大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2012年05月07日 | 写詩・写歌・写俳

<248> 旗 (1)

         はたはたと はためく旗の 五月かな

       家の中にも鳴っている

    街の中にも鳴っている

    風の中にも鳴っている

    はたはたとはためくもの

 五月になると私には旗というものが思われる。そして、旗と言えば、この明珍昇詩集『夕陽の柩』の「旗」と題する詩の冒頭部分が思い浮かんで来る。詩は相当に長く、冒頭以外はよく覚えていないが、この四行だけは妙に記憶に残り、何かきっかけがあるごとに思い出す。殊に五月のこの時期には必ずといってよいほど思い出す。これは五月晴れに白地に赤い日の丸の印象があるからだろう。

 今日はその旗について私の思うところを述べてみたいと思う。『広辞苑』で「旗」を引いてみると、「布帛などで造り、掲揚して標識・祝賀・装飾の用に供する具」とある。で、まず、一番に思い出されるのが国旗で、国旗と言えば、何と言っても我が国の日の丸であるが、どこの国にも国旗はあり、万国旗という。

 この国旗で、国が変わり、国旗が変わった例に出くわしたことがある。ソ連が解体して新政ロシアになったとき、新聞社の取材で、豊中市のロシア領事館に出向いて新しい国旗の撮影に当たったことがあった。労働を象徴する鎌とハンマーに星を片隅に配置した赤い旗からピヨ―ドル大帝の時代の三色旗に戻したそのときである。領事館には事前にアポを取っていたにもかかわらず、入るのに時間がかかり、そのときは鬱陶しさを感じたが、新しい国旗には社会主義の国から自由主義の国へ移行するというイメージがあった。

 三色旗はオランダのトリコロール(三色旗)が先駆と言われ、それをモデルにしているということで、オランダ国旗が上から赤、白、青に対し、新政ロシアのそれは白、青、赤である。フランスもイタリアも三色旗で、その色は微妙に異なり、国旗は国家の意思であり、象徴であるが、その意思する意味も異にしているのがわかる。フランスの自由・平等・博愛は有名であるが、イタリアの三色旗は一説に国土・平和・熱血を表していると言われ、これは天・地・人に通じるところで、この旗もわかりやすい。

 国旗のほかにも旗は色々とあり、歴史上にも見られる。 「紅旗征戎ハ吾ガ事ニ非ズ」と言ったのは歌人の藤原定家であるが、この紅旗は源氏の白旗に対する平家の旗で、貴族衰退、武門台頭の時代に翻りを見せた陣営を表す旗である。旭日旗は日本海軍で、これはもちろんのこと軍旗であって、兵士を旗の下にまとめ、鼓舞し、戦時下では泣く子も黙る勢いを持っていた。

 また、紋を表す旗もある。天皇が用いる車には蘇芳地に山吹色の十六弁菊花の皇室紋の旗が取りつけられる。天皇は日月紋を用い、本人の旗は日月旗であり、これを錦の御旗という。個人で旗を有しているのは天皇以外なかろう。学校の旗は校旗で、会社の旗は社旗であり、自治体など公共団体は旗を有している。政党も同様、まとまりに用いられる。例えば、共産党の旗は赤旗で、旗自身が党のイメージになっている。

 仏教の儀礼には幢幡と呼ばれる旗が用いられる。端午の節供に門先に立てる幟も旗の一種と言えよう。スキーの滑降や回転競技には旗と旗の間、つまり、旗門を通らなければ失格になるという規定がある。また、優勝旗という旗もあれば、大漁旗という旗もある。手旗信号というように意思・情報の伝達にも用いられる。 写真は左から日本の日の丸。オランダ、イタリア、フランスの三色旗。アンコールワットをデザインしたカンボジアの国旗。今はその姿を見ない旧ソ連の国旗。右端はイギリスのユニオンジャック。 (次回に続く)

                                                  


最新の画像もっと見る

コメントを投稿