真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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火照る姉妹 尻・感染愛撫
か行
/
2009年09月21日
「
火照る姉妹 尻・感染愛撫
」(2009/制作:ネクストワン/提供:Xces Film/監督:黒川幸則/脚本:黒川幸則・カジノ/企画:亀井戸粋人《エクセス・フィルム》/プロデューサー:秋山兼定《ネクストワン》/撮影:村石直人/照明:鳥越正夫/編集:酒井正次/助監督:江尻大/監督助手:関谷和樹/撮影助手:橋本彩子・瀬戸詩織/照明助手:大橋陽一郎/編集助手:鷹野朋子/効果:梅沢身知子/スチール:MAYA/出演:かなと沙奈・夏川亜咲・ほたる・園部貴一・飯島大介・サーモン鮭山・仁科芳子・井尻鯛)。出演者中、仁科芳子と井尻鯛(=江尻大)は本篇クレジットのみ。
玄関先で呑気に温かい飲み物を飲む森見静香(かなと)の前を、マスクをした通勤途中のサラリーマンが判り易く咳をしながら横切る。開業医の静香は、大学病院に勤める研究医の父・茂(飯島)と妹・舞(夏川)との三人暮らし、姉妹の母親の去就は語られない。茂は昨夜から具合が悪く、朝風呂を浴びるとそんな父親のことも思ひ遣らずにズンチャカズンチャカ大音量で音楽を鳴らす舞に、静香は閉口する。舞はその日彼氏を家に連れて来ることを一方的に姉に告げ、静香は茂のことを気にかけながらも、ひとまづ出勤する。静香が看護師の長谷周(サーモン)と切り盛りする森見医院。とはいへ、静香はのほほんとした印象を全く裏切らぬどころか加速する、どうして斯様に間の抜けた女が医師免許を取れたのかが強力に判らない薮医者で、けふも患者(井尻)に出鱈目な診断を下し匙を投げられる。そんな閑古鳥の鳴く森見医院に、激しく消耗しながら裸足でフラフラ歩く、見るからに尋常ではない女・辻麻巳子(ほたる=葉月螢)が現れる。すは急患だと、慌てて常にも増して使ひ物にならないながらとりあへず診てみる静香の首筋に、麻巳子は不意に接吻する。以来急激に体調を崩した静香が帰宅する一方、茂は恐れてゐた報せを大学病院から受け取る。きのふ茂が診察した、治療法の有無は不明なものの、感染力と致死率とが共に極めて高い新型ウイルスに感染した女が死亡したといふのだ。といふ訳で茂は静香に自分には近付くなといふが、静香は静香で既に自分も麻巳子から感染してゐる、医学的では欠片もない自覚があつた。その点に関しては、家で臥せつてゐるのみで、然るべき診察を一切受けてはゐない茂も同罪であるのだが。父娘は―といふか、全共闘世代の血が騒いだ茂主導で―彼氏・土居啓(園部)を伴ひ家に帰るといふ舞を家に入れぬべく、俄かにバリケードで森見家を封鎖する。だからそれが、プロフェッショナルとして最良の選択か。仁科芳子は、静香がぼんやり見やるTVの中で、新型ウイルスのニュースを伝へる記者。この人が、硬質な美人な上に喋りも立ち、薮からに高い完成度のリポーターぶりを披露する。
実は1997年に監督作が一本―「淫乱生保の女 肉体勧誘」(伊藤聡と共同脚本/未見)―ある為、実に十二年ぶりともなる黒川幸則第二作。これが何といふか、直截にいふと漫然とした、何がやりたかつたのかよく判らない。兎にも角にも概ね全篇を通して一つ一つのカットが悉くキレが甘く、映画が絡みまで含めて一向に締まらない。全般的にモッサリモッサリした印象の中、父娘で玄関先を閉鎖するものの、そこに向かふ一手間すら省いたまま、舞はアッサリ裏口から家内に侵入、といふか要は帰宅。これでは赤ヘルやゲバ棒まで持ち出しておいて攻防戦の欠片もない上、そもそも父娘の専門家二人を擁しながら、感染パニックとしてもどうにも脇の甘さ所以盛り上がらず、どちらも膨らまない弾まない。神出鬼没の怪人としては見事でもありつつ、最終的には麻巳子も風のやうに窓から退場すると唐突さだけが残るばかり。幼馴染で実は相思相愛の状態にあつた静香と土居が、死を覚悟してヤッてヤッてヤリ倒す濡れ場は瞬間的に勢ひと力強さとを持つが、事後舞も交へて三人で半裸で踊り狂ふシーンのどうしやうもなさで、いよいよ止めを刺されてしまつた感は強い。さして達者でもない踊りに対し、フィックスで長々と回すのは自殺行為だ。主演女優ののんびりとしたオーラに映画全体が支配された、とでもいへるのかも知れないが、それにしては同じかなと沙奈主演ではあつても堀禎一の「
したがるかあさん 若い肌の火照り
」(2008)は、斯くも緊張感を欠きへべれけではなかつた。だからといつて、「したがるかあさん」が面白かつたといふ訳でも、別にないのだが。本来ならばシンプルな、だからこそよしんば逆方向ではあつてもパンチの効いた筈のオチも、力なく空振りする。瀬々敬久の「感染列島」と比べれば女の裸がてんこ盛りで、なほかつ無駄で無様なお涙頂戴がない分、まだしもマシとはいへども、矢張り決定力にはまるで欠いた一作といへよう。ほんわかとした魅力をお腹一杯に堪能させて呉れるかなと沙奈に対し、よくよく見てみるとギャル属性が邪魔にも思へるほどに王道に可愛らしくオッパイもいい感じの、夏川亜咲に関しては喰ひ足りなさと、姉妹と土居との三人でだらしなく踊り呆けさせるくらゐなら、まだしも自暴自棄気味ではあつても怒涛の3Pか、あるいは姉妹による百合プレイでも見せて呉れれば良かつたのに、といふ大いなる疑問とを残す。
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