真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「美人音楽教師 濡れ下着」(1998『人妻ピアノ教師 いやらしい指』の2006年旧作改題版/制作:ENKプロモーション・駒田慎司/提供:Xces Film/監督:剣崎譲/脚本:葛西玲・剣崎譲/企画:稲山悌二 エクセス・フィルム/原作:長谷川章一『人妻ピアノ教師 いやらしい指』ノベライズ鹿砦社・刊/撮影:牧逸郎・木根森基・山森泰/照明:北井哲男・田村正宏・岸田一也/助監督:木村徳文/制作:大谷優司・平田孝・佐藤充/スチール:渡辺哲/美粧:井谷裕子《シェル》/衣装:三宅洋子/ネガ編集:不動仁一郎/ピアノ指導:相崎紀子/録音:東洋スタジオ 立石幸雄/リーレコ:日映新社/現像:東映化工/タイトル:タイトルラボ/フィルム:報映産業/協力:関西映機・AC/DC・翔の会・レンタルラボ エンドレス・ランジェリーショップ エリー・オートセンリ Signal・スナック ガラスの森/出演:イヴ《神代弓子》・水原彩・河田美咲・藤田佳昭・天城鳳之介・佐賀照彦・中川真理子・渡辺哲・山根信介・河野洋一・遠山章・山口尚美・池山司)。出演者中、中川真理子以降は本篇クレジットのみ。
 ピアノの音とともに住宅地のロングを押さへる開巻、自宅でピアノ教室を開く美智子(イヴ)に、生徒の遠野(佐賀)が迫る。少なくとも今作に於ける佐賀照彦は、女より寧ろ男の方が好きさうにしか見えない点に関しては、この際通り過ぎよう、どの際なのか。遠野がブラウスの第一釦を飛ばすのは、無造作なミスでなくさゝやかな伏線。飲み屋「LEE」にて、矢張り二代目社長である年下の友人・中村(天城)と飲む父親の会社を継いだ夏木昭夫(藤田)に、ママの奈央(水原)が尋ねる。「奥さんて確か・・・」、「ピアノ教師だよ」といふ答へに合はせた、タイトル・インの判り易さが抜群にスマート。続けて後日、遠野へのその日のレッスンを終へたタイミングで、美智子が当該のブラウスを着るのは初めてであることと、即ち冒頭の濡れ場は夏木のイマジンである旨とが語られる。そこまでは、いゝとして。居間にて夏木が美智子と乳繰り合ひ始めたところに、遠野がバツの悪さうに忘れ物を取りに戻るのは、些か間も抜けたシークエンス。主要俳優部残り河田美咲は、入社した会社でロック・オンした社長の倅の子供を懐妊し、狙ひ通り新社長夫人の座に納まつた中村の妻・ナオミ。自宅にしてはピンサロ感覚な赤青の照明が当てられる寝室、ナオミとポップなコスチューム・プレイに日々戯れながらも、中村は夫婦生活のマンネリ化を感じぬでもゐた。そんな中村に、奈央はいはゆるニャンニャン写真を薦めてみる。そんな写真何処で現像するのかと疑問を懐く中村に、夏木は俺がやつてやるよと猛者風を吹かす。藪から棒にその道のマニアさんであつた夏木は、美智子との豪快な野外露出撮影に、それでゐてポラロイド・カメラを使用してゐたりなんかする、現像する技術も設備も必要ないぢやん。デカい黒塗りのスポーツ・セダン(シグナルオート提供か)を乗り回す割には、自宅でのナオミ撮影に中村が他愛もない使ひ捨てカメラを使つてみたりと、とかく所々が締まらない映画ではある。それもこれも、デジカメといふパンドラの箱が開く以前の世間の話でしかないのだが。夏木は休日に、中村夫婦を自宅に招く。ナオミから中村が自身の痴態写真を見てゐるのを告げられた美智子は、動揺し衣服を濡らしてしまふ。別室に入り着替へようかとした美智子の乳を、夏木は左右から中村と二人で弄ぶ。動揺も隠せない中村に対し、夏木と奈央は、美智子とナオミをも巻き込み加速して行く。
 飲み屋の女を起爆剤に交へ繰り広げられる、二組の夫婦の愛欲遊戯。始終を通過した上での二人の夫の立ち居地を比較すると、暗がりの中から、並んで立つ夏木と中村だけが照明で浮かび上がる、古臭くも印象的なショット。取つてつけられたやうな場面ともいへ、中村は美智子のセックスは夏木を悦ばせる目的のものであり、対してナオミは自身が愉しむためだけであるといふ真実に辿り着く。一方元来主人公たるべき夏木はといふと、一貫して美しく従順な妻との羽目を外し倒した情事を、漫然と楽しむばかり。これでは要は、常識人である中村が、トンチキな夏木と奈央に振り回されるといふお話に過ぎない。脇役が一種の成長を遂げる反面主役が微動だにしない物語は、一応締めの美智子と遠野、挙句夏木も加はつての巴戦に際して何故か、しかも中途半端にしみつたれた量舞ふ羽毛が何となく象徴するやうに、詰まるところスッカスカでもある。それは一旦さて措き特筆すべきは、勇猛果敢過ぎる夏木と美智子の露出パートの撮影。背後に素面の見物客も見切れる景勝地でガンガン乳も尻も放り出すのは恐ろしくも序の口で、白昼の繁華街でも堂々と、肌蹴たコートの下の、美智子の裸のオッパイを傍らの夏木が揉み込んでみせるスリリングを披露。女優三本柱も完璧に綺麗に粒が揃ひ、展開自体の中身の薄さをエクストリームな煽情性がグイッグイ捻じ伏せる、実用的かつ痛快な一作である。

 中川真理子は、そこそこ目立つ「LEE」の女。渡辺哲は奈央らの会話の呼び水として、中川真理子に裸の写真を撮らせろとしつこいエロ社長。といふか、「LEE」はエロ社長ばかりの店ではないか。その他は、興奮しつつ当惑する長台詞も与へられる夏木と美智子の屋外プレイのギャラリーと、「LEE」店内要員。


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