弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

藤原てい「旅路」(2)

2009-08-02 19:13:07 | 歴史・社会
藤原てい著「旅路 (中公文庫)」について先日報告しました。
今回は、そこで言い足りなかったことについて補足します。

ていさんの子育ては、厳しかったようです。甘えを許さず、常に突き放したように接して自立を促しました。
お小遣いも周囲と比較して非常に少なく、20歳を超えたらお小遣いをゼロにしてしまいました。20歳を過ぎた大学生の3人の子供たちは、アルバイトをしながら必死で日々暮らしたようです。次男が交通違反で罰金を取られたときも、その金額を与えることをせず、次男はやむなく家庭教師先に事情を言って前借りしたのでした。

この子育ては正しいのですが、まわりがすべて子供を甘やかす子育てを行っている中、わが家だけが厳しい子育てをすると、子供達から見たときにそれは“いじめ”に等しくなるのですね。
3人目のお子さんである咲子さんが「母への詫び状 - 新田次郎、藤原ていの娘に生まれて」という本を出しています。私は読んでいないのですが、読後評によると「自分は母から愛されていないのではと思い悩む」と書かれているようです。それも、ていさんの子育て方針によるものだったかもしれません。

わが家でも、子供にはハングリーな生活をさせたいと思いつつ、周りの家庭とのバランスで極端なことはできませんでした。ただし、ファミコンをはじめとしてゲーム機は買い与えませんでした。「わが家ではゲーム機を買ってもらえない」ということで、この点については子供たちも諦めていたようです。

ヨーロッパのそれなりのレベルにある家庭では、“子供はハングリーに育てるべきである”、“一人前になる前の子供には厳しい生活の制約を課すべきである”という共通認識ができているのではないかと推定します。
それに対して日本では、つい最近まで国全体が貧乏だったこともあり、“生活に余裕ができたらその分は子供に還元してやる”というスタンスが存在し、国全体が裕福になってもそのスタンスがそのまま維持されているように思います。現在ではそれが「子供の甘やかし」となっているのでしょう。
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1 コメント

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未来は苦労を求めていない (星海風太)
2009-08-03 11:22:41
こんにちわ!藤原ていさんの本は未読ですが、彼女でさえ幸運に恵まれていたのでしょう。満州や朝鮮半島から引き揚げできずに死んだ日本人は、数万人以上に及ぶと聞いていますから。体験は、人格を作る一要素になる気がします。当時の命からがらの脱出経験から、自分の子供達への教育が、非常にタフになることは理解できます。映画「シンドラーのリスト」で監督スティーヴン・スピルバーグが描いた収容所の真実の部分は、「決して忘れない」という決意を示した作品でした。一人のポーランド人ビジネスマンが、多数のユダヤ人の命を助ける実話には、ラストの映像に希望があります。ていさんの人生に重なるストーリーですね。被害者と加害者。占領国と被占領国。経済大国と貧困国。自分が苦労したのだから、お前達は苦労が足りないとか、苦労したものだけが幸せになれるとかを説教する世代は、戦時中の激流の時代を生きた人々です。悲惨な体験を伝えながらも、自分の子供達には豊かな人生を送らせたいと、世界中のどの親でも大抵考えるでしょう。世界的な大富豪のビル・ゲイツ。金持ちの両親に育てられたお坊っちゃんは、19歳で起業。“苦労”はしていません。死ぬほど激しく、仕事を楽しんだ異才です。
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