弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

官僚と報道機関の関係

2018-04-29 15:32:48 | 歴史・社会
日本の報道・ジャーナリズムが「権力の監視」機能を発揮していない理由は、大きく次の2点に集約されると言います。
○ 記者クラブ制度
○ 特ダネ至上主義
ここでいう特ダネとは、
①その報道がなければ世の中に知られることがなかったような特ダネ
②明日公表されるニュースを今日独占して報道するような特ダネ
の2種類がありますが、数量的には②が多数を占めます。

日本のジャーナリズムのこのような問題点を記載した書籍として、このブログでは、過去に以下のような記事を書いてきました。

上杉隆「ジャーナリズム崩壊」2008-11-18

長谷川幸洋「日本国の正体」2010-01-05

牧野洋「官報複合体」2012-08-14

この中で、長谷川幸洋「日本国の正体」2010-01-05 について振り返ります。
日本国の正体 政治家・官僚・メディア――本当の権力者は誰か
長谷川 幸洋
講談社

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---ブログ記事抜粋--------------
大新聞をはじめとする日本のジャーナリズムは、「他紙よりも一刻も早く報道すること」を至上命題としています。そして、取材源を官僚に依存する記者は、官僚から特ダネ情報を他紙記者よりも早く受け取ることにより、特ダネをモノにします。実は情報を提供した官僚は、その報道によって自分の推し進める政策を後押しさせたいのであって、官僚自身の代弁者として好適な記者に特ダネ情報を漏らしているのです。このとき記者は役人から、政策を記したペーパー(紙)を併せて受け取ります。
官僚は、自分たちが推し進める政策を自分たちが思うとおりにうまく報道してくれる記者を選択し、情報を渡します。従って、官僚の政策を批判的に記事にする記者は情報が流れません。記者のうち、官僚から紙をもらえる記者は10人中1、2名しかいないということです。特ダネ記者になりたくて官僚に取り入っていくうちに、知らず知らず、記者は官僚の代弁者=ポチに成り下がっていきます。
記者は、「自分が官僚から信頼された結果として情報をもらえるのだ」と思い込んでいるそうで、「自分は官僚の代弁者に成り下がっている」とは気付かないのだそうです。

以上の議論において、「記者クラブ」は登場しません。つまり、記者クラブがあろうがなかろうが、日本の新聞記者は官僚の代弁者となってしまっているのです。この点については、今回の長谷川氏の著書で理解した事項でした。

なぜ日本の新聞報道はそんなことになってしまったのか。以下の3点が挙げられます。
(1) 日本の新聞は、「他紙よりも一刻も早く報道すること」を至上命令とする。
(2) 情報を持っているのは官僚であり、官僚と記者との間に圧倒的な情報格差が存在する。
(3) 記者は「官僚は、自分たち記者と同様に中立の立場」と思い込んでいるところがある。

上記(3) の認識はさすがに今では薄れていることでしょう。
しかし(2) は厳然として存在し、(1) のスタンスを取る限り、記者は官僚に取り入ることから逃れられません。
---ブログ記事抜粋終了--------------

さて、ここからは今日的問題についてです。
財務事務次官セクハラ事件に関して、当事者としては、事務次官本人、被害女性記者が登場します。被害女性記者の女性上司も登場してきます。
私は、最も重要で性悪な当事者として、「テレビ朝日という会社」を挙げなければならないと考えます。
上記長谷川幸洋著「日本国の正体」でも明らかなとおり、日本の報道機関は、主なニュースソースを官僚に頼っており、特ダネをものにするには、高級官僚から「特別に懇意な記者」として扱われることが最重要です。

今回の財務次官は、スケベオヤジであることが広く知られていました。テレ朝としては、そんな事務次官から「特別に懇意な記者」として扱われるような人材を、財務次官番記者として人選するであろうことは想像に難くありません。テレ朝は、「あなた好み」の記者を人選したものと思われます。この人選は、直属の女性上司によってではなく、財務事務次官と同じような根性を持っているもっと上の上司によってなされたものでしょう。

勤め人である女性記者は、上司の人選にノーということはできず、繰り返しセクハラ発言を受けた後も、呼び出されたら出て行かざるを得ませんでした。相談を受けた会社側は、直ちに女性記者を番記者から外すべきでしたが、それができませんでした。

この事件は、テレ朝という会社のスケベ根性が、すべての発端であったといっても過言ではありません。
夜中の12時からはじまったテレ朝記者会見を、私はライブで観ていました。会社は良い子ぶっていましたが、なぜ今まで(事務次官が辞任するまで)公表しなかったのか、という点は曖昧なままです。「官僚に逆らったら情報がもらえなくなるので、逆らうことはできない」とは言えないでしょう。
テレ朝以外の報道機関も、テレ朝と同類ですから、上記のような問題点に切り込むことは結局できないのですね。フリージャーナリストが問題に切り込むしかないのでしょう。
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