真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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女と女のラブゲーム 男達を犯せ!
松岡邦彦
/
2014年11月04日
「
女と女のラブゲーム 男達を犯せ!
」(2014/製作:松岡プロダクション/提供:Xces Film/監督:松岡邦彦/脚本:今西守/企画:亀井戸粋人《エクセスフィルム》/音楽:小鷹裕/撮影・照明:村石直人/録音:山口勉/助監督:増田秀郎/編集:小泉剛/撮影・照明助手:加藤育・高橋史弥・三輪亮達/応援:関谷和樹/スチール:本田あきら/MA:K・T・V・P/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:水希杏・彩城ゆりな・尾嶋みゆき・ヘラクレス東郷・サクマショウヘイ・小林節彦・柳東史)。出演者中、サクマショウヘイがポスターにはサクマ渉平。
OLの村上みどり(水希)が、LINEで捕まへた医大三浪生・三上正人(サクマ)の筆を卸す。騎乗位の三こすり半、オカーサーンと叫びあへなく果てた正人に、みどりが呆れ気味に微笑んでタイトル・イン。何業界か全然判らない点はさて措き、業界誌『故郷資料』を出版する零細出版社「流通情報新聞社」に勤務するみどりがティルファイブは上の空な日々を送るのに対し、学生時代から―みどりの―遺産の実家に同居、目下も同僚の後輩・山下葉子(彩城)はポップに遣り手然と仕事をこなす。ある夜村上家に、葉子喧嘩中の公務員の彼氏・高岡真一(ヘラクレス)が呼ばれもしないのに来宅。特定の交際関係を持たずネットで男を漁るみどりは、後日家にまで押しかけた正人に続き―不在の―葉子を訪ねて来た、高岡を何となく寝取つてみる。
配役残り小林節彦は、部下を呼ぶ時に「村上君、村上みどり君」と一度目は苗字、二度目はフルネームで繰り返す面倒臭い癖のある『故郷資料』編集長・板倉慎二。もう一人、『故郷資料』編集部内に髪を短く刈り込んだ中年男が、背中だけ見切れる。柳東史は正人の兄の知人で、女子高生との淫行が発覚し医師免許を剥奪、目下はモデル事務所を営む伊集院良彦。ザッと見杉本彩似の尾嶋みゆきが、伊集院の事務所所属のモデル・長澤満里奈。ところで、高岡に話を戻すと体躯から貧相な雰囲気イケメンでしかないヘラクレス東郷の、名前負け感が凄まじい。
清水大敬が初めて大蔵を離れた―但し来週末OP新作が公開される―
電撃第一弾
、続けて清水大敬による
アタッカーズ
と連動の
第二弾
。工藤雅典が力なく仕出かす
第三弾
、一旦大蔵と喧嘩別れした浜野佐知が古巣にて新生旦々舎を始動させた
第四弾
―復帰第二作も撮了―に続くデジタル・エクセス第五弾は、「
つはものどもの夢のあと 剥き出しセックス、そして…性愛
」(2012/主演:後藤リサ)以来となる―かつての―“エクセスの黒い彗星”松岡邦彦。因みにエクセスライクではない主演の水希杏も地味に、吉行由実2012年第三作「
ねつとり秘書 吸はれる快感
」以来二年ぶり。封切り五十日といふ鬼神の速さで着弾したガッチガチの新作を、喜び勇んで観に行つたものである。尤も、これが、最も直截な印象としてはこれがあの松岡邦彦かと面喰はされる一作。仕事に身が入らずぼんやりするみどりを、ぼんやり押さへ続ける―だけの―カットには、松岡邦彦らしいゑぐみも凄味も黒さも、凡そ感じさせない。その癖漫然と尺だけは喰ひ、正しく毒にも薬にもならない。登場人物の描写は概ね何れも平板で踏み込まうとする気配すら窺へず、昨今の怠けたピンクに特徴的な悪弊ともいへようが、カメラは殆ど屋内に留まり、ロケーションにせよ構図にせよ色彩にせよ、ショットらしいショットにも欠く。自己啓発セミナーじみた『故郷資料』編集部内の美術―と、いふほどのものでもない―にはドス黒い底意地の悪さも垣間見させたものの、結局単なる安普請の背景以上には一欠片たりとて機能するでもなく、フラワーな造形で中盤に飛び込んで来ては満を持して絶妙にダークな胡散臭さを持ち込み、かける柳東史も、定まらない以前に軸足が見当たらない展開の中では梯子を外された孤軍奮闘を強ひられる。挙句に葉子は攻め落とした伊集院が肝心のみどりとは絡むどころか掠りもしないとあつては、最終的には薮で拾つて来た棒を竹に接ぎ損なふ始末。そもそも、三本柱はそれなりに強力であるにも関らず、小林節彦と柳東史を擁してゐながら、濡れ場を場数不足の逆マグロ二人に委ねた戦略は根本的に問題なのではないかと難じざるを得ない。ポスター・ワークを華麗に偽り、決戦兵器たる百合も不発。唯一の見所は、柳東史ごと三番手を放り込む大胆な奇襲くらゐか。下手な風呂敷を拡げてみせてゐない分「つはものどもの夢のあと」よりは納まりよく見えなくもないとはいへ、松岡邦彦が小さく纏まつたザマでは全く物足りない。
開巻とオーラスの都合二度火を噴く、緩やかなギターリフがやがてテンポを上げるや、ドラムが追走しエクストリームに走り始める小鷹裕によるメイン・テーマは画期的にカッコいい反面、映画音楽としては不適格。本篇が完全に喰はれてしまつてゐる。喰はれた映画の方を、問ふべきなのかも知れないが。
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