真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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親友の妻 密会の黒下着
池島ゆたか
/
2012年10月18日
「
親友の妻 密会の黒下着
」(2008/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/撮影:清水正二/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:中川大資/監督助手:竹田賢弘/撮影助手:海津真也・丸山秀人/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/スチール:津田一郎/制作:永井卓爾/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/協力:田中スタジオ・SWANP《西荻窪・バー》/出演:友田真希・倖田李梨・華沢レモン・なかみつせいじ・竹本泰志・牧村耕次・山ノ手ぐり子・アキラ《子役》/Special Thanks:野村貴浩・神戸顕一・三浦純也・和久井美里)。出演者中、山ノ手ぐり子がポスターには山の手ぐり子。
野菜を水洗ひする主演女優、来訪者を告げる玄関チャイムの音と、その旨を確認する夫との遣り取り。「ハッピー・バースデー」、客の声に合はせてタイトル・イン。
課長職のサラリーマンにしては妙にダダッ広い戸建に暮らす、高宮聡(なかみつ)の誕生日祝ひに、高宮とはともに駅伝に汗を流した大学時代の同級生で、建築事務所に勤務する建築士の森本和彦(竹本)と、妻で人気インテリアデザイナーの美樹(倖田)が訪れる。高宮の妻・マドカ(友田)と四人での恒例のホーム・パーティー、としたところに、高宮の十才の息子・つよし(アキラ/ex.つーくん)がランドセルを背負つて帰宅。おいおいおい、一体この人等は何時から飲み食ひしてゐるのか、大体高宮は―森本もだが―仕事はどうした。さて措き幾分時間は流れ、つよしと付き合ふ森本がプレステに興じる傍ら、美樹は聞こえよがしに不倫相手からと思しき携帯に出る。森本夫妻の帰宅後、美樹の放埓に苦言を呈する高宮の母・弥生(山ノ手ぐり子=五代暁子/アキラ実母)の顔見せ噛ませ、漸く絡み初戦、コッテリとした高宮とマドカの夫婦生活。心許ない素のお芝居から濡れ場に突入した途端、俄然輝き始める友田真希の本領発揮が力強い。馴染みの店「SWANP」で高宮と軽く飲んだ森本は、その足で後々の会話から推し量るに建築事務所の同僚、であるのかも知れない不倫相手・エリ(華沢)とホテルにて一戦。要はこの夫婦、お互ひ様といつた寸法である。そんなある日、待ち合はせの風情で歩道橋に佇む美樹は、高宮の姿を見かけるや猛ダッシュで先回り、とりあへず食事に誘ふ。続いて、実はその模様を―高宮は兎も角美樹の顔は見知る―エリに目撃されてゐるとも知らず、美樹は高宮を強引にホテルに連れ込む。倖田李梨が得意とするセクシー・ダンスで火蓋を切る、高宮にとつては初めての浮気。性癖らしく、首を絞めての行為を求められた高宮は、勢ひ余つて美樹を殺してしまふ。
牧村耕次は、美樹の幻影に怯えるのも通り越し消耗する高宮を気遣ふ、牧村(仮名)部長。蛇足気味にそのシーンを補完する野村貴浩は、最近ミス続きの高宮を離れたところで揶揄する陰口男、連れは中川大資。全く見知らぬ名前の、残るSpecial Thanks隊は多分「SWANP」のマスターと、後姿しか見せない女の一人客か。
二十年来の親友同士、片や家庭的な妻を持つ堅物男、片や夫婦それぞれ不倫に精を出すプレイボーイ。プレイボーイは堅物男の家庭的な妻に憧れを隠さない中、一夜の最初で結果的に最後の火遊びによろめいた堅物男は、あらうことか物の弾みながら親友の妻を絞殺。死人への恐怖と官憲には脅威、家人と親友とには行為自体に関する罪悪感と、告白を巡る逡巡。生真面目が小心と表裏一体の堅物男は、忽ち追ひ詰められて行く。美樹が死亡した時点で、一体この物語はこの先どのやうな展開を見せるのか、と一旦は胸を躍らされた池島ゆたか2008年第四作。尤も以降、これは二人揃つてのことなので、恐らくは明確な池島ゆたかの演出企図があつての演技プランではなからうかとも思ふが、なかみつせいじと竹本泰志の大仰と、一方こちらは単にプリミティブな友田真希の大根がある意味苛烈なカウンターをクロスさせる、なかなかに腰も砕ける駄劇もとい打撃戦に終始する。眠れぬ夜の睡眠薬と、自殺目的に購入したトリカブト。明々白々な小道具を二つ事前に落とした上で、自首前夜に睡眠薬を持つて来るやう願ふ、この上なく立てたフラグに重ねて、懇切丁寧に起爆装置を露出してみせる、幾ら量産型娯楽映画とはいへ地下にもめり込まんばかりの敷居の低さには、別の意味で度肝を抜かれた。ある意味凄い映画だと諦めかけたのも束の間、文字通りのフィニッシュ・ブローに鮮烈を叩き込む、本領を発揮した毒婦ぶりと相手役の受けが見事な、満を持して“親友の妻”が“密会の黒下着”を披露するラストには、まんまと油断の足を掬はれたと感心した。強度不足を最後の最後で取り戻す、終り良ければ全て良し、最終的な据わりの安定感が鮮やかな印象を残す一作である。
それはそれでいいとして、残る問題は、変な物言ひだが映画本体を観るのにかまけ、神戸顕一が何処に如何なる形での見切れを果たしてゐたものやら完全に見落としてしまつた。池島ゆたか通算百三作目となる今作が、二人が男同士で約束した―池島ゆたか監督作―百本連続出演のちやうど百本目に当たるゆゑ、当然必ず絶対に登場してゐる筈なのだが。出現ポイント―ポケモンか―候補としては頻出小道具『
AHERA
』誌が、高宮家か「SWANP」店内にでも紛れ込んでゐたか、あるいは気づかなかつたが格闘色に染まつた、エリの携帯画面に表示される選手の画像?
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