弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

良い族議員・悪い族議員

2009-12-22 20:54:58 | 歴史・社会
私は「族議員」という単語を初めて聞いたとき、以下のようなイメージが湧きました。
「国会議員が、特定の、例えば防衛関係について深い知識を蓄え、その知識を用いて日本の防衛方針の策定と推進に役立てることはきわめて有益である。そのような能力を有し、国民のために働く国会議員を“防衛族”と呼ぶのだろうか。」(以下“良い族議員”)

ところが実態は大違いでした。
族議員とは「ある特定の官庁と結託し、その官庁の利益と自分の利益を誘導するように画策する国会議員」のことを指すようです。(以下“悪い族議員”)

手許に「丸三レポート 2009年11月」という冊子があり、その巻末に「縦横無尽」という記事が載っています。金子太郎さんという経済評論家が執筆しているものです。もと大蔵官僚だったようです。
「昭和30年代は、今から思えば役人天国であった。絶対的権力を行使していた占領軍は去り、国会議員は田中角栄さんのような異能者を除けば、役人の保有する権限を予算編成に結びつける道を、ほとんど知らなかった。
・・
だから国の予算編成に従事した人間は、国益を重視し、日本が欧米の先進国に1日でも早く追いつくように、必死になって働いた。
昭和30年代の初めに、予算総額を3年間も1兆円以内にすることができたなんて、今から考えると奇跡に近い。
それが東京オリンピックの頃から一変した。いわゆる族議員の誕生であり、族議員を動かすことのできる利益団体の続出だ。こんな予算の編成をやらされるなら、役人を辞めようかと思ったことが何回もあった。
その体制が今夏の総選挙で自民党が惨敗した結果、多くの族議員が落選して一挙に崩壊した。経済団体も自民党や族議員への献金や自民党のための票集めをやめる気配だ。
いま半世紀振りに経済界と政界・官界との癒着を一掃するチャンスが到来した。民主党は、経済団体、なかでも利益・圧力票集め団体が民主党や民主党議員に食いこもうとしているのを、何としても防いでほしい。
・・・
族議員の圧力で無理矢理成立させた予算の総額は、数兆円にとどまらないだろう。」

今までは「悪い族議員」が跋扈していたのですね。政権交代で、その弊害を一掃するチャンスが生まれました。
先日の「事業仕分け」など、自民党政権だったら族議員がよってたかって押しつぶし、実現不可能だったでしょう。


ところで、「悪い族議員」を一掃すべきことはわかりますが、本来国会議員は「良い族議員」となって国政を推進すべきものと考えます。
ところが民主党連立政権は、「悪い族議員」を撲滅することに急であるあまり、「良い族議員」まで殺してしまってはいないでしょうか。

12月7日に東京でアフガン国際会議で紹介したように、アフガニスタンにおける国民和解と和平の道筋を探る国際会議(主催・世界宗教者平和会議、協力・外務省)が23日から3日間の日程で東京で開かれました。そして25日、「アフガン和平構築で日本は中心的役割を果たすべきだ」などとする提言書をまとめ、岡田克也外相に手渡しました。

このような会議が日本で開催されたのは、犬塚直史参院議員(民主党国際局次長)、伊勢崎賢治東京外大大学院教授(元アフガン武装解除日本政府特別代表)の力に依るようです。お二人は今年の8月から、この会議開催に尽力していました。実に政権交代前からです。
この意味で、民主党の犬塚議員は、“良い外交族議員”ということになると思います。
アフガニスタンでの日本の活動を本格化させるため、犬塚議員が岡田外相と結束して強力に活動すべき時期に来ています。

ところが、民主党あるいは鳩山連立政権の方から眺めると、犬塚議員の働きがまったく顕在化しません。
ひょっとすると、「各官庁の大臣以下三役を除いて、議員は官庁に接触してはならない」との禁則が成り立っているのでしょうか。そうとすると、“良い族議員”が国政のために働く場がきわめて制約されてしまうこととなります。
せっかく東京で開催された「アフガン国際会議」で日本が果たすべき役割が明らかになったのに、その中心となるべき犬塚議員に足かせがはめられているようなものです。

犬塚議員のサイトには以下の記事が掲載されています。

アフガン国際円卓会議が閉幕:日本が果たすべき役割を再確認
共同が第二次アフガン調査について記事を掲載
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6 コメント

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ニュースウイークの記事 (snowbees)
2009-12-23 12:40:47
snowbeesコメント:日本は、アフガンとの間に、中長期的にも、公式、非公式な交渉ルートを開拓、維持すべきと思う。犬塚議員は、その意味で、バイ・カルチャーを体現する貴重な存在ですね。

>今回の会議は提言をまとめて閉幕。日本の岡田克也外相はこの提言をもとに日本政府の今後のアフガニスタン支援策を練ることになる。

 インド洋での給油活動を延長しないと決めた民主党政権は、代わりに最大50億ドルの民生支援を約束。アフガニスタン支援における新しい役割を模索している。タリバンとアフガニスタン政府の和解交渉を主導すれば、これまでアメリカの外交政策に追従してきた日本の外交政策から脱却し、民主党が新しい個性を打ち出したといえるだろう。民主党はアメリカとの同盟関係において、より独立した「対等」の立場を求めている。

 今回まとめられた提言では、日本の果たすべき役割について以下のように書かれている。「アフガニスタンおよびその近隣国において日本が高い評価を得ているという現実をふまえ、日本が他の主要ドナー国とともに、アフガニスタン政府が主導する平和と和解に関するプログラムを支援する中心的役割を果たすことを強く期待する」

http://newsweekjapan.jp/stories/world/2009/11/post-763.php
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アフガンと民主党政権 (ボンゴレ)
2009-12-23 13:51:38
snowbeesさん、コメントおよびニューズウィーク誌のご紹介、ありがとうございました。

民主党連立政権が、アフガンでの和解と和平に向けて主体的な取り組みを開始できれば、こんなに素晴らしいことはありません。そしてそのお膳立ては整いました。

後は岡田外相がその気になり、犬塚議員と伊勢崎賢治氏を全権団に任命すれば始まるのですが、どうもそこが動き出すかどうか心配です。

最近の岡田外相は普天間問題で頭が真っ白になっている可能性がありますからね。
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成長戦略は政府が作るのか? (snowbees)
2009-12-23 20:48:14
1)新聞(朝日と日経など)を見ていると、政府は成長戦略を示すべきだ」と喚いているが、冷静に考えると、これは、シンクタンクやエコノミストなどの仕事ではないか?たとえば、オバマ政権では、民主党系シンクタンクが「グリーン・ディール」などを早くから提案している。企業や産業界では、個別に成長戦略を立案、実行しており、政府は、それを支援、推進するフレームワークや制度設計するのがスジと思う。ボンゴレさんの意見は?
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承前 (snowbees)
2009-12-23 20:52:25
アメリカ企業は、GEなど個別にグリーン戦略を発表し、実施しており、日本も同様である。
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政府が示すべき成長戦略 (ボンゴレ)
2009-12-27 19:45:31
snowbeesさん、こんにちは。

今ここで話題にする「成長戦略」は、最終的には立法や国家予算化することで推進するような成長戦略であると考えます。

1.学者、シンクタンク、評論家、ジャーナリストが自分の信ずる方策を種々のメディアで公表するわけですが、最終的には、立法化され、予算化されてはじめて動き出します。そして立法提案と予算を政府が握っている以上、政府が政策を採用しなければはじまらないわけで、やはり「民主党政権の成長戦略」として具現化することが必須です。

2.政権は、種々のシンクタンクや学者と緊密に連絡を取り、彼らの進言に耳を傾けた上で政権の成長戦略を構築すべきです。鳩山政権も、ぜひ有効な連繋を実現してほしいものです。

3.日本における最強のシンクタンクは、霞が関であろうと考えます。非公開のデータを一手に握り、偏差値秀才を大量に抱えた機関です。そしてこのシンクタンクを活用できるのは、現政権のみです。現政権は、この霞が関という最強のシンクタンクを有効活用するよう、最大限の努力をしなければなりません。

まずは、以上のように考えます。
その上で大手新聞の果たすべき役割です。
私も、大手新聞は自分の意見を述べなさすぎると感じています。
しかしこの点は、現在の大手新聞が記者クラブ制度によって霞が関に頭が上がらないようになっている限り、望んでも致し方ないでしょう。

以前私は、そのような政策提言を月刊誌に頼っていました。文藝春秋などです。ところがその月刊誌がここしばらくずっと、面白い記事を書かなくなっていました。月刊現代も休刊となり、寂れる一方です。

企業や産業界が、立法や国家予算化を伴わないでも実施できる成長戦略を実践すべき点はその通りです。
また、企業や産業界が、政府の成長戦略を献策することもどんどんやるべきです。政府がとれだけ聞く耳を持つかが大事だとは思いますが。

最近では、勝間和代さんが菅直人大臣に献策したデフレ対策がひょっとすると奏功したかも知れません。
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朝日新聞・大鹿記者の談話 (snowbees)
2009-12-27 21:31:52

>大鹿さんは現在も現役で記事を書かれていらっしゃいますよね。

大鹿 私は現在44歳ですが、万年ヒラ記者です(笑)。ただ、同期前後を見ると、40代でマネージメント側に回る人間がほとんどです。そうなるとやはり、その上役の顔色を見て仕事をするしかなくなってしまう。
 もともと、弊社は東大出身者の比率が高い。社内調整は非常にうまいけれど、コンテンツを作ったり編集したりするのが苦手な人が多いんです。会議で立派なことを言っても記事が書けなかったり、新聞評論はできても取材ができなかったりする受験エリート出身の人が多いんです。
 入社したときから、そうした違和感はありました。社内で浮いているのであまり社内の人間と飲みに行くことはないんですが、送別会などで、先輩方と飲みに行くと、決まって話題の80%~90%は社内の組織や人事の話ですから。
http://blog.livedoor.jp/ld_10th/archives/51350655.html
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