真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ダブル巨乳 乳首ねぢり」(2005『外人妻×スケベな妹 丸見えエロ騒ぎ』の2008年旧作改題版/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影:飯岡聖英/照明:小川満/助監督:田宝重/監督助手:宮崎剛/撮影助手:小宮由紀夫/照明助手:八木徹/下着協賛:ウィズ・コレクション/出演:星川みなみ・林マリア・藍山みなみ・熊谷孝文・西岡秀記・中谷千絵)。
 安サラリーマンの陽平(熊谷)は、フィリピン人の妻・ドロシー(林)の作る夕食が、けふも日の丸弁当であることに閉口する。陽平はアジアン・パブで働くドロシーを食事に誘つてみたところ、いはゆる押しかけ女房といふ形で結婚したものだつた。曰く、ドロシーの国では男が女を食事に誘ふといふことは、求婚と同義であるとのこと。ここは日本だ、といふかフィリピンも別にそんなぢやねえだろとかいふ以前に、何と余裕の無いスリリングな文化か。一挙手一投足が一々真剣勝負だ。日本人は一日一善、ワタシは一日三発と豪語するドロシーに、碌な飯も食はせて貰へてゐないのに薙倒されるかの如く求められると、陽平は目を白黒させながらも夫としての務めを果たす。事後、実家に送金する要も含めて、実は未だ働いてゐるアジアン・パブに出勤しようとするドロシーを陽平が見送つてゐたところ、ウェディングドレス姿の若い、しかも巨乳の女が飛び込んで来る。女(星川)は、陽平の義理の妹・麻衣を名乗つた。陽平と麻衣とは、互ひに再婚の陽平の父親と麻衣の母親とが結婚した際の連れ子同士で、その後父母が再離婚した為、離れ離れになつてしまつてゐた。ドロシーが条件反射の嫉妬と猜疑とを燃やす一方、陽平は選りにも選つて花嫁衣裳であることから何事か訳アリに違ひないと、麻衣をひとまづ家に置くことにする。
 藍山みなみは、麻衣の友人・潤子。麻衣の留守中に陽平宅を訪問し、通された居間では何か金目のものは無いかと室内を荒らし始める。不審な様子を陽平に見咎められると、コンタクトを落としてしまつたと称して尻を陽平の方に突き出し、鮮やかなハニー・トラップで絡め取る。畳に這ひ蹲りながら不自然に沈めた腰を更に曲げパンチラを陽平の方に向ける麻衣のショットは、馬鹿馬鹿しさの限りであると同時に、麗しいひとつの頂点であらうと思ふ。兎にも角にも藍山みなみが今からすると抜群に細く、さうなると超絶の美少女ぶりは文字通り驚異的だ。この当時の藍山みなみを見る目的だけでも、どんなに詰まらないピンクでも観る価値があることを断言出来る。西岡秀記は、式の途中で花嫁となる筈の麻衣に逃げられてしまつた気の毒な新郎・直樹。直樹はコンタクトを落としたとかいふ女から逆ナンされると事実上の二股をかけてしまひ、式の最中その女に乗り込まれたものだつた。陽平は麻衣を傷つけた直樹に立腹すると同時に、何処かで聞いたやうな話に首を傾げる。中谷千絵は、本物の麻衣。未だ麻衣が小学生の頃に離れ離れになつて以来とはいへ、明らかに紛ふことなき別人だ。幾ら何でも陽平も気付けよといふは容易いが、そこまで含めての、いはゆる“女の武器”の威力か。
 最早特撮映画並みのスペクタクルを爆裂させる、ドロシーが麻衣に対して展開する怒涛の夜這ひ―四つの巨大なオッパイが激突する様は、正しく圧巻の一言―は、堂々と陽平の妄想オチで展開しつつ。翌朝麻衣と改めて衝突したドロシーは、臍を曲げて家を出て行つてしまふ。といふ次第で林マリアが退場すると、以降はドロシーのことなど申し訳程度の殆ど何処吹く風に、映画は巨乳ドタバタから麻衣を主人公に据ゑた意外とオーソドックスな人情ピンクへと移行する。一応締めの濡れ場はドロシーと陽平とのものではあるものの、ドロシーが家に戻つて来る件すら割愛して済ませてしまふ辺りに、要は一途に星川みなみの方に向いた渡邊元嗣の眼差しが窺へる。姑息とはあへていはぬが、ベタとはいへども本物の麻衣が死んでしまふシーンでエモーションの助走をつけると、悪女の改心を描いた正攻法の物語は、娯楽映画の鉄板を頑丈に完成させる。星川みなみ×林マリアのツイン爆乳にまるで奇跡のやうな藍山みなみの可愛らしさと、実用的な彩りも全く申し分ない。人生には、曇りの日もあれば雨の日もある。だけれど一晩眠れば、又新しい一日がやつて来る。といふ主題が綺麗に全篇を包み込む、特に大騒ぎする程のことも別にないのだが、それでゐて爽やかな、心に残る娯楽ピンクの佳篇である。偶発的な事情とはいへ、出し抜けに陽平の前に現れた潤子を詰問する麻衣改め海の背後を何気に飾る、美しく雪が降り頻るラックも捨て難い。

 今稿、実は古くに書いた感想があつたのだが、あまりにも出来が悪いので潔く全面的に書き直した。


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