真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「性獣三姉妹 百花淫乱」(1995『三匹の女猫』の2012年旧作改題版/企画・製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督・脚本:上田良津/プロデューサー:伍代俊介/撮影:原田清一/照明:斉藤久晃/音楽:伊藤善行/編集:金子尚樹/助監督:田中正茂/ヘアメイク:大塚春江/製作担当:真弓学/監督助手:池上直隆・井戸田秀行/撮影助手:橋本彩子/照明助手:山崎満/出演:白石奈津子・細川しのぶ・吉川由貴・山本清彦・真央元・田原政人・太田始・久須美欽一)。
 三本柱が絡み合ふショットを、本当に瞬間的に噛ませてタイトル・イン。折角の揃ひ踏みが明らかに短過ぎる不自然さは、プリントが飛んでゐるのでなければ、改題作業に伴なふ不可避の所以か。仕事で紐育に滞在する両親は不在の篠原家、長女でOLの恭子(白石)、次女で美大生の真由美(細川)、三女は女子高生の美香(吉川)。三姉妹の慌ただしい朝の風景をそれなりに丁寧に通過すると、さあて挨拶はここまでだ。モノガタリ、何だそれ、頭に大きな鋏がついてる奴か。それはクワガタだ、“ガタ”しか合つてねえよ。テーマ?そんなもんパンに塗つて頓馬に喰はせろ、それは“ラーマ”とでもいひたいのか?以降は基本的に濡れ場一辺倒、濡れ場・ゴーズ・オン!美香と不良気味の先輩兼彼氏・木村弘(山本)との、人気の無い特別教育室での校内写生、勢ひに任せ筆を滑らせてみたが激しく懐かしいな。弘が年上の女から教はつたとの、女は目隠しすると十倍感じるだとかいふ、赤く塗装して角を生やすと三倍速くなる類のメソッドも持ち出しつつ、事後特別教育室の入り口には、美香の担任で理科系教師と思しき浜田光次(太田)が身を潜める。どうしても優評価が欲しい真由美は教授の山内邦彦(久須美)に色仕掛けを仕掛けるも、珍しく久須美欽一もとい山内がそれには応じず、ジャンプ・カットでバンドマンの彼氏・西田達也(真央)と練習スタジオにて情事。門限の九時―然し早えな―になつても真由美が帰宅しない篠原家と、翌日か同僚兼彼氏の野本秀夫(田原)からその夜のクラシック・コンサートの誘ひを受けるも、予定のある恭子が断る一幕を挿んで、弘と、カードといふ以外に理由は特に語られないが、借金がありアルバイトで家庭教師をする恭子のプライベート・レッスン。即ち、弘にろくでもない入れ知恵を施したのは、他でもない恭子といふ寸法である。今度は恭子の帰りが遅い夜に、美香の素行に関して浜田から呼び出しが入る。次の日、そんなこんなでかなり強引に言ひ寄る、淫具も変態的に駆使する太田V.S.恭子戦。その頃当の美香はといふと、万引き現場を達也に目撃。そのまま何となく事実上ナンパが成立するやうな形で、矢張りスタジオでのあくまで和姦。同時進行で一方真由美は、山内攻略に成功。そこまではいいとして、実は達也の弟分であつた弘がスタジオに現れ、美香の浮気は露呈。挙句に、妹に男を寝取られたことが真由美にも発覚してしまふ。一応、懲りた素振りも見せる真由美と美香が二人で帰宅すると、家の前には恭子を待ち侘びる野本が。妹二人は姉と野本の婚前交渉?をお膳立てした上で、その様子を見ながら各自自慰。アクティブといふか、無造作といふべきか。兎も角クライマックスに際し三姉妹の裸を並べるのだといふ、頑強な意思だけならば感じられる。ガイゼンセー、何だそれ、八卦ロボの一体か?だから与太を吹くにもネタが苔生してるんだよ。閑話休題、要はヤリ疲れたのか、キングサイズのベッドに仲良く川の字で眠る三姉妹の寝姿を押さへて“完”。
 上田良津第二作、因みに共に神戸顕一率ゐる神戸軍団の成員であつた山本清彦と真央元は、上田良津的には前年ではなく何と前月のデビュー作「昼下りの暴行魔 団地妻を狙へ!」(主演:江崎由美)に於いて、真央元のアテレコを山本清彦が務めた仲にもある。詰まるところは感動的に狭い世間の中で、性獣三姉妹が適当に男もしくは棹をシェアする。万事が女の裸を銀幕に載せることのみに奉仕する、裸映画の中の裸映画。量産性の枠内に作家性は埋没し、上田良津であらうと新田栄であらうと坂本太であらうと、こんなもの誰が撮つても同じだと乱暴に片付ければそれまでに過ぎないやうな気もしないではないが、無駄を一切排した潔さはそれはそれとしてひとつの完成形。正直三女の面相は些か残念でもあるものの、細かいことは気にするな。乳を見ろ尻を見ろ、嬌声に身を浸せ。上映中はそれなりに楽しませ、後にはケロッと一欠片も何も残らない。嗚呼腹一杯に裸を堪能した、話の中身はサッパリ覚えてないけど。初めから存在しないものを、覚えてゐるもゐないも土台はあつたものではない。とりあへずの満足感だけ残し、さあて家に帰つて寝るか。意外とそんな辺りが、娯楽映画の到達点といへるのではあるまいか。これは断じて一時的な気の迷ひなどではない、常々結構本気でさう思つてゐる。

 それにしても、繚乱ならぬ“百花淫乱”とは洒落てゐる、これはエクセスのスマッシュ・ヒットだ。


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