大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2021年05月01日 | 創作

<3394> 写俳百句 (55)  タンポポ

            お日さまとタンポポの花五七五

                                 

 今日より五月。四月最後の日は「写俳百句」でタンポポをテーマに、一日五〇〇〇歩以上のノルマに従って歩いた。気温が上がり、歩くと汗ばむほどの日中。タンポポはそこここに見られたが、被写体として叶うものは案外少なく、結構探すことになった。という次第で、六〇〇〇歩ほど歩いた。写真はその結果の賜物である。

 スミレ、タンポポ、レンゲソウは春を代表する草花で、子供のころから馴染みが深い。スミレはスミレ科、タンポポはキク科、レンゲソウはマメ科で、キク科のタンポポは両性の舌状花が多数集まって一花を形づくり、これを頭花という。頭花はキク科の特徴で、上を向いて咲くものが多く、タンポポも同じくお日さまが姿を現わすと開花し、雨の日や夜になると閉じる。

 葉は根生でロゼット状につき、葉腋から葉のつかない茎を伸ばし、その先に舌状花の集まった一花をつける。茎を切ると乳液が出る。花は黄色であるが、白い花も見られ、これはシロバナタンポポと呼ばれる。タンポポの仲間は世界的に見られ、殊に北半球に多く、四百種ほどと言われる。日本にはそのうちの二十種余が見られ、在来には地域性が現れ、関西に多い花が小ぶりな西日本型のものをカンサイタンポポと呼んで判別されている。

   大和(奈良県)に見られる野生のタンポポは在来のカンサイタンポポと外来のセイヨウタンポポ、花の白いシロバナタンポポ、レッドリストに絶滅寸前種としてあげられているヤマザトタンポポが分布し、加えて、在来と外来の交雑による雑種が広く見られる。

   なお、タンポポとはユニークな名であるが、その語源については諸説が見られる。中でも、異名鼓草(つづみぐさ)に由来するという民俗学者柳田國男の『野草雑記』の説がよく知られる。その説は、鼓の音に擬した「タン、ポンポン」から来ているとし、ほかにも各地の方言に見られることなどからこの説が有力視されている。では、タンポポと鼓草の名が如何に結びついたかであるが、これについては蕾の形が鼓に似るという。古名はフジナ(藤菜)とされ、平安時代中期の『本草和名』に布知奈と見え、江戸時代中期の国語辞典『和訓栞』はこれを藤菜の義としている。何故なのか、その由来ははっきりしていない。漢名は蒲公英。

 それにしても、スミレは『万葉集』にその姿が見え、レンゲソウ(ゲンゲ)は中国原産で、江戸時代に渡来した帰化植物として経歴がはっきりしている。これに対し、タンポポは身近な春を代表する親しみのある草花にもかかわらず、『万葉集』にも『古今和歌集』、『枕草子』にもその姿が見えない不思議がある。

   タンポポは江戸時代、あるいは室町時代にその名で呼ばれたと言われるが、定かでない。全国的に見られ、それも身近な春の花ということで地方名も多く、その名は方言由来と見てよいのではないかと思われる。タンポポは踏まれても生え出し、花を咲かせる雑草に位置づけられているが、逞しさと明るさのある愛されるべき草花である。 写真はタンポポの花。

 


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