怪我


LEICA X1

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何年か前の話であるが、仕事が間に合わなくて、ちょうど家にいたMrs.COLKIDに頼んで手伝ってもらったことがある。
ものが何であったか忘れたが、カッター台で直線に裁断する作業を、家でひとりで内職でやってもらった。
単純な作業であるが、鋭利な刃物を使うため注意が必要であった。

Mrs.COLKIDは竹を割ったようなさっぱりとした性格で、器用で大抵のことはこなすし、動きも人一倍速い。
恐らくかなりのスピードで、スパーッ、スパーッと作業をこなしていったはずだ。
ほどなく自宅から会社に電話がかかってきた。

「手を切っちゃったの」
「・・・ひどいの?」
「・・・ええ」
「病院に行かなければならないくらい?」
「・・・ええ。血がかなり出ているの」

やったか・・・
慌てて車で自宅に向かった。
勢い込んで切った時、カッターの軌道上に、定規を押さえていた指の一部が被さったらしい。
指の側面を深さ数ミリ、カッターでそぎ落としてしまったのだ。
足元に切り落とした2センチほどの指の側面の皮が落ちていた。

これは大変とその皮を拾い、大切に包んでポケットに入れ、傷口を手で押さえているMrs.COLKIDを車に乗せて病院に向かった。
病院で緊急であることを告げ、ほどなく外科の先生のところに通された。
僕はMrs.COLKIDの横に立ち、いっしょに怪我の状況の説明をした。

先生は説明に「フム」と頷き、傷に明かりを当てて状態を見ている。
先ほどのあれが必要になると思った僕は、
「先生、これがその切り落としてしまった指のカケラです」
と言って、ポケットから拾ってきた皮を出して渡した。

先生は「フム」と言って、皮をピンセットで掴み、裏返したりして眺めていたが、
「はい、わかりました」
と言って、その皮をゴミ箱にポイと捨てた。

大切に持ってきた僕は、思わず「あっ」と声を上げそうになった。
僕とMrs.COLKIDは、顔を引きつらせて、皮が放り込まれたゴミ箱を見つめていた。

治療は縫うこともなく完了し、今は完治してほとんど痕も残っていない。
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