弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

牧野洋「官報複合体」

2012-08-14 20:04:18 | 歴史・社会
官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪
クリエーター情報なし
講談社


日本の報道・ジャーナリズムが「権力の監視」機能を発揮していない理由は、大きく次の2点に集約されると言います。
○ 記者クラブ制度
○ 特ダネ至上主義
ここでいう特ダネとは、
①その報道がなければ世の中に知られることがなかったような特ダネ
②明日公表されるニュースを今日独占して報道するような特ダネ
の2種類がありますが、数量的には②が多数を占めます。

記者クラブ制度と特ダネ至上主義の弊害として、日本のマスコミは、官僚による発表を忠実に報道すること、及び、官僚に取り入って自分にだけリークしてもらい特ダネ②をものにすること、に堕してしまい、権力の監視をすることができません。

以上について、今まで2冊の書籍から知識を得ていました。
日本国の正体 政治家・官僚・メディア――本当の権力者は誰か (現代プレミアブック)」(長谷川幸洋「日本国の正体」で紹介)
ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書)」(上杉隆「ジャーナリズム崩壊」で紹介)

今回読んだ上記書籍「官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪」は、同じ日本のジャーナリズムについて論じた3冊目の本です。

「官報複合体」で描かれた日本のジャーナリズムの根本的な問題点については、すでに読んだ「日本国の正体」と「ジャーナリズム崩壊」と基本的に同一ではありました。「日本国の正体」と「ジャーナリズム崩壊」をまだ読んでいない人にとっては、「官報複合体」は日本のジャーナリズムの問題を全体として俯瞰する上で好適でしょう。

すでに日本のジャーナリズムの基本的問題点を把握した人にとっても、「官報複合体」はおもしろい具体例をこれでもかと記述してありますので、それら事例をリファーする上での好適な書といえましょう。

おもしろかった具体例を以下に記述しておきます。
○ ニューヨークタイムズが、内部告発をもとにして、ペンタゴンペーパー(ベトナム戦争機密文書)を公表した事件

○ 半世紀前に存在したデトロイトの自動車記者クラブ(オフレコクラブ)と、そこを脱会して躍進したウォールストリートジャーナル

○ アメリカのジャーナリズムでは、学校について記事にするなら当事者である子どもに取材することが必須。一方日本では、子どもに取材した部分がカットされて記事になった。

○ ウォールストリートジャーナルの記者であるウォルト・モスバーグは、安全保障問題のスター記者から、「パーソナルテクノージー」と名付けたITコラムニストに転身してそちらでもスターコラムニストになった。

○ ロサンゼルスタイムスは、トヨタのリコール問題で、膨大な公開情報を調査して独自の調査報道を行った。

○ 1970年代前半にウォーターゲート事件の全貌を暴いたワシントンポストの特報

○ CIAがテロ容疑者を拘束するために世界各地に設置した秘密収容所(ブラックサイト)を暴露したワシントンポストの女性記者ディナ・プリースト

○ アメリカの調査報道NPOは、寄付で成り立っている

○ 反戦ヒーロー、イラク帰還兵が語った報道がウソであるとわかったが、それは実名報道だったから。日本の新聞では匿名報道がまかり通っている。
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