真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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不倫密会 ふしだら狂ひ尻
や行
/
2012年08月02日
「
不倫密会 ふしだら狂ひ尻
」(2011/製作:オフィス吉行/提供:オーピー映画/脚本・監督:吉行由実/撮影:下元哲/編集:鵜飼邦彦/助監督:江尻大/撮影助手:斎藤和弘・榎本靖/監督助手:松林淳/選曲:山田案山子/協力:田中康文/出演:柳田やよい・里見瑤子・吉行由実・津田篤・竹本泰志・岡田智宏)。
人待ち顔の大西千秋(柳田)、手洗ひから戻つた大学時代からの親友・相川那美(アイカワの漢字は推定/里見瑤子)は肩を落とす、今月も生理が来てしまつたからだ。二組の夫婦のイントロダクション、那美は千秋とも共通のサークルの先輩・春樹(岡田)と那美が二十五の時に結婚。三十までに二人は子供を産んでゐる予定といふよりも希望の筈が、現在三十三にして未だ子宝には恵まれずにゐた。一方千秋は、秘書を務めた会社社長の大西(竹本)といはゆる不倫略奪婚して二年、短い過去パートに一旦顔見せする吉行由実は、大西の前妻・澄子。竹本泰志は蔓のバカ太い親爺メガネの一点突破で、役柄上の老け作りを果敢に乗り切る。濃厚な大西夫妻と、対照的に相川夫妻は擦れ違ひ気味、二つの夫婦生活が重ねられる。濡れ場を通して登場人物の立ち位置を説明する話法は、ピンク映画的に麗しく十全。那美が固執する子作りに、実は疲れ果てるのも通り越し忌みすらする春樹は、十年前を想起する。当時千秋が借りてゐたアパートで、二人は一度だけ関係を持つてゐた。ここで疑問手、現状短めに刈り込むのとの比較で、件が回想中であることを示す春樹の少し長めの髪形は、娯楽映画の段取りとしてはカット頭にもつと明確に見せておくべきなのではなからうか、画が些か暗い。狭く雑草もボーボーの公園にて、千秋は大西とベンチに並んで読書。どうでもよかないが、その貧しいロケーションももう少しどうにかならなかつたものか。俄に催した大西は、軽く千秋の体に触れた上で帰宅し本格的な一戦。後述する開眼した柳田やよいの絡みを観客目線でもタップリと愉しませつつ、事後年甲斐もない無理が祟つた大西は階段で卒倒する。三ヶ月後、相川夫妻が朝の会話を通して現況を投げる。大西は一命は取り留めたものの麻痺の後遺症を残し、会社も倒産。他方、春樹の同級生の村上には女の子が生まれてゐた。強引に迫られた春樹が途中で匙を投げる、那美との不毛な夜の営みを噛ませて、春樹と千秋、それに江尻大ともう一人は定石からいふと松林淳なのか?兎も角四人で―那美は、当日体調を崩しキャンセル―村上家にお祝ひに行く。正面からは抜かれない、村上夫婦役も不明。千秋と春樹二人きりの帰りしな、春樹の運転する車で向かつてみたかつての千秋のアパートは現存してゐた。十年前、既に春樹と交際してゐた那美を慮り、身を引いたことに関する後悔をこの期に口にする千秋に対し、那美との結婚の失敗を春樹も嘆く。千秋のシャワー自慰を挿んで、千秋と春樹は、車中再び体を重ねてゐた。津田篤は、再登場しては後半の効果的な火種となる澄子の、若い情夫・近藤。
互ひの苦境にも背中を押されてか、焼けぼつくひに火を点けたヒロインと憧れの先輩、兼親友の旦那の周囲で渦巻く愛憎。薫桜子をビリングに擁してゐた僅かな時期の、王道娯楽映画路線からは一転、昨今の官能メロかエロドラマ嗜好に対しては、個人的には物寂しさを覚えなくもない反面、前作「
新婚の寝室 身悶え飼育
」に引き続き主演に柳田やよいを据ゑた吉行由実2011年第二作は、概ね充実して観させる、オーラスさへさて措けば。吉行由実がこの期に撮り方を覚えるも覚えぬもなからうから、本篇二戦目の柳田やよいが35mmカメラによる撮られ方を覚えたのか、千秋の放つ肉感と官能性とが兎にも角にも堪らん。妙な癖のついた表情の作り方に関しては好悪も分かれようが、ひとまづ裸映画としては安定する。重ねて終盤畳み込まれる、吉行由実が持ち前の魔女性を豪快にフルスイングする、澄子が仕掛ける凶悪極まりない不貞実況と、溜めに溜めた意外な真実を里見瑤子が満を持して撃ち抜く那美の告白、あるいは告発。経験の浅い主演女優を二大ベテランのどす黒い悪意が翻弄する、松岡邦彦ばりの暗黒展開は圧巻。全篇を貫き、各々の心情の揺れ動きにスタイリッシュに連動する、スパニッシュな劇伴も光る。これは今回の吉行由実は近作とは訳が違ふぞと、暗がりの中俄に襟を正せられかけた。ところが、大西は兎も角那美も自動的に捌けるに至つて、如何にも―女の側から―都合のいい話だと呆れかけた直後、別の意味で衝撃の謎ラストには、頭を抱へるのも通り越し途方に暮れさせられた。如何に受け取るべきものやら本当に手も足も出せず理解出来なかつたので、是にせよ非にせよ最終的な評価も下しやうがない。尤も、小生の如き度を越した間抜けにも、苦もなく理解させるやうでないと量産型娯楽映画といふものは困る。牽強付会気味にさういふ形で初期ハードルを設定することが許されるならば、明らかに苦しい一作であるとは、唯一確実にいへようか。
再見に際しての備忘録< 那美がスーサイド、妊娠した千秋は春樹と晴れて新生活。かと思ひきや、何時の間にか妊娠してゐる那美も現れ、なほかつまるで妊娠が事実ではないかのやうな謎台詞。勝手に幸せを噛み締める那美の傍ら、千秋の複雑な表情がラスト・ショット
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