弁理士の日々

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小熊英二著「〈民主〉と〈愛国〉」

2014-02-04 20:27:09 | 歴史・社会
〈民主〉と〈愛国〉―戦後日本のナショナリズムと公共性
小熊英二
新曜社
この本が役に立つとの書評をどこかで読んだことから、図書館で借りてみました。
そうしたところ、実に966ページという大著でした。図書館の貸出期間を合計1ヶ月に延長したとはいうものの、とても読み切れるものではありませんでした。特に私の読書時間は通勤途中の電車の中であり、こんな分厚い本を常に持ち歩くことも苦痛であったことから、ほんのわずかしか読むことができませんでした。
しかし、取りあえずは借りて、わずかではあるが読んだことを記憶にとどめておくため、ここに記録しておきます。

2002年10月31日発行
著者の小熊英二氏は、巻末の紹介によると、
1952年生まれ、1987年東京大学農学部卒業。出版社勤務を経て、1998年東京大学教養学部博士課程修了。現在、慶應義塾大学総合政策学部教員。

《序章》から
『本書の主題は、「戦後」におけるナショナリズムや「公」にかんする言説を検証し、その変遷過程を明らかにすることである。』

『本書で「戦後思想」と述べているものは、戦争体験をもつ「戦後知識人」から生み出された思想である。本書の検証で明らかになるように、「戦後思想」とは、戦争と敗戦の体験をいかに言語化し、思想化するかの営為だったといっても過言ではない。したがって戦争体験を持たない知識人とその思想は、本書でいう「戦後知識人」「戦後思想」に入らない。』
『「戦後思想」とは、戦争体験の思想化であった。にもかかわらず、これまで戦後思想研究の大部分は、知識人たちの戦争と敗戦の体験がいかなるものであったのか、そしてそれが戦後思想にどんな影響をもたらしかについて、十分な検証を行ってこなかった。本書は各章の検証において、この点を重視している。それは結果として、「『日本人』にとって戦争とは何であったのか」という問題、そして「戦争の記憶とはいかなる影響を人間に及ぼすものなのか」という問題を、思想という観点から明らかにする作業となろう。
 本書のめざすところは、こうした「戦後思想」の姿をよみがえらせ、その継承すべき点を評価するとともに、その限界と拘束を越えることである。』

《あとがき》から
『本書は、戦後日本のナショナリズムと「公」にかかわる言説が、敗戦直後から1970年代初頭までに、いかに変遷してきたかを検証したものである。結果として本書は、丸山眞男・大塚久雄・竹内好・吉本隆明・江藤淳・鶴見俊輔など主だった戦後知識人の思想を検証したばかりでなく、憲法や講和問題、戦後歴史学、戦後教育、安保闘争、全共闘運動といった領域までをも視野に含めるものになった。』

わずかばかり読んだところでは、戦争帰りの知識人たちの著作を、実に詳細にピックアップして論証していました。「誰が何を言ったか、その背景は何だったか」を検証しようとするとき、実に有益なリファランスになるだろうと思いました。
この著作の内容を少しでも自分のものとするためには、6615円をはたいて蔵書に加えるべきでしょう。いつかは。
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