)が急な不調を訴へ駆け込む。診察室で友人と携帯で話してゐた―通話相手の存在自体も、最終的には疑はしいのだが―看護婦の相川響子(ゆき/ex.横浜ゆき)から、とりあへず待合室でフルーツを勧められた田所は、毛の生えた赤い皮を剥くと白いツルンとした果肉が卑猥に顔を覗かせる果物に、響子をオカズにしたこの際よくいへば瑞々しいイマジンを惹起される。頻繁かつ、徐々に移動が御座成りになつて来る―カメラ前にフィルターが堂々と差し込まれるカットが、数度繰り返される ―のが狙ひなのか単なる無造作なのかよく判らない、虚実の激しい往き来の末田所は一時的に意識を失ふ。ところが、戻つて来て田所を介抱した安田によると、不思議なことに現在医院に看護婦は不在であるといふ。
 三監督による、尺の配分も均等な三篇によるオムニバス作。クレジット的には第一話のみであるものの、要は坂入正三が三話全てに顔を出すほかは、各篇を貫くなり繋げる連関は特に発生しない。さういふ大雑把な構成も含め一言で片づけてみると、とりたてて顕著な演出のトーンなり画面のルックの差異がある訳でもなく、わざわざ仕事を分けた意味は一見清々しく判らない。但しその中でも最も完成度が高いのは、ラスト・カットの安定感あるいは強度が妙に素晴らしい坂本太の第一話で、逆に芳しくないのが、妄想と現実との単調な往復が顕示的なばかりで、次第にメリハリを欠きモタつく感も否めない羽生研司の第三話。無闇にバッドなオーラスも、この上ない下らなさは兎も角基本陽性の娯楽映画の後味を、藪から棒に乱す。佐々木乃武良の第二話は、良くも悪くも水のやうに流れ過ぎる。水のやうな一題の主人公が水野、今直ぐにでもデスればいゝのにな、俺。無理矢理纏めにかゝると、坂本太がそれなりの形で上げ、佐々木乃武良がそのまゝ回した球を、下手な色気を出した羽生研司が決め損なふ。さう捉へるならば、単なるルーチン企画にも見え、意外と各々の年期が如実に現れた一作といへるのかも知れない。

 因みにポスターでは各話に関して、順に“一晩中患者に跨り淫乱ケア”、“巨乳の発作は揉んで解決!!”、“いたぶり好き、薄毛の女王様”と、何れも簡潔にして的確極まりない名注釈がつけられる。何気ないが、これはエクセスのファイン・プレー。ただ、それにしても新題が“白衣のケダモノ達”とはこれまた随分だ。


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