♪そうさ 俺のせいでいいさ ほんとはおまえから 別れを言い出した
男の未練を歌った「やすらぎ」(黒沢年男)の一節は、女性の本質を言い当てている。女性は正しさに固執し、被害者の側に身を置くことで落ち着きを覚えるという、歪んだ女性観を持つ俺は、小保方晴子さんの会見に納得してしまった。
「200回以上もSTAP細胞作製に成功した」「実験ノートは数冊ある」……。正しさを主張した小保方さんに、専門家は厳しい目を向けている。一方で、彼女の指導役を務めた理研の笹井氏は、「STAPは本物の現象」と朝日新聞の取材に答えている。騒動が収束する気配はない。
<自己愛が強く虚言癖のあるモンスター>と小保方さんを評し、「キュートさをフル稼働して地位を築いた」と報じるメディアもある。本題ともリンクするが、証言の集め方にバイアスが掛かっていれば、真実を見誤る可能性もある。
「灯台へ」(V・ウルフ)で疲れた脳を休めた後、「グロテスク」(桐野夏生)を読み始めた。主人公(わたし)と2人のモンスター――絶対的美貌を誇る妹ユリコ、東電OL殺人事件の被害者をモデルにした和恵――を巡る物語で、女性の内面を独白の形で抉っている。またも消化不良を起こしそうな長編だ。女同士の葛藤をベースにした点で同作に重なる「白ゆき姫殺人事件」(中村義洋監督)を見た。公開直後でもあり、ネタバレは最低限に記したい。
数カ所の刺し傷が残る無残な女性の焼死体が見つかった。被害者は化粧品会社OLの典子(菜々緒)で、回想シーンで頻繁に登場する。典子は「グロテスク」のユリコ同様、完璧な美貌の持ち主で、会社の商品(石鹸)にちなんで「白ゆき姫殺人事件」と命名される。ネットで犯人と名指された同僚の美姫(井上真央)は、「グロテスク」のわたしのように容貌は平凡だ。
事件を追うのがテレビ局ディレクターの赤星(綾野剛)だ。綾野は「LINK」(WOWOW、全5回)で、絶望の淵にいる人間を孤独から解放し、有機的に結び付けることを志向するショーンを演じていた。本作で演じた赤星は対照的にSNSに踊らされる。典子が元カノの里沙子(蓮佛美沙子)の先輩だったこともあり、赤星は係長(金子ノブアキ)らを取材して社内事情に詳しくなる。
ネットで<美姫犯人説>が暴走し始めると、誰しも〝結論〟に沿った証言しかしなくなる。事件後に姿を消したこともあり、美姫は小保方さん以上の四面楚歌状態に陥った。当ブログで<インターネットはタコツボ社会を生んだ>と繰り返し記しているが、今や多くの人々は二進法でしか考えられなくなっている。美姫は本当にモンスターなのか? 典子は果たして? 犯行の動機は? 本作は十進法的手法で時間を行き来しながら、真実に迫っていく。
見終えた後、ある妄想に耽っていた。超凡人たる俺が万が一、何か事件に関わったとしたら、数々の証言から〝モンスター〟になり得るだろうか……。人生の消しゴムが欲しいぐらい、俺は愚行と失敗を繰り返してきた。証言に基づいてすべてのピースを嵌め込んだら、<異常なモンスター>という名のジグソーパズルが完成するかもしれない。
谷村美月や貴地谷しほりが美姫に寄り添う友を演じ、生瀬勝久、染谷将太ら錚々たる面々が脇を固めている。同じく湊かなえ原作の「告白」ではレディオヘッドの「ラスト・フラワーズ」が効果的だったが、本作ではクラシックユニットのTSUKEMENが芹沢ブラザーズとして登場し、ストーリーにもしっかり絡んでいた。
STAP騒動、袴田さん釈放と本作を重ねることもできる。「クラウド 増殖する悪意」(森達也)は増殖した悪意が日本を覆っていることに警鐘を鳴らしていた。「白ゆき姫殺人事件」が秀逸なのは、優れたエンターテインメントでありながら、増殖した悪意を克服する道筋を示している点だ。ラストに温かいカタルシスが待ち受けている。
本日のテーマは、結果的に<女性>だった。最後に少女たちの闘い、桜花賞の予想を……。といっても、既にモンスターと認知されているハープスターが馬券から外れることはなさそうだ。大外⑱番も追い込み一手の同馬にとって都合がいい。⑩ヌーヴォレコルトとの馬連、⑩⑱2頭軸の3連単マルチを買う予定でいる。
男の未練を歌った「やすらぎ」(黒沢年男)の一節は、女性の本質を言い当てている。女性は正しさに固執し、被害者の側に身を置くことで落ち着きを覚えるという、歪んだ女性観を持つ俺は、小保方晴子さんの会見に納得してしまった。
「200回以上もSTAP細胞作製に成功した」「実験ノートは数冊ある」……。正しさを主張した小保方さんに、専門家は厳しい目を向けている。一方で、彼女の指導役を務めた理研の笹井氏は、「STAPは本物の現象」と朝日新聞の取材に答えている。騒動が収束する気配はない。
<自己愛が強く虚言癖のあるモンスター>と小保方さんを評し、「キュートさをフル稼働して地位を築いた」と報じるメディアもある。本題ともリンクするが、証言の集め方にバイアスが掛かっていれば、真実を見誤る可能性もある。
「灯台へ」(V・ウルフ)で疲れた脳を休めた後、「グロテスク」(桐野夏生)を読み始めた。主人公(わたし)と2人のモンスター――絶対的美貌を誇る妹ユリコ、東電OL殺人事件の被害者をモデルにした和恵――を巡る物語で、女性の内面を独白の形で抉っている。またも消化不良を起こしそうな長編だ。女同士の葛藤をベースにした点で同作に重なる「白ゆき姫殺人事件」(中村義洋監督)を見た。公開直後でもあり、ネタバレは最低限に記したい。
数カ所の刺し傷が残る無残な女性の焼死体が見つかった。被害者は化粧品会社OLの典子(菜々緒)で、回想シーンで頻繁に登場する。典子は「グロテスク」のユリコ同様、完璧な美貌の持ち主で、会社の商品(石鹸)にちなんで「白ゆき姫殺人事件」と命名される。ネットで犯人と名指された同僚の美姫(井上真央)は、「グロテスク」のわたしのように容貌は平凡だ。
事件を追うのがテレビ局ディレクターの赤星(綾野剛)だ。綾野は「LINK」(WOWOW、全5回)で、絶望の淵にいる人間を孤独から解放し、有機的に結び付けることを志向するショーンを演じていた。本作で演じた赤星は対照的にSNSに踊らされる。典子が元カノの里沙子(蓮佛美沙子)の先輩だったこともあり、赤星は係長(金子ノブアキ)らを取材して社内事情に詳しくなる。
ネットで<美姫犯人説>が暴走し始めると、誰しも〝結論〟に沿った証言しかしなくなる。事件後に姿を消したこともあり、美姫は小保方さん以上の四面楚歌状態に陥った。当ブログで<インターネットはタコツボ社会を生んだ>と繰り返し記しているが、今や多くの人々は二進法でしか考えられなくなっている。美姫は本当にモンスターなのか? 典子は果たして? 犯行の動機は? 本作は十進法的手法で時間を行き来しながら、真実に迫っていく。
見終えた後、ある妄想に耽っていた。超凡人たる俺が万が一、何か事件に関わったとしたら、数々の証言から〝モンスター〟になり得るだろうか……。人生の消しゴムが欲しいぐらい、俺は愚行と失敗を繰り返してきた。証言に基づいてすべてのピースを嵌め込んだら、<異常なモンスター>という名のジグソーパズルが完成するかもしれない。
谷村美月や貴地谷しほりが美姫に寄り添う友を演じ、生瀬勝久、染谷将太ら錚々たる面々が脇を固めている。同じく湊かなえ原作の「告白」ではレディオヘッドの「ラスト・フラワーズ」が効果的だったが、本作ではクラシックユニットのTSUKEMENが芹沢ブラザーズとして登場し、ストーリーにもしっかり絡んでいた。
STAP騒動、袴田さん釈放と本作を重ねることもできる。「クラウド 増殖する悪意」(森達也)は増殖した悪意が日本を覆っていることに警鐘を鳴らしていた。「白ゆき姫殺人事件」が秀逸なのは、優れたエンターテインメントでありながら、増殖した悪意を克服する道筋を示している点だ。ラストに温かいカタルシスが待ち受けている。
本日のテーマは、結果的に<女性>だった。最後に少女たちの闘い、桜花賞の予想を……。といっても、既にモンスターと認知されているハープスターが馬券から外れることはなさそうだ。大外⑱番も追い込み一手の同馬にとって都合がいい。⑩ヌーヴォレコルトとの馬連、⑩⑱2頭軸の3連単マルチを買う予定でいる。