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平成21年新司法試験合格発表

2009-09-11 21:45:48 | 弁理士
新司法試験、合格率27%=過去最低、初めて3割切る-合格者2043人・法務省
9月10日16時11分配信 時事通信
「法務省は10日、全国74校の法科大学院修了者を対象とした2009年の新司法試験の合格者を発表した。7392人の受験者のうち、合格者は2043人で、同省が今年の目安とした2500~2900人を大幅に下回った。合格率は27.6%で、過去最低だった前年の33.0%を下回り、初めて3割を切った。」

法務省が公表した新司法試験合格者の大学別統計(pdfを、例によって(昨年一昨年)エクセルファイルに組み替えてみました。以下に3年分を示します。
2009年エクセルファイル
2008年エクセルファイル
2007年エクセルファイル

このうち、2009年エクセルファイルは、5シートで構成されています。
第1~第3シートは、本年の結果について、法務省のpdfファイルから取り込み、合格者数の多い順に並べ替えたものです。
次の第4、第5シートは、複数年次の対比を行ったものです。
第4シート(3年間の比較)を見てください。
総合の合格率は、
平成19年 40.2%
平成20年 33.0%、
平成21年 27.6%
と一直線に下がり続けています。

次に第5シート(卒業年別・3年間の比較)に移りましょう。
法務省発表データには、法科大学院の卒業年次別のデータが入っています。このデータについて、3年間の対比をしました。タイトル行に「1年前」「2年前」等々の文字が入っています。これは、今年(平成21年試験)であれば、平成20年卒業を1年前、平成19年卒業を2年前と表示したものです。

「受験者数割合 %」に表示されている数値は、各年別に、合計受験者数に占める該当年次の受験者数の比率です。
「合格率 %」に表示されている数値は、各年別に、該当年次の人のみで算出した合格率です。
まず、「合格率」の数値について眺めると、一番合格率が高いのは「1年前」の人で、年次が古くなるほど合格率が低下していることがわかります。
そして「受験者数割合」の数値について眺めると、去年の試験に比較して今年の試験では、「3年前」の受験者数割合が大幅に増大しています。「2年前」の大部分は「2回目受験」、つまり去年不合格で再トライしている人ですから、合格率が低いのはある意味、やむを得ません。
合格率が低い古い年次の人の受験者数割合が増えているのですから、これがトータルの合格率の足を引っ張っていることは明らかです。

次に、去年(平成20年)と今年(平成21年)の比較において、トータル合格率(去年:33.0% → 今年:27.6%)という変化について、どの要因がどの程度影響しているのか、という点について大胆に推定してみました。
「1年前」の合格率は、去年の36.9%から今年の35.0%と1.9%下がっています。全体に占める「1年前」の受験者数割合は60%程度あるので、トータル合格率への影響は「1.9×60/100≒1%」ということで推定しました。
このようにして各要因別の寄与率を推定した結果が以下の数値です。

1年前 合格率  1.9%ダウン → トータル合格率 1%ダウン
同 受験者数割合 9.2%ダウン → トータル合格率 0.5%ダウン
2年前 合格率  4.2%ダウン → トータル合格率 1.2%ダウン
同 受験者数割合 2.1%ダウン → トータル合格率 0.2%アップ
3年前 合格率 15.2%ダウン → トータル合格率 0.8%ダウン
同 受験者数割合 9.5%アップ → トータル合格率 1.4%ダウン
4年前受験者数割合1.8%アップ → トータル合格率 0.3%ダウン

トータル合格率の各要素を合計すると5.0%となります。実際のトータル合格率ダウンは5.4%ですから、まあ、良い線を行っている推定といえましょうか。

まず、「1年前」と「2年前」の合格率ダウンを合計すると2%ちょっとです。
この部分が、純粋な「合格率ダウン」を抽出した結果となるように思います。やはり去年に比較して今年は合格率が落ちています。受験生のレベルが落ちたのか、それとも法務省がボーダーのレベルを引き上げたのか、その両方なのか、その点は分離できません。
「新司法試験合格者の実力レベルが低い」という世間の評価に押され、法務省がボーダーを引き上げた可能性はあるのでしょうか。

大きくトータル合格率の足を引っ張っているのは「3年前」です。
去年の「3年前」は既修者のみで、受験者数割合は5.2%しかおらず、合格率も30.6%と高い合格率でした。それが今年の「3年前」は、未修者も加わって受験者数割合は14.7%に跳ね上がり、そして合格率は15.4%と大きく沈み込みました。受験者数割合のアップと合格率ダウンの両方合計で、トータル合格率の実に2%超分、足を引っ張っています。

さて、新司法試験の受験者数は年々増加しています。3回まで受験できるその3回目まで行き渡っていないからです。そろそろ定常状態に落ち着くのでしょうか。今年は「4年前」の受験生が130人と少数でしたが、来年は増えるでしょう。そして合格率は低いでしょうから、やはり来年ぐらいまでは定常状態にならないですね。
定常状態となったところで、一体“真の合格率”はどの程度に落ち着くのでしょうか。ここで“真の合格率”とは、法科大学院を卒業して司法試験を受験した受験生一人あたりの合格率です。“みかけの合格率”は、一人が複数回(最大3回まで)受験しているので、“真の合格率”と対比して大幅に低い値となっています。
受験者数と合格者数が定常状態となったところで、1年間の合格者数を法科大学院の1学年の卒業者数(6千人弱と思われる)で割った数値が、“真の合格率”に近いはずです。
今年の合格者数が2043人ですから、来年も恐らく3千人までは増えなさそうです。そうすると、定常状態の“真の合格率”も50%には到達しないようですね。

つまり、法科大学院を卒業して司法試験合格を目指す人のうち、半分以上が夢破れて法曹以外の就職先を探すことになりそうです。

法科大学院を司る文部科学省と、司法試験を司る法務省は、一体どのようなグランドデザインを描いていくのでしょうか。

p.s. 9/19 2009年エクセルファイルを一部修正し、第4、第5シートに平成18年のデータを追加しました。
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