大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年06月23日 | 写詩・写歌・写俳

<3084>  余聞 余話 「カイツブリのヒナ誕生」

    生まれ出(いづ)るものの宿命かいつぶりはかいつぶりにし生きる宿命

 我が家の近くの溜池でこのほどカイツブリが誕生した。カイツブリは小枝や落葉、水草などを集めて浮巣を作り繁殖する。五、六月が繁殖期で、雌雄の動きが活発になる。藤が花盛りの五月四日に一回目の抱卵を目撃し、それから折に触れて観察して来た。

                   

   一回目は浮巣に卵が一個見られ、雌雄交代で抱卵に勤しんでいたが、何日目かに白い卵が浮巣から消えた。原因はよくわからないが、抱卵に失敗したということであろう。カイツブリには悲嘆に暮れているようで、空になった浮巣の近くで泳ぎ回る姿が見られた。

   その後、二羽を見守っていたら、池を縁取るツツジが花を咲かせ、水面に彩りを添え始めた五月十一日、浮巣は藤蔓に繋がれた状態で空のまま漂うことなく浮いていたが、二羽にはツツジの花が映り込む水面で浮き沈みしながら交尾するような行動に出たのであった。それから二羽はダンスに興じるがごとく十数分間もつれあった。

                                   

   もしかしたらと思っていたら、やはりやり直しだったようで、それからしばらく経った六月十日、同じ浮巣で二回目の抱卵に当たっているのが見られた。雌雄交代で卵を抱き、交代の寸刻、巣の様子がうかがえた。今回は三個の卵が確認出来た。それから観察を重ね、六月二十日、卵が二つになっているのに気づき、望遠レンズで確認したところ、生まれ立てのヒナが水に濡れているような艶をもって見え、黄色の嘴が確認された。

   撮影位置から巣までの距離は三十メートルほど。四百ミリ望遠レンズでも詳細はわからない。双眼鏡で確認したら間違いなかった。まだ、孵っていない卵があるので、親鳥は抱卵の体勢を崩すことなく、ヒナをも抱えているようであった。それから一日置いて二十二日に出かけて見ると、田植え時期で池の水はかなり水位を下げ、浮巣は跡形もなく消え、カイツブリには巣のあった辺りで、漂い、一向に潜る様子がないので、子育てに入っているのに違いないと思えた。

                    

   その思いは、暫くして的中しているとわかった。よく見ると、ヒナは親鳥の羽に包まれて頭の部分だけをのぞかせ、親鳥の背中にいた。雌雄は一羽ずつヒナを抱いていた。つまり、卵三個のうち、二個が孵ったということになる。一時間ほど観察を続けたら、一方の親鳥が一方のヒナにエサを与える仕草が見られ、ときおりヒナを水面に振り落として泳がせているのがわかった。ヒナにはまだ潜れないが、浮いて泳ぐことは出来るらしく、ちょっと泳いではまた親鳥の羽の中に入り込むことを観察の間二回行った。親鳥にはこれからエサの捕り方を教え育てて行くのだろうと思われる。

   写真上段は五月十一日、ツツジの花が映り込む水面で陸み合うカイツブリのカップル。中段は五月四日、一回目の抱卵(左)と六月十日、二回目の抱卵(右)。下段は六月二十二日、親鳥の羽に包まれて頭を出すヒナ(左)と親鳥に付き添われて泳ぐヒナ(右)。

 


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