大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年06月07日 | 創作

<3792> 写俳二百句(137) ハナムグリ

           花潜花に汝の逞しさ

          

 クリの花が咲いた。花粉を運んでくれる虫たちを誘うフェロモンのような役目の香を放つ豊かな尾状花序のミルク色の小花の花群。蜜源植物で知られるクリの木。樹冠いっぱい溢れんばかり。その香に誘われてやって来るミツバチなどの虫たち。そんな虫たちの中に鉄の兜に鎧を纏ったような花には不似合いに見えるハナムグリがいる。

 体長1.5センチほど。長く伸び出し乱立する白い雄しべを掻き分けるように、その鉄兜のような頭をその林の中に突っ込み、厳ついバネのような肢で踏ん張って、林の奥へ奥へと進んで行く。そして、蜜の馳走に与る。その間にハナムグリは雄しべの葯に触れ、鎧兜や肢の細かな毛に花粉をつけ、雌しべへと運ぶ。まことにうまい仕組みに出来ている。

   花潜汝の生涯花潜り

 ハナムグリは花に似合わない姿の持主だが、クリの花にはありがたい存在。この有効な互いの機能の持ちつ持たれつの関係性、どちらが先に歩み寄ったのか。否、どちらが先などということではなく、阿吽の呼吸ということなのだろう。ハナムグリの逞しさは、自らにではなく、迎え入れてくれる花への逞しさであり、頼り甲斐の逞しさである。 写真はクリの花に向かうハナムグリ。


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