酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

闘いを演じるアメリカ人~「スーパー・チューズデー」&「レッスルマニア」

2012-04-16 23:36:18 | カルチャー
 POG指名馬ディープブリランテは皐月賞で3着に終わった。「競馬予想TV!」でお馴染みの水上学氏は<欧州の重厚な血を受け継いでおり、スタミナは十分>とブリランテを評しているが、行きたがる気性が治まらない限り、ダービー制覇は難しそうだ。

 俺はこの間、原発再稼働に躍起の野田政権中枢を<国民の血を啜る狼>と断じてきたが、「集団自殺」発言から群れのボスが見えてきた。若かりし頃、法律家の卵として全共闘活動家の救援を担当していた仙谷政調会長代行である。初心や志は時とともに褪せるものだが、仙谷氏ほど腐らせた例は稀なはずだ。

 ファッショ的手法が目に余る橋下大阪市長だが、大飯再稼働を進める民主党を批判し、反・脱原発を総選挙の争点に据えると宣言した。再生可能エネルギーを志向する飯田哲也氏、「原発こそ公務員改革の本丸」と主張する古賀茂明氏をブレーンに迎えるなど態勢を固めている。原発コングロマリットに喧嘩を売るなら命懸けだ。橋下氏は覚悟を決めたのだろうか。

 ファジーを好む日本人と対照的に、闘いをエンターテインメントの域に引き上げたのがアメリカ人だ。新宿で先日、「スーパー・チューズデー~正義を売った日」(11年)を見た。アメリカ民主主義の虚妄、そして、平等、公正、公平といった理念が捻じ曲げられていく過程を、本作はリアルに描いている。真正リベラルのジョージ・クルーニーが監督だけでなく民主党大統領候補を目指すモリス知事を、ライアン・ゴズリングが辣腕の選挙参謀スティーヴンを、それぞれ演じている。

 海外派兵中止、格差是正、企業への増税、環境重視、同性婚の公認と、モリスのメッセージはクルーニー自身と重なる。スーパー・チューズデーを控え、モリス陣営の勢いに陰りが見え始めた。海千山千が蠢く世界でスティーヴンは致命的な失策を犯すが、鋭い刃で反転攻勢に出る。きっかけはモリスのスキャンダルだった。「ブルーバレンタイン」と「ドライヴ」で絶望、孤独、狂気を表現したゴズリングは、本作で冷酷さとしたたかさを併せ持つ青年を好演していた。

 続いて第28回「レッスルマニア」の感想を記したい。流れを毎週追っている俺にとって、釈然としない内容だった。

 90年代後半、映画「ウォリアーズ」を模した不良軍団、有色人種連合、風紀紊乱のDXといったユニットを送り出したWWEは、反体制的ムードとサブカルチャーの匂いを醸し出していた。RTCなど宗教保守を笑いものにするギミックだったが、ある時期から右に舵を切る。リンダ・マクマホン(元CEO)は一昨年秋、ティーパーティーの支持を得て、コネチカット州の上院議員選に共和党から出馬する(結果は落選)。

 上層部の覚えがいいベビーフェースのシナに異変が起きた。ファンなんて簡単にコントロールできると高を括っていたのだろうが、手を尽くしてもシナへのブーイングが収まらない。そのシナはメーンでロックと対戦し、ありえない、いや、あってはならない役割を演じさせられた。現役トップレスラーが8年も試合から遠ざかっていた俳優に負けるという結末は、プロレスの否定であり冒瀆と映る。

 茶番としか言いようのない世界王座戦に目を覆ったし、ファンから最も高い支持を得ているランディ・オートンの扱いも酷いの一語だ。〝世界最高のレスラー〟の資質を誇るアルベルト・デル・リオはストーリーラインから外され、試合巧者のクリスチャンも不可解な形で直前にリタイアする。CMパンクとジェリコのWWE王座戦がまずまずの内容だったことが救いだった。

 アンダーテイカーとトリプルHによるヘル・イン・セル戦は、壮大な叙事詩だった。特別レフェリーを務めたショーン・マイケルズを含め、入場から退場までレジェンド3人が葛藤と敬意を完璧に表現する。この<旧世代の最後の闘い>こそ、メーンに据えるべきだった。

 政治家もプロレスラーも、見えざる巨大な掌で踊っている。オバマも反抗できなかったし、日本の民主党も同様だ。勇気を持ってシナリオを逸脱すれば、どのような未来が待ち受けているのだろう。


コメント
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