真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「淫乱看護師」(2008/製作:マーメイド/監督:城定夫/脚本:小松公典・城定夫/プロデューサー:村上尚・久保和明/撮影・照明:長谷川卓也/録音:中川究矢/助監督:伊藤一平/監督助手:貝原クリス亮/撮影助手:広瀬寛巳/ラインプロデューサー:横江宏樹/ヘアメイク:仲ひとみ/スチール:高橋大樹/編集:城定夫/音楽協力:タルイタカヨシ/出演:今野梨乃・伊庭圭介・なかみつせいじ・稲葉凌一)。
 深夜の個室病室、どう見ても堅気には非ずと思しき点は兎も角金持ちの入院患者・本山(稲葉)に、看護師の仁科エミ(今野)が体を売る。ひとまづ煽情性の踏み込み具合に関しては、AVと紙一重の開巻。
 率直なところ、そこいら辺りのギャルが戯れにナース服を着てゐるやうにしか見えないことはさて措き、劇中設定としては病院一有能らしい看護師のエミは、婚約者のリュータ(ユータかも/伊庭圭介)とのドライブの最中、助手席から運転者の尺八を吹く定番のフラグに逆らはず、二人が乗る乗用車は大型トラックと喧嘩する。自身が勤務する病院に運び込まれたエミは、重傷を負ひつつ一命も意識も取り留める。ところが医師(なかみつ)から、リュータが植物状態―呼吸器はつけてゐない為、脳死には至つてゐないものと推測される―にあることを聞かされたエミは、脊髄反射で絶望、後に「懺悔-松岡真知子の秘密-」(2010)で原紗央莉も披露する、衝動的な窓からダイブを敢行。ところが、余計な傷を負ふこともなく再び命を失はなかつたエミを前に、慌てがてら中満医師は奇跡を宣告するアシスト。「私の身に奇跡が起きたのなら、リュータにもきつと」と、エミはリュータの快癒を確信する。以来、リュータの両親は延命を望まず、中満医師も専門的かつ冷静な見地から匙を投げる逆風に抗ひ、エミは本山に身を任せ得た金で婚約者の治療を継続する。
 直截にキャバキャバした主演女優の印象は如何せん苦しいものの、在りし日にリュータがエミに贈つたオルゴールが奏でるエドワード・エルガーの、「愛の挨拶」が美しくも其れなればこそ儚く綴る、後退戦も強ひられ悲愴な「トーク・トゥ・ヒム」である。カテゴリー的に全く麗しい、エミがリュータに秘かにセクシャルなトリートメントを施す中、ある意味仕方のないことともいへ、本山はやがて退院。いはばも何も資金源を断たれ、中満医師はエミが感知したリュータ快方の兆しには非医学的と一切耳を貸さぬいよいよの逆境に追ひ詰められた、淫乱看護師が雪崩れ込む“最後の治療”の件は圧巻。シルエット―そして勿論撮影上は擬似―ながらに、挿入の模様を無修正で叩き込む短いカットも噛ませた上での、振り切れたエクストリームを展開してみせる。裸商品としての要請をお腹一杯に果たす一方で、終に確認されたリュータの完勃起と、再び穏やかに鳴り始めた「愛の挨拶」に続く鮮やかなフィニッシュ・ホールドには、逆からいへばノー・ヒントの荒技に対しては若干反則と思へなくもないが、ともあれ綺麗に驚かされた。女の裸を差し引けばなほさら短い尺を駆け抜けるかのやうな余韻に、一滴の温もりが落とされるラストまで含め秀逸。一枚看板の素材に開き直つたかのやうな純エロVシネかと一見思はせておいて、なかなかどうして、侮れぬ一作である。


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