バイソン


D800E + AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G

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リーガル・シューアンド・カンパニーのお店で、見逃せない靴と出会ってしまった。
同店はリーガル社のコンセプト・ショップで、原宿と渋谷のちょうど中間の、線路沿いの道にある。
なかなか面白い仕様のオリジナルシューズが並んでいる、興味深いショップである。

「こんな製品が欲しい・・」と普段から思っていたような靴がポンと置いてあるので、僕などは行くと目が回ってしまう。
アノネイやホーウィンなど、海外のタンナーの素材を使った「革にこだわりを持った」製品が多いからたまらない。
そろそろ靴を集めるのもやめようと思っていた矢先だったので、最初に見た時は、これは困ったことになったぞ・・と思った。

その中で異彩を放つ靴が目に留まった。
はっとなり、手に取ってみる。
パーツごとに色の違う革をあしらった大胆なデザインで、他の靴を圧し、ひときわ目立っていた。
これだけオーラが出ているのは、素材に素晴らしいオイルドレザーが使われているからであろう。



その靴の前で立ち止まっている僕を見て、店員さんが説明に来てくれた。
話を聞くと、極めてレアな製品であることがわかってきた。
真っ先にその靴に興味を示し、しかも革について多少の知識があるということで、話の通じる相手と思ってもらえたのかもしれない。
まあ、革フェチ・クラブの会員であることが、ばれたということだ(笑)
(多分あちらも革フェチ・笑)

これはホーウィン社のアメリカバイソンの革で、もう二度と手に入らないであろう貴重な素材を使った製品である。
最高峰のオイルドレザーである同社のクロムエクセルと、同じなめし方をされている。
アメリカバイソンは保護されている動物で、捕獲は余剰分しか許されていないそうで、その革はかなり珍しい。
かのホーウィン社がバイソンの革を製造していたことは、まったく知られておらず、ネット上で探しても資料が出てこないという。
今回ごく少量の在庫を、長年の関係から、特別に出してもらったのだそうだ。

しかし革の面積が小さく量にも限りがあるため、同じ色だけで1足を作り上げるのは難しく、このようにパーツごとに数色を組み合わせる形を取った。
つまり必然的にこのデザインになったのだ。
つま先及び踵部分、羽根部分、それ以外の本体部分と、3種類の色の革が使われている。

実はアメリカバイソンの革の靴が全く無いわけではなく、アメリカの靴メーカーからもバイソンの革を使った製品が出ている。
耐水性が高い革ということで、一度輸入してみようかと考えたことがあるのだ。
しかし老舗タンナーのホーウィン社もバイソンの革を作っていたという話は、確かに聞いたことがない。
しかも僕の一番好きなクロムエクセルと、同じ手法でなめされているのだ。

強さと柔らかさが同居した、独特の質感の革である。
僕はオールデンのクロムエクセルの短靴を愛用しているが、リーガルの製品は、それより少し硬めに作られている。
表面に見られるワイルドなムラが、非常に魅力的である。
時折小さな傷があるのも、今回の場合仕方ないところで、それもまた味のひとつと許せてしまう。
本当に見ているだけで嬉しくなる靴だ。

なるほど、これほどの革であるなら、何よりもその価値を理解する人に使ってもらいたいだろう。
僕としては、今これを買わないでどうする・・という出会いになってしまった。
お店の方の「この後は、もう一生見ることの出来ない靴だと思います」という一言が効いた(笑)
本当はその日はバーガンディの靴を見たくて行ったのだが、優先順位を考えれば、いつでも手に入るものより、まずはこちらを押さえるべきなのは明らかだ。
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