真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「残虐女刑史」(昭和51/製作・配給:新東宝興業/監督:山本晋也/脚本:山田勉/製作:吉岡昌和/企画:新東宝興業株式会社/撮影:柳田一夫/照明:磯貝一/音楽:多摩住人/編集:中島照雄/効果:創音社/助監督:堀之内透/演出助手:奥出哲夫/撮影助手:佐々木更生/照明助手:花田友三郎/衣裳:富士衣裳/小道具:高津小道具/結髪:丸善/録音:大久保スタジオ/現像:ハイラボセンター/出演:峰瀬里加・東裕里子・今泉洋・近藤実・坂本昭・花房里香・深野達夫・三重街竜・谷ナオミ・大原恵子・松浦康・茜ゆう子・青木理沙・森明・港雄一・南ゆき・有沢正美・原幸平・土羅吉良・木南清)。出演者中、青木理沙がポスターには何故か日木理沙で、遠藤一男と坂本昭、深野達夫と三重街竜、森一男に有沢真佐美以降は本篇クレジットのみ。
 細君・郁子(東)が新しい女中のおさと(峰瀬)を、日本刀の手入れをする主人で旧日本軍軍人の友田大尉(今泉)に紹介する。友田が歳を尋ねると、怯えるやうに十八との答へが。さうか、十八かと受けた友田は、出し抜けに気勢を挙げるや刀を一閃。ビシャーッと飛び散る血飛沫に、ドイーンと被せられるタイトル・イン、

 何だこの映画。

 滅多矢鱈な開巻のビートを維持したまゝ、以降はひたすらに純然たる無体な無惨が吹き荒れる、のみ。間男・善之助(近藤)を斬殺した主人は、体面を重んじ細君の不義の発覚を懼れる。憐れ濡れ衣を着せられた女中は、巡査(坂本)に無理矢理口を割るやう拷問されると、舌を噛み切り自害する。
 名主(三重街)が挙式前に村の女の処女を頂くとかいふ、訳の判らないが羨ましくもある風習のある村。方言から推定すると、中国地方東部か。新妻・とよ(花房)を奪はれた新郎の松次郎(深野)はいきなりトップ・ギアに錯乱、名主は文字通り秒殺、新妻になる筈の女は清めるだとか称して矢張り拷問。枝切り鋏で左右の大陰唇(推定)を切り取るなどといふ、生半可なサド好きの低劣な煽情性をも、木端微塵に粉砕するスラッシュを展開する。
 滅法美人の画商・静(谷)に春画を依頼された浮世絵師の尾形晴雲(松浦)は、明後日に猛ハッスル。口の利けない娘・豊(大原)を苛烈に嬲り倒しながら、責め絵制作に明け暮れる。静が晴雲の毒牙にかゝりかけると、責められ過ぎで気が狂つてしまつたのか豊は静の女陰を喰ひ千切り、まるで幕間のアイ・キャッチ感覚で鮮血が迸る。
 仮面ライダーの石切り場的な荒野を往く、負け戦から逃走中の総姫と女忍者のかえで(青木理沙と茜ゆう子)。敵方の忍者(森一男と港雄一)に捕らへられた二人は、洞窟にて陵辱された上サックリ殺される。
 勘当された材木問屋「相模屋」の放蕩息子・清吉(原)と足抜けしようとした女郎のおはま(南)が、トッ捕まり相変らず拷問される。
 キャストの頭数と撮影現場のバリエーションとを要する分、手間も暇も勿論金も余計に嵩まうとしか思へないが、さういふ時代がランダムに前後する五篇を矢継ぎ早に連ねる、強ひて判り易く纏めようと試みるならばオムニバス風の一作である。さうはいへ、諸篇が互ひには清々しく一切連関しないばかりか、要は中身といへば女が惨たらしく虐待された上実も蓋もなく惨殺されるばかりにつき、殆ど残虐映画の総集篇、とでもいつた趣が強い。支配階級への怒りもマゾヒズムの悦楽も、虐げられる者のそれはそれとしての美しさなど一欠片も織り込まれるでなく、女体への凄惨極まりない加虐描写を徹頭徹尾貫き通す山本晋也の姿には、悪趣味なれどだからこそ力強くもある、見世物根性に徹した職業監督としての潔さがひとまづ窺へぬではない。一応ラストは囚はれ痛めつけられつつも、女郎と放蕩息子とが愛を確認し合ふカットで締め括られるものの、どうせ行く末は、虫ケラのやうにブチ殺されるに決まつてゐよう。

 一つ目を引いたのが、放蕩息子との情交に際し、女郎は紙を一度口に含み柔らかく、同時にある程度の固まりにしたものを、避妊具として膣内に詰める。今でいふならば簡易ペッサリーとして、さういふ習俗のあつたといふ点は勉強になつた。
 備忘録< 使ひきらなんだ配役が、ビリング順に女中さと・郁子・友田大尉・善之助・巡査・おとよ・松次郎・名主・静・おみつ・尾形晴雲・くの一かへで・姫君・忍者×2・女郎おはま・?おとく・清吉・若衆×2・与兵衛


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