弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

尖閣問題はどうなる?

2010-09-27 20:51:41 | 歴史・社会
尖閣諸島をめぐる今回の騒動、結末(まだ終わっていませんが)は何とも後味の悪いものでした。
結果として中国の恫喝に屈するような形で中国漁船船長を釈放しましたが、その後中国は謝罪と賠償を要求し、一方で拘束した日本人4人を釈放する気配は見せず、嵩に懸かってきているようです。

ここで事件をふり返ってみれば、初動の段階で船長の逮捕に踏み切らないか、逮捕したとしても勾留延長をせずに強制送還することが賢明な策だったのでしょうね。しかし逮捕せずに強制送還すれば、逆に政府は弱腰と攻められていたでしょうから、よっぽど事情を承知して覚悟をもった政治家でなければ決断できなかったかもしれませんが。

また、釈放後に官邸は釈放の決断が検察の判断であると繰り返し強調していますが、これも卑怯なやり方です。日中の関係に配慮しての決定ですから、あくまで政府がその責任を負うべきです。それで「司法の独立がおかされた」と文句が出るなら言わせておけばいいのです。

以下エスカレーションは止まるのか? 「尖閣諸島漁船衝突」突如、船長を釈放した日・中それぞれの事情(2010年09月25日(土) 歳川 隆雄)を参考にします。
過去をふり返ると、小泉純一郎政権下の04年3月に中国人活動家7人が尖閣諸島に上陸を強行・逮捕されましたが、当時、靖国神社公式参拝で中国側と冷却関係にあった小泉首相は高度な政治判断によって拘留することなく強制送還処分としたという前例があったといいます。
今回の日本政府の対応は、9月7日午前9時過ぎに衝突事件発生から12時間経ってから海上保安庁が同船長逮捕を決定したことから、その間に当時の岡田克也外相(現民主党幹事長)の判断を仰いだうえでのことだったと推定されています。中国の置かれている政治状況を考えれば、外相判断ではなく、首相判断で決定すべきだったでしょう。大事なところで管首相は閣僚任せにしてしまいました。その後膠着状況に陥ってから管首相はイラ管になってしまったようですが、時すでに遅しです。
またそのときの岡田外相は、外務官僚からどのような献策を受けていたのでしょうか。事なかれ主義を採るチャイナスクール官僚の声を割り引いて考えるにしても、信頼の置ける官僚から適切な助言を受けなかったら、対中国で国益を毀損することなく適切な対応ができるはずがありません。岡田外相は外務官僚と信頼関係を結べていなかったのでしょうか。

中国の国内状況についてみれば、胡錦涛国家主席、温家宝首相の主導により習近平副主席への権力譲渡が既定路線だとみられていましたが、ここにきて対抗馬と目される李克強政治局上級委員・副首相側が巻き返しており、さらに江沢民元国家主席ら保守派が対日、対米外交が弱腰だと責め立てる可能性もありました。かつて胡耀邦総書記が対日政策が融和的だとして失脚した例もあります。
胡錦涛、温家宝も、今回の事件ではこうした党内のバランスに配慮して、日本に強硬的な姿勢で臨まざるをえない状況にあったのでしょう。そのような中国の国内事情を、民主党政権は読み違えたと言うことでしょうか。

あの小泉政権ですら、尖閣に上陸して逮捕された中国人を拘留することなく強制送還しました。中国政府は今回もそのような処分であろうと考えていたところが、逮捕され勾留延長され、中国政府は完全にメンツを潰された形となり、強硬な中国世論の攻撃をかわすためには強硬姿勢を取らざるを得ませんでした。

日本側がした勾留延長の理由もよくわかりません。ニュースによると「船長が否認したので自動的に勾留延長」であったようですが、何でそのような杓子定規になるのでしょうか。検察は杓子定規、政府は検察任せということで、「勾留を延長せずに強制送還」というチャンスをみすみす逃すこととなりました。

鳩山前首相がまた余計なことを言っていますね。「私だったら事件直後に、この問題をどうすべきか中国の温家宝首相と腹を割って話し合えた」ですか。そう思うのなら、事件勃発直後に鳩山氏から管総理に申し入れをすべきでした。しかしその当時は民主党代表選の真っ最中でした。管氏も鳩山氏もそれどころではなく、岡田外相に任せきりだったのでしょうね。
また鳩山氏は首相時代の今年5月27日、全国知事会で「(尖閣諸島の)帰属問題は日中当事者同士で議論して結論を出す、と私は理解をしている」と発言したそうですね。全く大変な人を首相に戴いていたものです。

小沢一郎氏はどうなのでしょうか。
ほんの1年にもならない前にチルドレン約140名と後援者合わせて数百名を連れて訪中した小沢氏です。また宮内庁にゴリ押ししてルール違反の中国要人面会を実現しました。中国首脳と太いパイプを持っていたはずではないですか。①実はパイプは存在しなかった、②パイプはあるが代表戦の遺恨で今回は封印した、のいずれであるにせよ、小沢氏にはがっかりです。

今回の騒動を見ていると、中国というのはやくざのようなもので、メンツを潰されたらどんな暴力行為に出てくるか予想がつきません。それに対して日本は暴力に弱い平和国家ですから、暴力で来られたらお手上げです。うまくつき合うしかありません。
とにかく、民主党政権は今回の件で肝に銘じたでしょうから、これからは外交の感度を高めて国益を損なわないように振る舞ってほしいものです。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2010年・鳥人間コンテスト | トップ | 尖閣問題~初動のいきさつ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

歴史・社会」カテゴリの最新記事