担任


D3X + AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G

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小学校の低学年の時、大学を出たばかりの若い女の先生が、クラスの担任になったことがある。
若い先生ということで、子供たちは馬鹿にしてしまい、クラスは時折収集がつかなくなった。

生徒があまりに言うことを聞かないので、先生はどうしたらいいのか分からなくなり、時折机に顔を伏せて泣き出してしまった。
すると残酷な子供たちは、泣いた、泣いたと喜んで騒いだ。
特別な悪意があったわけではなく、大人が子供に屈する姿を見たことが、子供たちにとっても衝撃で、余計に興奮して騒いだのだと思う。
先生にしてみれば、社会に出てすぐに手厳しい洗礼を受ける形となった。

僕は口の達者な生意気な子供で、よく先生からの非難の対象となった。
面談の時、僕の親は先生から
「○○くんはずるいんです。普段は自分がおしゃべりをしているくせに、私がちょっとでも間違えると、急にこっちを向いて「先生、それ違うよ」と言うんです。○○くんは、自分に甘く他人に厳しいんです」
と言われた。
小学校低学年の子供に対し、大人がまともに怒っているので、さすがに僕の親もあきれていた。

子供にとっては、自分の親と学校の先生は、直接接する機会のある大人の、ほとんどすべてと言っていい。
当時は戦後20数年経った頃で、敗戦ですべてを失ったどん底の状況から復興し、日本人が自信を取り戻した頃で、大人たちの多くは勢いがあり堂々としていたように思う。
特に中年の大人は、死線をかいくぐって生き残った者も多く、芯が太かった。
親は絶対に子供の前で情けない姿など見せなかったし、先生もどんと受け止めてくれる人間的に深みのある人が多かった。

そんな世間にいきなり出されて、容赦ない子供たちから、他のベテランの先生と比較された若い先生には気の毒なことをしたと思う。
僕の親によれば、若いきれいな女性だったという。
ところが、その前に担任だった中年の女の先生が太っ腹で豪快な人で、子供たちに非常に人気があった。
そのため、前の先生の方が美人でよかったと、僕が作文に書いたという。

あの先生にはずいぶんと酷いことをしたと思っている。
お会いできれば一言謝りたいが、今でも恨まれているだろうか・・・
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