80周年


カメラ雑誌のアサヒカメラが創刊80周年だそうで、購入したところこのような小冊子が付いてきた。
大正15年の創刊号から昭和24年10月号まで(昭和17年から情報局の指示により休刊していたが昭和24年に復刊)に掲載された記事の中から、いくつかを抜粋して作られた80ページほどの小さな印刷物である。
これがけっこう面白い。
字が小さいので読みづらいのだが、思わず見入ってしまった。

昭和初期の頃まではのびのびとした記述や写真が多いが、戦争が近付くと世相を反映した内容となる。
書ける事と書けない事があったのだろう。
誌面の雰囲気はどことなく今の北朝鮮を思わせる。

昭和16年には「外貨獲得の尖兵」という題名で創業間もないマミヤの訪問記が載っている。
同年の別の号からの抜粋には、帝国海軍の爆撃部隊の訪問記があり、九六式陸攻の写真が収められているが、基地名は明らかにされていない。

特筆すべきは「時の人素描」と題した記事で、当時のヒトラーの人気について研究したレポートだ。
普段は強面のヒトラーが少年少女に接した時の微笑んだ表情や、オリンピックで謙虚な態度の日本選手を見たときの顔付きの変化、さらには妻子を持たず公的生活に徹する政治家としての姿勢について触れている。

写真という趣味は諜報活動に結びつくので、戦時下においては当然当局から目を付けられている。
街の風景を撮るカメラマンの中にスパイが混ざっている・・ということへの注意を促すポスターも特集されている。
題名は「防諜標語写真ポスター集」。
「空襲はこの一枚の写真から」とか「めくら写しはスパイの手先」「記念撮影バックはよいか」「カメラ天狗に飛びつくスパイ」など、非常に興味深い標語が並ぶ。

当時は特に橋の上などで撮影するとすぐに拘束されたという。
見晴らしのいいそんなところで撮る理由が、諜報活動以外に思いつかないからであろう。
橋の上での撮影は、今でも治安の悪い国では注意すべき行動である。
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