「性欲診察 白衣のままで」(2007/制作:セメントマッチ/配給:新東宝映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/企画:福俵満/撮影:清水正二/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:中川大資/撮影助手:海津真也・関根悠太/監督助手:新居あゆみ/現場協力:田中康文/出演:結城リナ・星沢マリ・銀治・津田篤・野村貴浩・牧村耕次・なかみつせいじ)。出演者中、ポスターでは結城リナに“(新人)”特記。
老医師・大坪(牧村)の内科医院に通ふ、高校教師の中津(なかみつ)、フリーターの田辺(津田)、弁護士の南野(銀治)。中津は下痢を、田辺は倦怠感と咳、南野は頭痛を訴へるが内科の所見としては三人に何処にも異常が見られず、大坪は首を捻るばかりであつた。他方大坪の医院に勤務する、白いナース服の落合真奈美(結城)と、青いナース服の木村可奈子(星沢)。何れ菖蒲か杜若、二人の美人看護婦に夢中な三人の患者は、現実との境目もおぼろげな淫らな妄想の渦に溺れて行く。
結城リナと星沢マリとのツートップ、余計な三番手女優は潔く排したタイトな布陣を敷いた時点で、今作の勝利は確定。待合室にて田辺、中津、南野が同時に見る白日夢の中で、真奈美と可奈子は大坪の性奴隷と化す。可奈子役の星沢マリが下から持ち上げるやうに揉み込まれた決して大きくはない乳房に、長い舌を伸ばして自ら乳首を舐めるショットに、私は完敗を認めた。以降の展開に中身があらうとなからうと、妄想の無限連鎖が何処かしらに着地しようとしまいと、最早どうでもいい。衣装換へも含め見事に多彩な濡れ場濡れ場の乱れ撃ちは、実に、実に、実に。実に見応へがある。間違つても映画として傑作、といふ訳ではないが、桃色リーサル・ウェポン。炸裂し放しの美しく淫らな破壊力に素直に身を委ねてゐるのは、全く快い。寧ろ、一応の帰結を見せる芸の足りないラストが、余計にすら感じられる程である。池島ゆたか御当人の弁によれば今作はブニュエルを志向してもゐるらしいが、ブニュエル?伝説のピンクス・故極狂遊民カチカチ山さん主催の16mm上映会で何本か観た覚えがあるやうな気もするが、オラそんな高尚な名前知らね。
中津は痴漢の汚名による、生徒からの授業ボイコットに悩んでゐた。といふことで同じく池島ゆたか監督による、「ザ・痴漢教師」シリーズとの関連も連想されたが、苗字が異なる故詳細は不明。無人の教室に独り佇む中津の前には、勿論女子高生姿の真奈美が登場する。論理的では必ずしもなくとも、映画的な要請をキッチリ果たす蓋然性が鮮やかである。中津を罵る生徒が三人登場。クレジットなしカメオ出演の日高ゆりあと春咲いつかに、男子生徒役は中川大資。春咲いつかは凄まじい映りやうで、軽くショックを受けた。
同じくクレジットされぬままに、神戸顕一が前作「婚前乱交 花嫁は牝になる」同様、『AHERA』誌の表紙として登場。左から中津、田辺、南野の順に座つた待合室。三冊用意された『AHERA』誌を、三人が三人共顔を隠すかのやうに高く持ち上げ読んでゐる。野村貴浩は、南野の事務所の若い衆・諸星。彼女との海外旅行の為の有休を申し出、背が低く彼女が居ないことに強烈な劣等感を滾らせる南野を、狂ほしくやきもきさせる。南野の妄想の中での、諸星と彼女との絡み。ツートップ体制につき、首から上は巧みに回避するフレーミングで結城リナが彼女役を代打、決して柳田友貴の大先生撮影ではない。
一応伏線も貼つてあるとはいへ南野の<サイコ>ネタには、流石に余りの無茶振りに震へさせられた。別に映画監督が映画が好きであることを、一々映画の中で表明する必要はないと思ふ。
以下は再見時の付記< 中津と真奈美との教室での濡れ場は都合二回、一度目は、真奈美はナース服で出撃してゐる。
再々見時の付記< 南野は診察中で、中津と田辺が二人並んで座る待合室。背中だけ見切れる女の外来患者は新居あゆみとして、受付の奥に見える白衣を着た男は誰だ?南野の相手をしてゐる、大坪では画面(ゑづら)的にもない。
| Trackback ( 0 )
|