真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女編集長 丸出し恥辱責め」(1995/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:小林悟/原案:荻久保則男/撮影:柳田友貴/照明:真崎良人/編集:フィルム・クラフト/助監督:国沢実/スチール:佐藤初太郎/録音:シネキャビン/フィルム:AGFA/現像:東映化学/協力:新宿T・Sミュージック/出演:不二子・風間晶・白都翔一・坂入正三・荒木太郎・浜崎優・港雄一・田村ちなみ)。
 遠くの車がなかなか来ないロング、運転するのは主演女優。急ブレーキを踏むと個人的には「《淫》四十八手 巨乳責め」(1994/監督:川村真一/脚本:双美零と友松直之の筈/主演:青木こずえ)をいの一番に想起するブレイクビーツ起動、車外から運転席を撮つたスチールにタイトル・イン。寝てたところを呼び出した社員カメラマンの橘(白都)に、㈱快楽出版の女編集長・雅美(不二子)は轢き逃げて来た交通事故の事後対応を相談する。話は適当に纏めて―全然纏まつてないけど―絡み初戦。家主とのトラブルが原因だなどと、シネ・リーブル博多ばりにクソな理由で十五日に惜しまれつつ閉館した、新宿T・Sミュージックに公開当時所属の不二子。首から上は完全に時代の束縛に囚はれながらも、本当に綺麗な体をしてゐる。尤もお芝居の方は大御大も潔く匙を投げるレベルだつたのか、この時期由実由美を併用する吉行由実のアテレコ。翌日の快楽出版編集部、新聞に自身が仕出かした事件の記事が見当たらず、隣席の橘にVサインを送つた雅美は、何者かに社外に呼び出される。偶々その場に居合はせた、何時もより気持ち長いモジャモジャ頭が案外正方向にカッコいい無頼派カメラマン・横田(坂入)が、実は雅美の事故現場を激写。そこで横田が口を噤む引き換へに提示した条件といふのが、横田持ち込み企画のヘアヌード写真集出版とかいふ超展開。
 配役残り、トメの田村ちなみは、一応編集者ではあるもののお茶汲み扱ひのカオリ。荒木太郎と浜崎優は幾分台詞も与へられる編集者要員、部内にはもう三人見切れるも、その中に背格好だけでその人と知れる国沢実は含まれず。港雄一は快楽出版会長、雅美が編集長の座にゐるのは、要は愛人を編集長にしたといふ次第。風間晶は、横田の情婦・山本エリコ、こちらもこちらでこの人がヘアヌードのモデルにといふ寸法。万事が棹と蛤とに支配された、何て清々しい世界なんだ。
 元々さういふ志向があつたのかどうかは知らないが、昨今スピリチュアル方面に活路を見出した荻久保則男(a.k.a.まんたのりお)の原案を擁した、小林悟1995年全十二作中第六作、ピンク限定だと第四作。何某か秘めたものを感じさせるカオリは、横田企画から蚊帳の外に追ひやられ不貞る橘に急接近。橘の行きつけこと御馴染「RiZ」にて二三杯盃を交すや否や、出し抜けに「私のヘアヌード撮つて下さい」と切り出す超展開に次ぐ超展開。一方、遅々として進まぬ撮影に煮詰まる横田は、エリコの排尿姿に俄かに点火、お前は下元哲か。さうして出来上がつた写真集は、過激過ぎて問屋の取次拒否を喰らひ大爆死。生じた損害を補ふべく会長自ら下命した次なる企画が、何と会長と雅美のセックス写真集!超展開発超展開経由の魔展開にクラクラ来るのも必至な、紛ふことなき大御大仕事。一体全体、荻久保則男は如何なる原案を出したのか、あるいは、荻久保則男が出した原案は実際には如何なるものであつたのか。尤も、いはゆるお人形のやうに整つた顔立ちで正体不明の決定力を誇る田村ちなみまで女優部の粒はそれなりに揃つてゐるゆゑ、裸映画的にはひとまづ安定する。ところがとなると、締めの濡れ場は、馬鹿騒ぎから離れたカオリと橘がミサトのプール脇にて青姦。これといつた意味もなく中途半端に引くラスト・ショットは、女の乳尻が見えず裸映画を一円安くする。


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