弁理士の日々

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日米共同声明 真相深層

2021-04-25 15:17:04 | 歴史・社会
日経新聞4月23日第2面に以下の記事が掲載されました。
「日米共同声明、52年ぶり台湾言及 真相深層」
「中国寄りの印象払拭」「首相、軍事バランス懸念共有」(重田俊介)
『菅義偉首相は16日の売電米大統領との首脳会談で日本の防衛力強化への決意に加え、中国が敏感に反応する「台湾海峡の清和と安定の重要性」にも踏み込んだ。』
『16日午後、ホワイトは数の大統領執務室で開いた首脳会談の少人数会合、首相が「日本は防衛力を強化ずく必要がある」と切り出すと、両首脳の話題は東アジアの軍事バランスへと移った。』

こうして、日米首脳制限の骨格である
日本は同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意した。』
『日米両国は、困難を増す安全保障環境に即して、抑止力及び対処力を強化すること、サイバー及び宇宙を含む全ての領域を横断する防衛協力を深化させること、そして、拡大抑止を強化することコミットした。』
『日米両国はまた、地域の平和及び安定を維持するための抑止の重要性も認識する。』
『日米両国は、東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する。日米両国は、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明するとともに、国際法により律せられ、国連海洋法条約に合致した形で航行及び上空飛行の自由が保証される、自由で開かれた南シナ海における強固な共通の利益を再確認した。日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。』
ができあがっていったのですね。

23日日経記事に戻ります。
『実は日本側には首脳会談に臨むにあたって懸念があった。少人数会合に出席していた米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるキャンベル氏。首脳会談の直前に来日し、台湾問題で日本側により踏み込んだ対応を迫っていた。・・・日本側が水面下で難色を示すと、米欧メディアは日本側が台湾問題への言及に慎重だと報じた。』
『「中国と距離が近いと思われていますよ。少なくとも米国はそうみています。」首相は会談前に会った首相経験者の一人からこう言われ「そんなふうに見られているんですか」と聞き返した。
そのときから首相の周辺では、中国寄りとのイメージ払拭が訪米の隠れたテーマとなった。』

日経記事に関して、以下のネット記事を読みました。
「中国と距離が近いと思われていますよ」麻生副総理が菅首相に告げた「ある助言」
日米共同声明の舞台裏 歳川 隆雄

とにかく見せ場を作れ」菅首相の初訪米、その異様な舞台裏
頭にあるのはパフォーマンスばかり 戸坂 弘毅

「首相経験者の一人」とは、麻生さんだそうです。
こんなことから、日米首脳共同宣言の骨格が定まっていったということでしょうか。日本の近未来を方向付ける外交方針に関して、このように安直に定まっていったとすると、恐ろしさを感じます。

米側では8日に厳しい対中制裁を求める「戦略的競争法案」を発表した米上院外交委員会(ボブ・メネンデス委員長=民主党)スタッフら米議会関係者も菅氏の台湾問題対応を高く評価しているそうです。(歳川 隆雄)

一方で日米共同声明に「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。」と記述し、「平和的解決」という文言が入ったことで中国側にとっても予想外のマイルドな批判に収まったことになり、中国からの極端な反発を招くこともなかったということのようです。
『菅氏が首脳会談を終えた直後から上機嫌であったことに象徴されるように首相訪米を「成功裡に終えた」と言い募ることが出来たのだ。』(戸坂 弘毅)

菅総理は、「今回の日米首脳会談で、アメリカにも中国にもいい顔ができた」と上機嫌かも知れませんが、それは一時だけのことです。
前回の私のブログ記事にも書いたように、今回の日米首脳共同宣言の趣旨は、「中国が台湾に軍事侵攻するようなことがあれば、日米両国には覚悟があるぞ」と言っているように受け取れます。「覚悟」とは、「中国が台湾に軍事侵攻するようなことがあれば、米国は軍事力で体を張って台湾を防衛し、日本は憲法の許す範囲内で軍事協力する」ということになります。
中国が武力侵攻の兆候を見せない限り、具体的には何も変わらないのですから、中国が直ちに強硬にならなくても頷けます。しかし、「中国の態度次第で日本には覚悟がある」と述べ、それが「言うだけ番長」に成り下がらないためには、「中国」対「日米台連合軍」武力衝突に対応できる軍備を早急に準備しなければなりません。その準備開始が中国に知られるや、日中間は大変なことになるでしょう。経済制裁が極大化することは覚悟しなければなりません。
菅総理にそれだけの覚悟があるのか、また、日本国民にその覚悟を促す発信をする気があるのか、注視したいと思います。
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