弁理士の日々

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上杉隆「官邸崩壊」

2009-09-08 20:17:06 | 歴史・社会
上杉隆氏の最近の著書「民主党政権は日本をどう変えるのか (家族で読める family book series 004) (家族で読めるfamily book series―たちまちわかる最新時事解説)」について、8月26日に記事にしました。

上杉氏の著作の中に
官邸崩壊 安倍政権迷走の一年
上杉 隆
新潮社

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があるのですが、文庫本が出版されません。例によって図書館で借りて読んでみました。

安倍政権の1年間について、首相官邸にスポットを当てて描いた本です。

2006年9月に成立した安倍政権は、当初支持率70%を誇りました。
しかし、支持率の凋落はあっという間でした。
郵政造反議員の復党問題から始まり、不祥事による閣僚や主要ポストの辞任・自殺は5人(本間正明税調会長、佐田玄一郎行革担当大臣、松岡利勝農水大臣、久間章生防衛大臣、赤城徳彦農水大臣)に及びます。
さらに、米下院での従軍慰安婦問題に対する安倍首相の不用意発言、消えた年金記録問題に見舞われます。一方で国会では、衆議院本会議で14回、両院の委員会まで含めて70回以上に及ぶ強行採決を敢行しました。
内閣支持率は20%台まで落ち込み、参議院選挙で自民党は大敗を喫します。

一体、安倍政権はなぜこんな凋落の道を辿ったのか。

上杉氏著書の題名にあるように、首相官邸に大きな問題があったようです。
「フールファイブ(ウィキ)」という言われ方をしていたのですね。安倍官邸の以下の5人を指しています。
内閣官房長官 塩崎恭久(衆院議員)
内閣官房副長官(政務)下村博文(衆院議員)
内閣官房副長官(事務)的場順三
内閣総理大臣補佐官(広報担当)世耕弘成(参院議員)NTT広報から政界入り。
内閣総理大臣秘書官 井上義行
上杉氏著書でも、これら5人は頻繁に登場します。

《内閣官房副長官(事務)的場順三》当時72歳、大和総研理事長から安倍官邸に入る。元大蔵官僚。
『事務担当の官房副長官職は「事務次官の中の事務次官」といわれるように、官僚にとって最高のポストだ。安倍はこの官僚の中の官僚ポストに手を突っ込んだ。
なぜ安倍は事務副長官の人事に手を突っ込んだのか。正気の沙汰ではない。霞が関全体に対する宣戦布告か。これで役所は動かなくなるだろう。
早速、役人のサボタージュが始まる。事務副長官である的場が仕切る事務次官会議で重要な情報が話し合われることがめっきり減る。


《内閣総理大臣秘書官 井上義行》
井上氏は、旧国鉄民営化時のリストラで内閣府職員となり、安倍官房長官時代に安倍秘書官に抜擢されました。そして安倍官邸では最も安倍からの信頼の篤い人物です。安倍事務所入りが遅かったにもかかわらず、先輩秘書を抑えて首相秘書官の座を獲得しました。

《内閣官房長官 塩崎恭久》
塩崎氏は、安倍氏と同様、父議員の秘書官を務め、世襲で議員になり、安倍氏にとっては盟友でした。安倍総理はその塩崎氏を官房長官にすえます。
塩崎氏は政策論争が得意であり、政策論争において他に妥協することがありません。調整能力が待たれる官房長官という役職にあって、政策能力を誇示する人物でした。政治記者たちは塩崎の官房長官就任で、「これで官邸は機能しないだろう。」と警告が発せられます。

これらの人たちは、力を合わせて首相を補佐するどころかその反対で、お互いに反目しあって協力せず、功を競っていたようです。黒子に徹するのではなく、目立ちたがり屋たちでした。

《首相直属政策スタッフの公募》
「役所と縁を切る覚悟で政権に参画する者を求む」とのうたい文句です。しかし役人は巧妙に「役所を通して応募」との条件を紛れ込ませます。この点は高橋洋一著「さらば財務省!」で明かされていました。
「結局10人が採用される。だが、本当にヒモ付きではない、つまり出身母体である役所の“選別”を受けていないのは、内閣府から応募した高橋洋一(財務省出身)ただ一人であった。」
高橋氏は、財務省からは取り次ぎを断られ、やむなく竹中平蔵大臣を直接経由して応募したのです(前掲書から)。
「特命チーム」の公募は、安倍首相が自ら人選することを放棄している、公募という形で自らその権力を放棄している、という印象を与えてしまいました。

以下次号
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