真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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駄楽ひまなときブログ
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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人妻不純交際 奥の奥まで
新田栄
/
2011年06月09日
「
ザ・他人と情事 奥まで痙攣
」(2002『人妻不純交際 奥の奥まで』の2010年旧作改題版/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二《エクセス・フィルム》/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/助監督:高田宝重/音楽:レインボーサウンド/監督助手:北村隆/撮影助手:清水康宏/照明助手:原康二/効果:中村半次郎/出演:若松あい子・林由美香・風間今日子・岡田智宏・田代剛士・平川ナオヒ・丘尚輝)。
主婦の吉沢琴美(若松)が、テレビの料理番組を見ながら晩御飯の献立を決めたちやうどそのタイミングで、旦那の隼人(丘)から、その日は仕事で帰れない旨の電話が入る。琴美が不貞腐れついでに、レディース・コミックをおかずに自慰を始めるのに合はせてタイトル・イン。ここまで、新田栄らしい手際の良さが何気なく発揮される開巻の運びは地味に完璧、後述する、最重要なある一点さへ除けば。一頻り終へたところで今度は、後々の会話から察するにOL時代の同僚と思しき、矢張り人妻の市原友里(林)から電話が入る。合コンするので、琴美も来ないかといふのである。細かいことはいひないといふメッセージでも込めんばかりに、琴美は二つ返事で同意、友里と、更に新婚一年の樋口浩子(風間)とも合流し、三人は会場を目指す。ここで、激越な違和感が爆裂せざるを得ないのが、製作費節減目的で、撮影との同録ではなく声は後から吹き込むことを宗とするピンク映画にあつて、今回風間今日子のアフレコの主が真赤な別人。出番自体が少なく、然程喋らない故微妙に自信も持てないが、多分杉原みさおの声に聞こえた。何れにせよ、風間今日子本来のハスキー・ボイスからは清々しく遠く、浩子が口を開くカットの心地が悪くて悪くて仕方がない。話を戻して、三対三の相手は何れも明応大学生の、画面奥から津田和樹(田代)・星野秀介(岡田)・岩崎淳之輔(平川)。因みに女性陣の並びは、同じく琴美・友里・浩子。ところで淳之輔の素朴な疑問に答へて、隼人は仕事で外泊は説明済み、友里のところは出張中まではいいとして、浩子夫が新婚一年目にも関らずいきなり単身赴任といふのは、些かならず無造作に不自然だ。氷の口移し程度は序の口、乳首を舐めることまで平然と指定する遣り過ぎ王様ゲームを経て、浩子は淳之輔とそそくさと合意、残る四人の目も憚らず、手洗ひに中座し一戦交へて来る。風間今日子的には、早くもここで打ち止め。その晩琴美は秀介を、友里は和樹をお持ち帰り。以来秀介との関係を重ねる琴美ではあつたが、ある日以来、プッツリ連絡が取れなくなる。友里が和樹を通して得た情報によれば、心臓に持病を抱へる秀介は、手術を控へ入院中であるとのこと。そもそも発端の合コンも、そんな秀介の為にセッティングしたものだといふ。琴美は居ても立つてもゐられず秀介が入院する、深夜の日の出町中央病院に潜入する。
兎にも角にも今作を鮮やかにではなく秒殺してみせるのは、勿論ファースト・カットから登場する若松あい子。女優としてはおろか一般人としても華を全く欠くボサッとした容姿に、辛うじて乳は大きいものの、同時に肉も見事に厚い。逆の意味で斯くも綺麗な三段腹といふのも、久々に観た気がする。わざわざ木戸銭を落として、そのやうなものを見せられなければならない不条理は、この期の未だに理解出来なければ、今後とも決して受け容れるつもりはないが。そんな不細工な肉襦袢―直截にも程がある―である主演女優の、脇を固めるのは林由美香と風間今日子。これぞエクセス・クオリティ、とでもいはずして、果たして何といはう。風間今日子の声をあからさまな他人がアテレコする明白な瑕疵さへもが、寧ろ別の意味で完璧とすら思へてしまひかねない。今作中、幸にも琴美と絡む災難を免れる隼人に不貞が発覚しかけた危機に、友里が渡した絶妙な助け舟を、今度は友里と和樹の
水葉亭
に舞台を移した藪から棒な伊豆パート―浴室の窓から覗く外景が合成に見えるのは、当然気の所為か?―に繋げる段取りや、効果的な一オチも噛ませた、それぞれの懲りないお互ひ様ぶりが巧みに交錯するラストなどには、実は意外と光るものも感じさせぬではない。とはいへ最終的には超絶のアンバランス感以外残るものはほぼ無い、若松あい子の通つた後には、ペンペン草一本残らぬ勢ひの壮絶な一作である。脚本自体の純然たる完成度からすれば、実現可能な人選でいふと、これで主演が例へば同年二作前「
介護SEX お義父さんやめて!
」の安西なるみであつただけで、全体の印象が、相当に変つてゐたのではないかとも思へるのだが。
それどころではないことなど、この際いふまでもあるまいが、新題の感動的なまでの適当さが堪らない。何が“ザ・他人と情事”だ、その定冠詞に、一体何の意味があるといふのか。大体“家族と情事”であつた方が、問題が生じる場合が多からう。
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