真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「淫らなお姉さん たくさんかけて!」(1993『女子大生 後ろから突き上げて』の2012年旧作改題版/企画:セメントマッチ/製作:オフィスバロウズ/提供:Xces Film/監督:池島ゆたか/脚本:五代響子/撮影:下元哲/照明:白石宏明/編集:酒井正次/スチール:佐藤初太郎/助監督:高田宝重/監督助手:広瀬寛巳/撮影助手:郷田有/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:岡崎結由・草原すみれ・杉原みさお・山ノ手ぐり子・井上あんり・山本竜二・森純・杉本まこと・真央元・小林愛子・林田義行・栗谷栄作・神戸顕一・池島ゆたか)。さあて、多いぞ。出演者中、山ノ手ぐり子と井上あんり、林田義行を間に挟んで小林愛子と栗谷栄作、そして池島ゆたかは本篇クレジットのみ、もう一本撮れる人数だ、難しい魚偏の照明助手をロストする。
 東京に進学なんてまるで考へなかつたのもあり、キャンパスの画だけでロケ地に辿り着き得ぬのは地方民の哀しさよ。兎も角何処園大学(超仮名)の講義室、女子大生の辻倉あゆ子(岡崎)と、助教授・江崎(山本)の不倫で開戦。旧題額面通りに後背位好きのあゆ子が、後ろから突かれ喜悦するストップ・モーションにタイトルが被さる。事後、江崎は誕生日のあゆ子にニナリッチのネックレスを贈る。屋上にて、あゆ子の親友・町田めぐみ(草原)が、江崎以外にも交際相手のゐるあゆ子に苦言を呈する。手を振り振り駆け寄つて来る、ポップなハンサム感を爆裂させるファースト・カットが苦笑気味に微笑ましい真央元は、めぐみの彼氏・安藤勇次。めぐみと安藤の名画座三本立てデートを冷笑したあゆ子は、めかし込んで小洒落たバーへ。そこで藪から棒に登場する神戸健一は、バーテンのアルバイト中の四留八回生・山田。のちに、山田の台詞中には自身を捕まへて“八年生”とあるが、四年制大学に八年生は存在しない。四度卒業し損ねて在学八年目であつたとしても、四年生はあくまで四年生。小林愛子・林田義行・栗谷栄作は、店の背景に見切れる客要員。閑話休題、言ひ寄りかねない気配の山田をかはすまでもなく、あゆ子はお目当ての医大生・小田切和彦(森)と落ち合ふ。因みに、真央元と森純は、樹かずや山本清彦と同じくかつて神戸顕一が率ゐた、その名も神戸軍団―1993年当時既に結成済みなのか否かは、憚りもせずに知らん―の成員。軽く変態的なプレイを経て、あゆ子は小田切からもおねだりしてゐた同じニナリッチをゲットする。めぐみV.S.安藤一回戦挿んで、二本目のニナリッチを金に換へた―狡猾な女だ―あゆ子は、公園の野外ステージでハムレット役を稽古する、小劇団の舞台俳優・中川俊一(杉本)の下へと向かふ。
 その後中川は、舞台公演を観に来たプロデューサーの目に留まりTVドラマに大抜擢、忽ち脚光を浴びる。杉原みさおは、撮影中の中川を突撃取材するレポーター・里美。池島ゆたかは、続けて「里美の突撃レポート」内で中川の感想を求められるカントク、もしくはテレビ畑なので演出家か。
 開巻即火を噴くのが、惨劇ならぬエクセスの奇跡とすら称へることも許されよう、主演女優・岡崎結由の決定力。公称81のCカップといふのが、とてもその程度に納まるやうには見えない丸々と見事に盛り上がつた双球と、引き締まつたボリューム感が弾ける尻から太股にかけてのラインとが絶品のプロポーションに、素直に華やいだルックス。AV女優としての実働期間から短く、今作以外にピンク出演が見当たらないのは返す返す残念でもあれ、結果的にそれなればこその一撃必殺を振り抜く逸材を前に、池島ゆたかもシンプルにノッてゐたのか、岡崎結由の美身を鋭角に狙ふ画の数々は銀幕に載せるとなほ一層強力。一方、江崎は浮気のスパイスも効かせた中年の好色漢、幼児退行の性癖も顕著な小田切は粘着質の行為を好み、一方中川はストレートな若きハンサム。潤沢なあゆ子の濡れ場を、加へて巧みに三者三様に塗り分けてみせる演出ならぬ艶出の冴えも光る。一見、あゆ子の陰でめぐみは目立たないやうに見せかけて、如何にも“大きい”ではなくして、あくまで点を一つ打ち“太い”と評するのがより相当であらう、草原すみれの乳の太さも堪らない。物語的にも実に素直な構造を採用、当初は恣(ほしいまゝ)な男性関係を謳歌するあゆ子ではあつたが、次第にやつかみ混じりのめぐみの危惧に呑み込まれるかのやうに、みるみる全てを失ふ。順に、江崎は二人ただでさへ気まずいところを、出刃も忍ばせた細君・やよい(あるいは弥生/井上あんり)に乗り込まれ。ブレイクし冗長する中川は、何故か里美に寝取られ。二連敗したあゆ子は残る手駒であるのみならず、求婚を受けてゐた小田切をも、興信所を使つたヒステリックなママ(山ノ手ぐり子=五代響子/現:五代暁子)に三股が発覚し正しく万事休す。忽ちオケラになつてしまつたあゆ子を、一応一途な山田が救ふ落とし処は要はいはゆる都合のいゝ話でしかないものの、絡みの回数も重ねつつあゆ子を生温かく見守るめぐみ―と安藤―の視点は、底も抜けかねない展開の安定剤として極めて有効。質・量・テンポまで抜群の裸映画を、一息でグイグイ観させる。後には岡崎結由と草原すみれのオッパイしか印象に残らぬやうな気もしなくはないが、一体それで何の不足があらう。大満足の、頑丈なパワーピンクである。


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