弁理士の日々

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郵政はどこへ行く?

2010-04-06 21:36:05 | 歴史・社会
民主・国民・社民連立政権による郵政民営化の見直しについては、ゆうちょ銀行はどこへ行く郵政民営化見直しなどで去年までは何回か取り上げました。最近も亀井大臣が大暴れしていますが、どうも新たな記事にする気力が湧きません。取り敢えず感じていることを書いてみます。

最近大騒ぎしたのは、郵便貯金の預入限度額の増額についてです。しかし預入限度額は、政令マターであって法改正は必要ないので、今決める必要はありません。今は郵政改革法を議論すべき時です。なぜ、預入限度額がこの段階で取り上げられたのでしょうか。

預入限度額の増額を強硬に主張しているのは、日本郵政社長の斉藤次郎氏です。郵政民営化見直しでも書きました。その斉藤社長の要望を国民新党と亀井郵政担当大臣が取り上げ、閣僚内に反対がある中、鳩山裁定で強行突破してしまったわけです。

亀井大臣はなぜ、このような腕力を使ってまで斉藤社長の要望を実現したのか。

実は国民新党は、斉藤社長率いる日本郵政に大変な圧力をかけているというのです。

現代ビジネス町田徹「ニュースの深層」から「国民新党が舞台裏で進める 「日本郵政の集票マシン化」 日本郵政につきつけた「要望書」を入手」を読みました。
『まず、筆者の手元にある「日本郵政グループの運営に関する改善要望」というタイトルが付いたレターをご紹介したい。このレターは、国民新党が3月4日付で日本郵政に突きつけたものである。
そこには、「生き生きとした郵便局の一日も早い復活を望む全国有権者の声を踏まえ、改めて下記のとおり要望します」と前置きしたうえで、「直ちに実施していただきたい事項」として8項目の要求が、また「引続き検討していただきたい事項」として別の9項目の要求が書き連ねられている。』
「直ちに実施していただきたい事項」の8項目は以下の通りです。
(1) 非正規職員の正規化、
(2) 物品の地元調達、
(3) 旧普通局、旧集配特定局における郵便局会社、郵便事業会社、郵貯銀行、かんぽ生命各社間の間仕切りの撤去及び局合施設の一体的利用、
(4) 郵便局の監視用カメラの運用停止及び転用、
(5) 7万ベージに及ぶ郵便局取扱マニュアルの抜本的簡素化、
(6) 検査・監査による郵便局負担の大幅改善(回数、重複、取調的姿勢等)及び検査・監査部門の人員削減、
(7) 郵便局における営業体制の整備(局長の局外活動、社員訓練、営業経費、地域特性に応じた商品開発)、
(8) 郵便局長の各種資格取得の軽減

上記8項目を観ると、全国の郵便局長や郵便局員は大喜びするが、日本郵政という会社に大きな負担となる項目が並んでいます。

『これでは、日本郵政グループは、連立与党の一角を占める国民新党に経営権を握られた形であり、特殊な政府機関として扱われているも同然である。』

このような国民新党の要望に対し、斉藤社長はどうも受け入れる姿勢になっているらしいのです。それはなぜか。
斉藤社長の強い要望は、冒頭に述べたように郵貯の預入限度額上昇(撤廃)でした。そしてその要望を亀井大臣が引き受け、反対を押し切って勝ち取ってしまったわけです。亀井大臣があれほど頑強に押し切ったのは、斉藤社長に自分のいうことを聞かせるためだったということになります。

さらに『国民新党の有力政治家の中からは、日本郵政の関係者に、「1人5万円の年会費で50人程度を集めて、私的な後援会を作ってほしい」とか「1枚2万円のパーティ券を100枚売って来てほしい」といった要求が五月雨的に飛んでくるという。』

これでは、国民新党による日本郵政の私物化です。

一般の銀行には預入限度額がありません。しかし、ペイオフ制度で、その銀行が潰れても預金のうち1千万円までしか返ってきません。国民一般は、銀行の預入限度額が実質的に1千万円だと思っているはずです。
一般国民は、実質国有銀行であるゆうちょ銀行は潰れないだろうと思っているでしょうから、郵貯の預入限度額が2千万円になったら、日本の銀行の中でただ一つ、預けられる預金の総額が1千万円を超える銀行になってしまいます。

このような優遇措置が民業圧迫でないはずがありません。米国がWTOに提訴することも十分にあり得るでしょう。

直近、亀井大臣は「一般銀行のペイオフ限度額を2千万円に上げてもいい」と言い出しました。これが単なる思いつきだとしたら、これ以上の混乱を巻き起こすことはヤメにしてほしいです。
一方、もし、「預金保険機構の経営実態から、実はペイオフ限度額を2千万円にすることは可能である」という事実があるのだとすれば別です。
と思っていたら関連新聞記事がありました。4月3日の日経新聞です。

  日経新聞から
預金保険機構の欠損金が、2002年には4兆円もあったのに、2010年には解消するというのです。96年に保険料率をそれまでの7倍の0.084%に引き上げてここまで来ました。96年はまだペイオフがなかった頃です。欠損が解消した後、速やかに保険料率を引き下げる検討に入るようです。
亀井大臣が発案するまでもなく、保険料率の引き下げか限度額の引き上げを検討すべき時期が到来していたと言うことです。
このあたりの金融政策は、郵貯の預入限度額増額との抱き合わせで決めるのではなく、日本の金融にとってどうするのがベストなのか、という観点で決めてほしいものです。
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