真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「熟女の乱れ髪」(1998『若妻覗き 穴場の匂ひ』の2001年旧作改題版/製作:小川企画プロダクション/提供:オーピー映画/監督:小川欽也/脚本:八神徳馬/撮影:図書紀芳/照明:岩崎豊/助監督:井戸田秀行/音楽:OK企画/編集:㈲フィルム・クラフト/監督助手:広瀬寛巳/撮影助手:寺田緑郎・阿部一孝/照明助手:酒入康之/効果:東京スクリーンサービス/出演:川島ゆき・高橋美穂・小島みのり・平川ナオヒ・久須美欽一・杉本まこと・河合純・北千住ひろし)。“配給:大蔵映画”ではなくオーピー映画提供としたのは、白黒のOP開巻に従つた。それと実際のクレジットでは、脚本が編集の次といふ謎の順序に入る。
 馬鹿デカい一眼レフのシャッターを切る男と、何かの雑誌から拝借した青姦の赤外線盗撮写真を適当に抜いてタイトル・イン。赤外線写真で十万円のギャラを得てほくほく顔の大学生・佐藤隆(平川)は、望遠レンズを用ゐた日課の、小泉真由美(川島)の風呂上りを覗いて自家発電のスタンバイ万端。てつきり隣家かと思ひきや、後のカットでは近所どころか結構距離を隔てた二地点の位置関係はカメラの角度から大いなる疑問を残すのだが、然様な瑣末に囚はれるべきではない。ところが―会社が倒産した―旦那(杉本)が帰つて来てしまつたため、隆はお預けを喰らふ格好に。小泉家での夫婦生活に続いて、コンビニ弁当を突く隆はピンクチラシが目に入つた、出張ヘルス「いちごくらぶ」からリサ嬢(小島みのり???)を、両親は旅行中につき不在の自宅に呼んでみる。ここで、高橋美穂と小島みのりの識別に関しては正直手も足も出ない。リサ役をマキシマムの疑問符つきで小島みのりとしたのは、濡れ場を二戦キッチリこなす玲子役―後述する―が、ビリング上位に来るのではなからうかといふだけの覚束ぬことこの上ない話である。そんなモラトリアムなある日、杉本まことが営業した先物取引で退職金を溶かした顧客(久須美)が、旦那は雲隠れした―真由美は拒否―小泉家を急襲。大した金目のものもなかつたゆゑ、真由美を縛り上げた上で犯す。その場もたまたま例によつて出歯亀してゐた隆は、サドマゾの不倫と画期的に誤解、喜び勇んでシャッターを切る。
 配役残り河合純は隆の先輩で、盗撮写真のクライアントでもある川井。そんなこんなな超不完全消去法で高橋美穂が、川井の恋人・秋川玲子、かなあ。正直ラスト前の木に竹を接ぐタイミングで飛び込んで来る北千住ひろしは、小川(電話越しの声も聞かせない)に教へて貰つた穴場で隆が盗撮するカーセックス男。その際のお相手は、こんなところにまで出張するのかと隆を変に感心させるリサ。川井宅から半歩と外に出ない川井と玲子といひ、清々しく省力した映画の作りが別の意味で堪らない。それと、「ザ・痴漢教師2 脱がされた制服」(監督:池島ゆたか/主演:杉本まこと・立川みく)よりも先なので、もしかすると今作が北千住ひろしのピンク映画初陣となるのかも知れない。
 先週の山﨑邦紀に続き、今上御大・小川欽也1998年第二作の、同じく2001年新版。1998年次づく気配を窺ふに、ここは是が非とも「未来性紀2050 吸ひ尽す女」(片山圭太と共脚/主演:浅倉麗)と翌年の「制服淫ら天使 吸ひ尽す」(脚本:岡輝男/主演:麻丘珠里)、関根和美の「ターミネーチャン」二部作の復活公開を大切望するところである。当時m@stervision大哥には痛罵されたターミネーチャンをこの期に及んで本気で観たいと思つてゐる人間が、世の中に何人ゐるのかは知らん。閑話休題、久須美欽一が真由美を手篭めにする現場を、隆が大胆ないしは大概に曲解して激写する。「ディスタービア」を先取りしかけた―それ以前にも色々あるだろ―シークエンスには、起承転結に於ける鮮やかな転部の完成を一旦早とちりした。とはいへ以降展開が深まるなり広がるでも別になく、川井パイセンと玲子の新味を全く欠いた第二戦で漫然と尺を空費した末に、人妻の盗撮写真の買取を拒否された隆は方針転換。不貞の証拠を出汁にした脅迫を試みるも、思ひのほか和姦じみた、といふかそのものの勢ひで真由美に喰はれるに至り抜けた映画の底が、修復されることは終ぞない。「女つて怖えなあ」だなどとどうでもいい結論に隆が達するラストは、煌くルーチン感が眩くて眩くて、目も当てられないといふか目を覆へばよいのか。極寒の世界に荒涼とした光が乱反射する、白夜の如き一作である。平川ナオヒ(現:直大)が色々お洒落な冬のアウター着て出て来るんだけど、造形自体からもう少しカッコよく撮つてあげないと。


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